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【書店さんを元気にする全国出張】九州編 4/18-23

僕の父は全国を飛び回る工場設備のサービスマンでした。仕事に誇りを持ち、超有名企業の工場に行って、機械のメンテナンスをしていました。サービス営業の現場から経営層に上奏した文章が目にとまり、高卒ながら出世し、東日本地区を任されるまでになりました。

転勤も出張も多かったです。僕のメンタリティはそんな暮らしのなかで築かれました。転校生でしたがジワジワと周囲に溶け込み、チョコをもらいまくったり、試験で学年で1番になったりしました。運動はカラキシでしたが、「優しい」と「友情」を優先して生きたいと常々思っていました。

出張がちだった父は、世の中には美味しい食べ物が溢れていることを教えてくれました。旅先からでかいゴッコとかカニ10杯とか珍しいものをよく送ってきました。お土産も持ち帰りました。酒飲みだった父はオツな肴を食べていたので、僕はコバンザメのように張り付いて一緒に食べてましたね。

そんな父が時々持ち帰るものの一つに、本があったのです。松本清張や山崎豊子、西村京太郎あたりだったでしょうか。移動中の空き時間に読んでいたのでしょう。僕の読書はそこから始まり、大学は文学部に入りやがて純文学を上位に置くようになりました。

もちろん今はそんなことはありません。どんな本でも一期一会。出会い次第で意味のある読書をもたらす可能性を持っていると思うようになりました。身体を作るたんぱく質のような本もあれば、エネルギーを作る炭水化物のような本があっても良い。上下で分類するのは無意味です。

今は出版社の営業として、後述する2つのミッションを背負って全国を回る立場になりました。旅の夜空。宿についてから、毎日のように自宅に電話をかけてきた父の気持ちがわかります。この九州編は東京に帰宅してから書いていますが、これからは宿で書き記したいと思っています。

それでは、鴨ブックス全国キャラバン日記九州編スタートします!

全国キャラバンのミッションは2つ

一つは、自社出版物の営業をすること。他の出版社さんと同じです。そしてもう一つは、鴨ブックス設立趣旨をお伝えすることです。

設立趣旨について説明します。約2万軒あった書店数は20年間で半減しました。その原因は「売れていた時代の利益配分(出版社/取次/書店)が今なお続いていること」だと言われています。でも今は、流通・小売のコストが爆上がりする一方、生産者側は他で利益をあげられるようになりました。

現在の経営環境で書店経営を成り立たせるためには、生産者側が自らの取り分を減らす必要があるという意見が業界内には強いです。鴨ブックスは、自らの利益を削って書店さんを元気にする最初の出版社として産声をあげました。それこそがフェアトレードであり、持続可能な出版流通を作ります。

長期的に見れば、全国の書店さんが元気になれば全ての出版社の本が売れるようになります。そして読者の皆様が本との出会う場が守られると信じています。「短期的な喜びをとるか、長期的な喜びをとるか」受験生の悩みと似てますね。出版社は、どちらの喜びを目指すと良いのでしょうか?

書を捨てよ町へ出よう

僕は25年間、出版流通の中枢で働いてきました。その間、ネット受注を書店に向ける努力を重ねたり、イベントによる集客向上に取り組んだりしてきました。一貫して「小売りを盛り上げるためには何をすれば良いか」という意識で仕事をしてきました。

不思議なもので会社を出て外から出版業界を見直すことではじめて、それまで辿り着けなかった解にようやく辿り着いたのです。利益配分以外の課題は、小さな課題に過ぎません。そしてその改善に取り組むチャンスを与えられたのです。何と光栄なことでしょう!

写真は理論を学ぶよりも、量を撮ったほうが上手になると言います。25年間ずっと「ああでもない」「こうでもない」と考え続けてきたことを、一つの解をもってその達成に向けて仲間を増やす旅、それが鴨ブックスの全国キャラバンなのです。桃太郎みたいですね。(例え古すぎ!笑)

このマガジンでは、出張の過程で目にした書店さんの店頭写真をご紹介していきたいと思います。ただこの企画を思いついたのは九州から帰った後。印象に残った売り場はたくさんあったのですが、残念ながら良い写真を残すことができませんでした。

次の信州・北陸・東海出張では、宿に着いて家族の声をきいたら毎日書き記そうと思っています。小さな習慣を作ることは、人をどこまでも遠くに導いてくれます。あと40都道府県くらい残っています。宿に着いて自宅に電話をした後、PCを開く習慣をつけることをここに誓います。

