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転売に必要性があると思うなら最高裁で争うべき

少し前のニュースですが、チケットの高額転売を禁止する法律、通称「チケット不正転売禁止法」が制定されました。その際に、まさにそのチケットの高額転売を仲介して利益を上げてきていた、チケット売買仲介サイト「チケットストリート」がこんな見解を掲出して批判を浴びています。

「転売容認?」と主張に批判集まるも「チケットストリート」は「取材拒否」 弁護士は「当事者の自覚がない」とあきれ顔
https://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1906/22/news024.html
 まず前提として「当社で売買仲介するチケットはすべて、売り手会員より『不正転売にあたらない』旨の誓約をうけて掲載しています」「買い手の方の注文にあたっては必ず『転売目的での購入でないことの確認』をお願いしています」「当社は不正転売を一切許容しません。上記の誓約にかかわらず不正転売のおそれがあると当社が判断した場合、注意喚起・出品の削除・利用制限等を実施しています」と3つの状況を説明。
 「未発券状態(例:コンビニの発券番号の譲渡)では、一般的には特定興行入場券には該当しない」とした他、「単に営利目的の転売が禁止されているだけのチケット」は、不正転売禁止法で転売が禁止されている「特定興行入場券にあたらない可能性がある」と解釈し、「特定興行入場券に該当しないチケットは、販売価格を超える価格での出品であっても、不正転売にはあたりません」と述べています。

法解釈に関しては実際に起訴が起きて裁判の判決まで進まないと確定しないのかも知れませんが、チケットストリートが今回の新法を完全に無視することは上記の声明から明らかです。

そりゃあ、チケットの高額転売で儲けていた会社ですから、この新法を遵守してしまえばそもそも成り立たないビジネスモデルなわけで、こう言いたくもなるのでしょうけれど、しかしここまで堂々と法律を無視しますと宣言するのは珍しいかなと思います。

上記リンクの終盤に、弁護士のインタビューもありますが、確かにチケットストリートはなんで今回の法律が出来たのかということを分かっていて無視しているんでしょうね。ここまで来るのなら、イベント開催側がチケットストリートを相手取って裁判を起こすしかないような気がします。

一部の主張として、チケットストリートを擁護するしないにかかわらず、自由資本主義経済においてチケットの高額転売も自由主義の観点から認めるべき、という理屈が存在します。チケットをいったん購入した人間がそれをどう扱おうとも勝手だ、ということです。それは確からしく思えますが、その一方で、売る側の自由も存在しています。売る側にだって売りたいところに売る権利がありますし、当然ながら転売目的で買う人よりもイベントに参加したいという人に売りたいのは当たり前のことです。

見るつもりだったけれど行けなくなったので他人に譲りたい、ということであれば何十倍にも値段が上がる正当性はありませんが、個人間での取引となるとコントロールが効かなくなってしまうのも当然です。それなら、販売元にチケットを引き取ってもらえる仕組み、そしてそのチケットを再販売する仕組みがあればいいわけです。以前、チケットの高額転売問題に関してこんなnoteを書きました。

チケット購入時の本人確認と、販売元・興行元に返品出来る仕組み、再販売する仕組みを備えようと思えばチケットをデジタル化・電子化するよりほかないはずです。

今回のチケット不正転売禁止法は転売問題の一つの解決策ではありますが、アナログのチケットを掲示板やSNSで個人同士で売り買いするパターンには後追いでの対処しか出来ません。高額での転売を防ぐ方法は販売元・興行元が抜本的に売り方を変えるしかないのではないでしょうか。

また、自由主義・資本主義としてチケットの高額転売も認めるべきというのであれば、今回のチケット不正転売禁止法そのものを違憲として政府を訴えて、最高裁まで争うしかないでしょう。その結論が出る頃にはチケットの完全デジタル化が実現して意味のない判決になるかも知れませんが。

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