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高齢者施設でのとある臨床例(3)

IFA認定アロマセラピストとして活動を始めた後、再び、母校で介護現場でのアロマテラピーについての学習をし、しばらくしてから、委託業務として、都内の立地的にも高級な感じな所と、庶民的でアットホームな感じの所の『介護老人保健施設』で、アロマケアを担当させていただいていました。病院ロビーと緩和ケア病棟は、ボランティアでしたが、気楽な感じではなく、行ってみたらひとりで任されてしまうことも多かったです。(苦笑)

今日は、そんな中から、出産経験のない私が、初めて『お母さん!』と呼ばれたお話です。

過去何回か訪問させていただいていた居住タイプの施設で、その方は、奇声を上げたり、発話はできないけれども何か不満を持たれているご様子が伺える行動をされている方でした。アロマケアは有料な為、施設側が、今日はこの方を依頼しようとされているのか、ご利用者様が個人的にご希望くださるのかは、施設の経営方針等によって変わります。

この施設がどういう契約をしていたかの詳細は忘れてしまったのですが、その日は、珍しく『彼』がアロマケアに連れてこられました。何をするのかもよくわからないが、車椅子が動かされて連れてこられた。と言わんばかりの不機嫌な感じでうつむき、話しかけても反応もなし。と言う感じでした。
右手は拘縮が見られ、かつ、ご本人の意思で頑なに握っている様子にも感じました。前腕の筋肉も緊張して張っていらしたので、ハンドトリートメントをご提案し、まぁ、仕方がないから受けてやるか。と、思われているのか、スモールステップでアプローチを重ねるも、拒否をするような反射はなく、握られた拳を、そのまま包むようにオイルマッサージをしていきました。
精油は鎮静作用と筋肉の緊張を緩和する目的で選びましたが、拘縮した手は無理には動かさずに、そのままの姿勢を保つように、こちらの体制を変えて行なっておりました。ゆっくりと長いストロークを描くリズムを一定に保ち、しばらくした頃、フッとての力が抜けました。おや?と、思ったので、お顔を見上げると、どうやら眠られた様子で、ゆっくりと、手指を開く事ができました。
手のひらまで清潔にし、オイルマッサージ後にしっかりと拭き取り、反対側の手も終えて、アロマケアが終了したことを告げると、スッと顔を上げて『お母さん!行かないで。』と言われました。言った後に、ご本人はしばらくぽかんとした後、すぐに無表情になられたのですが、その時、施設のスタッフが迎えに来たのでお話ができたわけではないのですが、発話が難しいのかと思っていた方が、慣れていない私でも聞き取れるくらい明確に発話をされたのが印象的でした。

アロマテラピーと言う香りの刺激が記憶や情動を司る大脳辺縁系に直接働きかけるのと同じように、リズムの一定な長いストロークの手技は、オキシトシンの分泌を促します。このようなタッチケアは、マイアミのタッチケアリサーチ研究所から発表され、世界中で取り組まれています。
何か、懐かしい。心が暖かくなる想いが湧いたのか、夢を見たのか「お母さん」が幸せの象徴であったのであれば良かったなぁ。と、思う出会いでした。

その1回きり、スタッフさんがその方を連れてくることはなかったので、その日、日中の20分程度のアロマケアでは、目立った効果が見られなかったのかもしれませんが、確実に彼の脳内では劇的な変化があったと思われ、夜よく眠れたのではないか?と、思っているのですが、それが、施設のスタッフさんにとって良かったかどうかは定かではないので、そう言うところまでフィードバックをいただけるような志事(仕事)と、認識していただきたいなぁ。と、思います。

そして、様々な方が、様々な事情で暮らすタイプのこの施設への訪問は、経営者判断で契約終了になるのですが、経営努力なしに継続できない介護業界で、アロマケアを継続していくには、まだまだ多くの方のご理解をいただくことに尽力しなければならない状況です。
アロマテラピー自体が、ピンからキリまである中で、何が正しく、何がエビデンスや理論に基づいて実施されているのかを、経営者が知る機会は少ないと思います。現場スタッフの定着、燃え尽き症候群を減らし、心のケアをする事と、ご利用者様へのサービスのセットでアロマケアを導入していただくこともご検討いただければ、福利厚生費の予算枠はあるのではないでしょうか?経営者の皆様。是非。

そして、現場で理論的に、エビデンスベースに対応できる介護アロマセラピストは、長い時間とそれなりに費用もかかるものですが、しっかりと自立して対応できる介護アロマセラピストを目指したい方を対象に指導をしています。
ご興味のある方は是非、ヒーリングスペースオルカも選択肢の一つに、ご検討ください。

https://hs-orca.com/

フォロー&いいね、コメントなどで応援してくだれば、気が向いて、仕事と研究の合間に、研究成果を書いていくと思います。
ただ、ヒトミシリーなので、気軽にお返事はできないかもしれません。
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ご支援ありがとうございます。いただいたご支援は精油の購入や「アロマケア」の臨床研究費としてありがたく頂戴して、研究成果を発表していけるように頑張ります。今後ともよろしくお願いします。