九州編の貴重な店頭写真をご紹介

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▲都城田中書店様 宮崎本大賞展開
都城田中書店様にうかがったのは、雨が降る平日の朝、開店時間でした。5分前には開店を待つお客様がいて、僕が打合せをさせていただいている間、次から次にお客様が入店されてきました。小野寺史宜『ひと』。帰りの飛行機で読みましたが、僕も父の死後、その縁をたよって旅した時のことを思い出しました。若き日に感じた周囲の「ひと」の温かさを思い出す小説でした。

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▲紀伊國屋書店荒尾店様 理想の教科書フェア
教養をつけたい大人のための~。めっちゃ惹かれます!少し前からタイトルに「教養」がつく本がよく売れるようになりました。ビジネスマンが歴史とか地理とかアートなどの「教養」を身につけようという動きが依然として続いています。たしかに諸外国(とくにヨーロッパ)の大人に比べると、スクラップ&ビルドの日本ではなかなか身につけるのが難しいことのように感じます。大学を卒業したら、朝の10分読書で教養本を読む習慣をもっても良いかもしれないですね。何冊かは読んだことがある本もありましたよ!

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▲蔦屋書店宮崎高千穂通り店様 あいま茶フェア
地元のお茶屋さんとのコラボ企画です。「ミステリー」や「純文学」など読む本に合わせて茶葉をブレンドしているそうなのです!実際にそのお茶を飲みながら読んでほしい本を提案する、という売り場の形になっています。直木賞受賞作、今村祥吾さんの『塞王の盾』をゆったりとお茶をのみながら読んでみたいですね。地域の産業振興と書店様のつながりを形にしたフェアで素晴らしい取り組みだなぁと思いました。

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▲TSUTAYA BOOKSTORE 宮交シティ様 週間ランキング(実用書)
九州地方の人々は健康に関心があるんだなぁと感じました。この書店様だけでなく多くの書店様で、自律神経の本や健康習慣の本が平積みや面陳をされていました。ランキングにも結構入ってたなぁ。僕はメンタルが弱く、勝負所で力んでしまい失敗することが多いです。マッサージに行くと、いつも交感神経と副交感神経の指導をされてしまいます。50にして惑わずと言いますし、そろそろ自律神経を安定させたいものです。

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▲金龍堂まるぶん店様 カッパ前で待ち合わせ
店の入口で売行き良好書をバーンと展開する書店さんが多いなか、熊本の金龍堂まるぶん店様の入口には、泉の中にカッパが鎮座しています。改装の際に店内に入ったそうですが、外にあった頃は待ち合わせスポットだったそうです。いまはこのカッパを取り巻くように、売行き良好書や各種のフェアを実施されていました。奥行きもあって地元熊本の本のコーナーもあって、商店街の居心地の良い本屋さんですよ。

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▲TSUTAYA BOOKSTOREみらい長崎ココウォーク店 桃カステラ
売り場で見かけて、ついつい懐かしくなって写真を撮らせてもらいました。僕の地元長崎では、出産などの内祝いの際に欠かせないお菓子。よく売れてるそうです!つい食いしん坊キャラが顔を出してしまいました。本じゃなくてごめんなさい。広い店内に様々な趣向を凝らして、本を展開しているとってもお洒落な本屋さんです。チンチンと懐かしい音を鳴らしながら、目の前を走る昔ながらの路面電車とのギャップがたまりませんでした!

(おまけ)自腹グルメ日記 九州編

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▲博多ごろうどん ごぼう天うどん
繁華街の天神には、本屋さんもたくさんあります。全国キャラバンの最初のお昼ご飯は、そのアーケードの中にある博多ごろうどんさんにしました。想定外のごぼ天が出てきてギョッとしましたが、極限まで薄いごぼ天を深いダシの風味が豊かな透明なスープに浸して食べる快感がたまりませんでした。もちろん大好きな唐辛子をバンバン入れたのは言うまでもありません。


まとめ

「生きる理由がある者は、どんな生き方にも耐えられる」といったのは哲学者のニーチェでした。幼少期の経験を経て本が好きになり、書店さんの減少がとまらない状況を変えようと25年間働いてきました。そして一度、思い切って出版業界を出たのです。

結果ありがたいことに、今こうして「生きる理由」を与えられました。鴨さんありがとうございます!二つ目のミッションを叶えるには長い時間がかかるでしょう。3か月で北から南までまわる全国キャラバン。千里の道も一歩から。この旅路にお付き合いいただけると嬉しいです。

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