《突然の風景》のための市内キャラバン 第2回レポート[4/8(月)]

前週に引き続いて、2回目のキャラバンも特定の方を対象とした対談形式で実施しました。この日は、実質朝から晩まで4回の対談をおこない、5名の方々とお話するという濃密な1日となりました!

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まず午前中は、阪急茨木市駅から近くの線路沿いにある自転車屋「くらしサイクル」の木原さんにお話を伺いました。

木原さんはHUB-IBARAKIの運営メンバーと以前より交流があることから、今回のプロジェクトと冬木さんの作品《突然の風景》についても既にご存知でした。作品の詳細を説明すると、「会場内でDJ ブースを作り音楽を流 してみたい」といった、思いがけない発言もありました(笑)。というのも、木原さんは以前よりご自身のお店でDJイベントを企画されるなど、様々な茨木の人が集う大きなコミュニティの中に、遊牧民のような小さなコミュニティを活かす構想をお持ちでした。この木原さんの「何か気の合う仲間で集まって楽しみたいなぁ」という構想は、私たちHUB-IBARAKIが作品やプロジェクトを介して起こそうとしている、不特定多数のコミュニティの萌芽を育み、多様性を認め合える環境を作り出そうとする構想と共通する部分があると感じました。 話の終盤には、映画上映イベントの企画をしているので協力して欲しいと、逆に木原さんからの依頼もありました。今後もお互いの考えや思いを話し、受け入れ、楽しめる状況を作っていきたいと感じた時間となりました。

くらしサイクル http://www.kurashicycle.jp/

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午後からは、ローカルWEBサイト「茨木ジャーナル(いばジャル)」を運営されている、五宝美奈子さんにお話を伺いました。

五宝さんは、HUB-IBARAKIの前身、茨木市彫刻設置事業の頃から本プロジェクトを見守ってくださっています。普段から取材に慣れておられる五宝さんでしたので、今回のプロジェクトや作品についての疑問・質問を明快に冬木さんに投げかけてくださりました。逆取材というかたちで、この対談の様子は早々に五宝さんがサイト内で記事にしてくださっています。 https://ibajal.com/event/20190412art/

また、五宝さんの情報発信の経験から、今年のプロジェクトや作品の特殊な形態についてのご意見やご助言も色々とお聞かせいただきました。「“コト”を強く意識した冬木さんの作品やプロジェクトの意図や意味などを、より多くの人に伝えるにはどうすべきか」、また、「作品の特別さや面白さがあるだけに、1日だけの作品発表ではもったいないし持続するのかどうか」というご意見もいただきました。美術館の作品解説音声を例に、「作品や作者と鑑賞者の距離の近さが、作品を面白いと思うことにつながるのでは」というお話もありました。全員がインタビュアーになったようなやり取りが終始続いて、お互いの理解が深まった熱い対談になったように思います。
 
茨木ジャーナル(いばジャル) https://ibajal.com/

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夕方は立命館大学大阪いばらきキャンパスに移動して、立命館いばらきフューチャープラザ内で立命館大学の事務職員のお二人、大阪いばらきキャンパス事務局長の廣井徹さんとOIC地域連携課課長補佐の松前詠子さんにお話を伺いました。

対談の冒頭で冬木さんがお話した《突然の風景》の着想には、実は立命館大学の「学生育成目標」とも共通する考え方が含まれていました。「多様な価値観を創るためには、他者のことを考えることから始める」ことへの共感を起点に、話題が広がっていくことになりました。このいばらきキャンパスは地元住民に開かれた環境になっていますが、そのような状況だからこそ、その逆のイメージや感覚に関しての意見交換が多かったように思いました。いま立命館大学は留学生の比率が高まっている一方で、留学生と日本人学生の交流がなかなか広がらない傾向があり、「HUB-IBARAKIのようなアートが、両者を結びつけるきっかけになってほしい」という期待の声もありました。また、キャンバス内で開催されるイベントから見える市民の方々の反応など、具体的な現場のエピソードを色々と聞かせていただきました。不特定多数の鑑賞者と交わる可能性の高い、《突然の風景》の発表の参考になるお話ばかりでした。

また、立命館大学のいばらきキャンパスとHUB-IBARAKIが連携するアイデアも、対談の中でたくさん共有できました。今後、もしかしたらもっと近いうちに面白いことをご一緒できるかもしれません。

立命館いばらきフューチャープラザ http://www.ritsumei.ac.jp/futureplaza/

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夜は、夕方の対談のセッティングをしてくださったNPO法人まちづくりメディアの軒原浩さんと、市内の飲食店で対談尽くしの1日を振り返りつつ、軒原さんからも改めて様々な話題をご提供いただきました。

茨木市内でまちと人をつなげる活動を数多くされてきた軒原さんからは、「市内中心部を主に開催地にしているHUB-IBARAKIの活動範囲を、郊外や山間部にも今後広げてほしい」というご意見をいただきました。茨木市には隠れキリシタンの里に代表されるような「隠された」場所が所々にあることや、何かで「1番」と言えるものもあちらこちらにあり、また南部の市街地、北部の山地で形成されていることの魅力など、様々なヒントをいただきました。

さらに、「昨年の地震と台風を機に、これまで比較的平穏でフラットな印象だった茨木のまちに、変化の兆しを感じさせるようなことが所々で垣間見られる」というお話もありました。それについては、隣の高槻市に住んでいる山中チーフディレクターも近い感覚を持っていました。昨年北摂地域に起こった突然の出来事は、まちの本質的な部分も同時に揺り動かされていて、その感覚は今も日常の中に残ったままのようにも感じます。

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この日は、それぞれの立場とやり方で茨木のまちづくりに深く関わられていて、茨木のそれぞれの「HUB」を担う方々との出会いの1日になりました。4つの対談では、みなさんから私たちの活動の広がりにつながるようなアイデアのご提案やひとのご紹介をしていただくことが立て続けにありました。このキャラバンの活動は、今年のプロジェクトの範囲をさらに拡張しつつあります。当初の想定以上にいまの「茨木」の姿がリアルに浮かび上がっていきそうです。


執筆:ディレクター 山本 正大、インターンスタッフ 坪井 はるな、チーフディレクター 山中 俊広

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