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短編小説

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水中都市にて

水中都市にて

 腹痛で目が覚める。LEDの時計を見る。最近流行っている壁掛けのデジタル時計……。まだ三時半だった。このところお腹の調子が悪い。生まれつきお腹は弱いほうだけど……。トイレの小窓から外が明るくなっていくのを見る毎朝が続いている。医者に診てもらおうかな。起き上がってトイレに向かう。歩く度に振動でお腹が痛い。ため息をついてみる。面白くなって、お腹をさすり映画の主人公みたいに大げさに「腹痛」の動作をとって

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キーウィ伝(複数の記述より)

キーウィ伝(複数の記述より)

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 何から書けば良いのかわからない。こんな感覚はあんまり無いな。いつもは構成ノートも無しに書き出そうと思えばなんだって書けるんだ。それが一辺倒に良いことっていうわけじゃないんだけど、語り始めようと思ってつっかえるのは慣れない感覚だ。紙の向こう、画面の向こうの人へ。
 それじゃあ何から書こうか。まずは私がいつも手元に置いている小さいノートのこと。百円ショッ

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カンガルーについての一考察

カンガルーについての一考察

高校二年生の冬に書いた小説
以下本文

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カンガルーについての一考察

有袋類は、はたして形態から自由なのか、不自由なのか。思考のうわべの部分でずっと考えている。膝を掻く。血が出る。左膝だけに茶色いカサブタが増えていく。カンガルーについて考える。それも、本当に考えているわけではない。小学生が将来の夢を考える程度に儚い。何分、何時間こうしているんだろうか

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