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#318 日本企業が博士を採用しないワケ

NEWS PICS の私のコメントより転載 2024/04/22
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そもそも日本は博士どころか修士に進む数が米にくらべ圧倒的に少ない。それは研究者養成目的ではなく2003年に始まった高度専門職大学院が根付かなかった。その理由は企業が修士号を評価しないから。という野口悠紀夫先生の論稿である。

さて、学位とイノベーションの関係はどうか?という疑問が生まれる。
学位がなくてもその会社で専門性を磨けば新製品はできそうである。ニーズや他社の動向ををよく調べる。実際、そういう考えのもと日本の企業は進んできた。日本の家電業界などそうであり、うまくいった。

それが90年代後半以降劇的に変った。創薬、金融、ITなど非常に高度な専門性シーズが必要になった。これは博士レベルである。これも日本は少ない。だから特許数も学術論文レベルも沈む一方である。存在感はない。

それだけでなく、一方で発見発明が即イノベーションとはならなくなったことである。横繋がりの思考が必要になった。クラウドなどである。そうなるとタコつぼ的な専門性では太刀打ちできないのである。競合やロビー活動などビジネススクールやロースクルールの専門性が必要になった。修士の専門職大学院で学ぶところである。英語力(というよりSNSなどコミュニケーション情報そのものがビジネスになった)と組織のスピードも必要だ。OJTでなく即戦力だ。水平分業が進み、創薬やITは自社で開発するよりベンチャーを買収する形になった。特許などからのシーズ型であってもビジネスモデルとして確立する方が重要で簡単でない。ここは情報戦であり組織変革できないとすぐに負けてしまう。日本はこれらの対応が遅れてしまった。

なんとかできるのは従来どおりの組織でB2Bの部品や素材で地味に生き残る。あるいはアニメなど波及効果の小さいガラパゴス的オタク分野だ。近視眼的なマーケティング競争か、最悪はコモディティ化商品での価格競争だ。イノベーションとはほとんど関係ないところで戦う。こういう事では人口が減ったら終わりだ。実際に日本はそうなっている。

そう考えると企業が学位を評価しないのは院進学しない原因であるが、それは院生の活躍ができない体制の結果でもあり、それが30年間悪循環に陥ってきたということだ。だから「企業よ院卒をもっと採用せよ」「活用せよ」「評価せよ」と叫んでも変わらないだろう。そういうビジネスをやっていないのだから。

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