レーガンとトランプの経済・軍事的覇権維持政策

 トランプ大統領が、1980年代のレーガン大統領と政策的に似ている、あるいは意識している、という言説は就任前や直後からちょくちょく目にします。
 公約や政策として、減税・社会保障費削減・貿易赤字対策といったところが類似点として挙げられています。
 既にこの2年の間に散々に語られているので、これまでの推移に関しての分析は少し検索すれば出てくると思いますが、最近で言うと、日米貿易摩擦と米中貿易戦争の比較がわかりやすいかと思います。70年代の終わり頃から、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と持てはやされて世界経済に大きな影響力を持っていた日本経済と、驚異的な経済成長からリーマンショック後の巨大公的資金注入によって世界経済に大きな影響力を持つようになった中国経済は、共に世界最大・最強の経済力を持つアメリカ合衆国と覇権を争うようになりました。レーガン大統領はプラザ合意とその後のバブル景気によって日本経済を叩くことに成功し、その後の冷戦終結によりアメリカのみが超大国として君臨する下地を作ることに成功しました。一方、現任のトランプ大統領は今まさに中国相手に経済戦争を仕掛けています。

 そしてもう一つ、レーガンとトランプの共通点として、ソ連(ロシア)に対して軍拡競争を挑んだところです。レーガンはスターウォーズ構想をぶちまけることにより、既に危機的状況にあったソ連政府の財務状態をさらに破綻に追い込み、ソ連崩壊に導きました。そしてトランプはINF条約破棄によりロシア及びプーチン相手に公然と軍拡競争を持ちかけることになります。
 ただ、問題点は二つあります。一つは、80年代のソ連に比べると今のロシアは経済自由化によりそれなりに豊かになっていて、また東欧の共産主義諸国を防衛する義務が無いため自国とその周辺のみに軍事力を集中することが出来ます。もう一つの問題は、かつてのアメリカに比べると今のアメリカは世界的な経済力のシェアが低下していて軍拡に耐えうる経済力があるかどうか疑問がある点です。さらに言うと、経済力でロシアを遙かに上回る中国とも軍事的に対抗する必要があります。

 もちろん時代も人も異なるのですから、単純な比較を行っても同じ結果になるわけではありませんし、あまり意味が無いと言ってしまうとそれまでですが、80年代に日本とソ連に打ち勝ったように、この時代に中国とロシアの挑戦を退けることが出来るかどうか、ある意味歴史的瞬間に立ち会っているのだと思います。
 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?