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月記(2023.06)

6月のはなし。

〔写真:OLYMPUS XA2 & MARIX400D〕



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仙台に行った。たのしかった。ガハハと笑ったり、なんとなく夕暮れを眺めたり、夜の駅前で涼んだりなどした。ささやかながら所縁がある街なので色々と思い出した。現在の自分を形成している要素は、わりと仙台発のものが多いかもしれない。

今回はじめて知った『牛タン仙台ラー油』、バカうまい。



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映画『怪物』を観た。周囲に映画好きは増えたが、当の本人がそこまで熱心でもない、そんな温度差のある状況のおかげか、細かい前情報なしで話題作を見ることができている。買って帰ったパンフレットや諸々の宣伝を見ながら、この温度差はなかなかに貴重なものなんじゃないかと思った。これはぬるい話だが、ぬるさを思い出せなくなる方が恐ろしい、というのが最近の僕のムードだ。『怪物』をぬるく語るほどの勇気はないけど、『怪物』をぬるく観に行ったら面白かったよ、という話をする勇気を振り絞りながら、この文を書いている。



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結局のところ、早寝早起きこそが人類の英知なのである。この頃は何もしなくとも、お天道様が起こしてくれるようになった。眠りが深かろうが浅かろうが、睡眠時間が足りていようがいまいが、ぬくもりの暴力で現実に呼び戻される。



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5kaiのライブを見に行った。

昨年末に知ってから気になっていたバンドだ。ライブハウスならではの身体に響く音で味わうツインドラムは格別だった。ふたつのバスドラムの低音域が綺麗に棲み分けされていて、ひとつの塊であると同時に、揺らいでせめぎ合う波のようでもあった。ドラムに限らず、彼らの曲は音数が少ないぶん、一音ごとの質感が剥き出しになる。目の前で繰り広げられる演奏。血が通ったドライで美しい音。彼らの音楽はとても心地よい。



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積んでいた『ロラン・バルト』(著:石川美子)を読んだ。

大学に入って最初のころに覚えたのが、ロラン・バルトの名と「作者の死」という概念のセットだった。僕はひよこなので、最初に覚えた概念を親だと思い込んでしまった。当のバルト本人はのちに「作者の友好的な回帰」を見出しているが、僕はそんなことは知らずここまで生きてきてしまった。ようやく僕はロラン・バルトという人間について体系的に知ることができた。先人の知恵はありがたく使わせてもらうものだ。概念は親ではない。べつにバルトも親ではないけど、先人である彼は、概念よりは親に近い。



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スーパーソニコット……





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