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嘘は猛毒

わたしは、嘘つきだった。
嬉しくもないのに喜んで、行きたくないのに誘われたら断れなくて。

中学生の頃、今日こそは嘘をやめたいと毎日のように自分に誓っていた。
けど、やっぱり家や学校で嘘をついてしまう。

夜になって寝る前に、今日1日で自分がついた嘘を数えて反省した。

自分の意見を言うとボコボコに殴られていた家だったので正直に生きることは、肉体的に死ぬ。
でも、嘘をつくと今度は心が死ぬ。

どうすればいいの!
葛藤していた思春期。

嘘をつく人は信用ができない。
嘘つきはキライ。
わたしは、自分に嘘をつく
1番信用ならないヤツだ。

と、中学2年のクラス詩集に書いた。

今振り返ると思春期に苦しんだり、悩んだりすることは未熟ですがけっこう真髄だったりする。

あの時に、わたしの体には嘘という毒がまわっていた。
その毒は、人に成る年齢と言われるくらいにどんどん悪化していった。

20歳になったばかりのとき、皮膚の難病が突然発症した。はじめは足に痒いかさぶたができて
すごいスピードで体中に広がった。
顔もおなかも背中も耳の穴の中までかさぶたになり、痒くて痒くて辛すぎた。
頭はヘルメットを被っているように1枚の大きなかさぶたになった。
わたしは、狂って坊主頭にした。

この皮膚病の治し方を知りたくて、いくつも病院を行きましたが先生も分からず、やっと大学病院で尋常性乾癬と言われました。

「この病気が治るのは最低でも30年はかかります」と先生が言いました。
わたしは「え!?」となったのですが、先生は少し言いにくそうに
「いや、30年ではなく実は一生完治はしません」と訂正しました。

今20歳だから50歳までかかるのか、、、と思ったけどいや、は?死ぬまでこの皮膚?

今の医療では治らないので尋常性乾癬の友の会に入って、ここで患者さんたちと慰めあってくださいと、友の会の案内を渡されました。

皮膚の難病ではあるけど、命に関わるものではないので仕事もできるし普段通りに生活をしてくださいって先生は言う。

できるかよ!こんなんで外出れる?なってみろ。

わたしは20歳。
同級生と同じように人に成れなかった。

それから毎日、大酒を飲み、精神薬を飲み、眠れず、携帯を解約し、家族を恨み、復讐のエネルギーで生きていた。
生きていることが辛すぎて腕を切りまくり、コードで首をしめて、首は内出血をしていた。切り傷は、また尋常性乾癬の悪化に繋がる。

食べるのを止めてもう生きることをやめようと思った。なんなんだ、わたしの人生。いいことなんて何にもない。

どこまでも、どこまでも落ちた。
落ちても落ちても、どこにも着かない。まだまたま落ちる。行けるところまで落ちてみた。

170cmの身長なのですが、42キロまで痩せました。
歩くだけで息切れ。ガリガリなので座るとおしりの骨が痛くて、座れない。ずっと寝てる。
薬の副作用で、めまいがして四つんばいでトイレに行きました。
何度か幽体離脱を経験して、その頃は幻聴、幻覚が見えたくさん幽霊を見ました。

「気」みたいなものが、肉体を離れるとき微弱電流を感じる。生きるか死ぬか本当に瀬戸際だったと思います。

わたしは今になって思う。
こうなったきっかけは、自分に対しての嘘から始まっているのだと。

嘘は心を殺し、そして時間をかけて肉体も死に導く。

わたしの人生は、小さな頃からも色々あったけど
この病になって生きるか死ぬかを毎日考えていた時期は4年続いた。

ある時、狂いながら空を見ると夕陽だった。
でも、これは朝焼けなのかもしれない。
昼夜逆転してまた逆転して
今日が終わるのか、始まるのかどっちかマジで分からなかった。

でも綺麗だった。

ここで死んでも、生きてもどっちでも綺麗なんだと思って泣けた。

たぶん、わたしは世界の端っこで
世界のドン底に触れたかったんだと思う。

気がすんだ。

あの夕陽か朝焼けか分からない空は、すごく覚えている。
それからわたしは少しずつ薬をやめ、ごはんもちゃんと味がするようになりました。

本当は食べたかったの!(笑)
抵抗していただけ。

治らないと言われていた難病は、ぱっと見ても分からないくらいきれいになっていった。
24歳になったわたしは、成人の写真を撮ろうと写真屋さんに予約をしました。
4年間、待っててくれた友達にまた連絡をして遊びにいけるようになりました。

半袖の服が着れる喜び。温泉に行ける喜び。
メイクができる喜び。

あれから20年経つけど、今でも嘘つきのクセと
たたかうことがある。

人と上手くやるために、自分と上手くやれないときがある。

しゃーない。

だから、ひとりの時間を多めに作る。
わたしは、好きな人や家族がいてもひとりの時間がないと死ぬ。

ひとりの時間は、自分になれる。

あの4年はひとりになるため
人に成るための時間だったんだと思う。

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