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O’Connorのすすめ。 - "The Geranium" (1946) by Flannery O'Connor

絶賛、修論に追い込まれ中のtoki。です。
気分転換に研究以外の本を読みたいな~と思って、積読の中からFlannery O’Connorの短編集を取り出しました。

今研究中の作家、RIchard FordがO’Connorをはじめとするいわゆる「アメリカ南部作家」の影響を受けているということで、論文で名前を出すなら一度読んでおいた方がいいなと思い、数カ月前に購入していました。
これまで「南部作家」に対して苦手意識を持っていたのですが、O’Connorの名作"The Geranium"を読んで、その考えが少し変わりました。

"The Geranium"あらすじ

詳しく言うと読む楽しみがなくなりそうなのでざっくりと。
また、O’Connorは非常に短命な作家で、1964年に39歳という若さで亡くなっています。作品の舞台設定もそのあたりの年代と考えてよいと思います。

アメリカ南部の片田舎の老人専用下宿で暮らしていたDudleyは、娘の誘いでニューヨークに越してきて共に暮らすようになる。Dudleyはニューヨークの殺伐として雰囲気や息苦しさに嫌気を感じ、かつての南部での生活を頻繁に思いを馳せる。毎日やることが無く退屈していたDudleyであったが、隣の部屋の前を黒人が通りかかる。どこかの家庭の使用人であると考えたDudleyは、その黒人に猟を教えるために声をかけようする。しかし、彼は娘に「彼は使用人ではなく、隣に越してきた隣人に違いない。黒人とは関わらないほうがいい」と言われ制止される。
ある日、Dudleyはかつて猟を黒人に教えていたことを思い出しながら、仮想の銃を手に「バン!」と声を出す。その姿を近隣に住む黒人に見られ、その黒人はDudleyに"old-timer"と呼び、Dudleyが階段を上る手助けをする。部屋に戻ったDudleyは部屋にあるはずのゼラニウムの花が階下に落ちていることに気づく。


Dudleyが固執するのは、、、?

O’Connorは、Dudleyがニューヨークで見るゼラニウムを以下のように表現してます。

The geranium they would put in the window reminded him of the Grisby boy at home who had polio and had to be wheeled out every morning and left in the sun to blink

"The Geranium", Flannery O'Connor Complete Stories (3)

かつて住んでいた南部で見たゼラニウムの花の美しさはなく、病気のような暗いイメージが与えられています。

物語のラストシーンでDudleyはゼラニウムの花瓶が落ちていることに気づくが、取りに行くことを躊躇う様子が描かれています。
なぜ取りに行かないのでしょうか。

それはやはり、Dudleyが作中を通して黒人を軽蔑した目で見ているからであり、南部では家父長であった自分が北部では"old-timer"となる事実を彼は受け入れらないからだと思います。

仮想の銃を持ち「バン!」と狩猟している様子を黒人に見られた時のDudleyの狼狽した様子は非常に秀逸だし、彼の焦りをヒシヒシと感じたので、ぜひ原文で読んでみてください!!!


ゼラニウムを階下に取りに行かないというよりも、「取りに行けない」という言い方の方が正しい気がします。
階段を下りてゼラニウムを取りに行くと、黒人に階段を上る手助けをしてもらうことなり、それは自分が軽蔑している黒人と対等の立場になることを意味します。この事実は、Dudleyには到底受け入れられないのでしょう。


タイトル"The Geranium"の意味は??

ゼラニウムが象徴することは2つあると思います。
①Dudleyのアメリカ南部での生活と自身の地位への哀愁
②人種及び性差別的思考をやめることができない頭の固い人へのアイロニー


①に関しては、先述した内容が関連しています。
O’Connorが生きた時代は、これまで当然視されていた人種差別や性差別に対して声を上げる人たちが増えてきた時代でもあります。つまり、変化の時代です。公民権運動が頻繁に行われるようになったのは1960年代頃からですが、それ以前にもそうした活動は行われていたでしょう。
本作は、これから迎えるであろう人種差別のない時代、そして失われた家長としての自分の地位に対して不安を感じ受け入れられないDudleyの気持ちを如実に表しています。そして、それをゼラニウムという花が象徴しているのだと思います。

②については、ゼラニウムの花言葉に注目しました。
この作品を読むまで、ゼラニウムという花の存在を知らなかったので、いろいろ調べる中で、花言葉に注目しました。

  • true friendship

  • stupidity

  • gentility

以上が花言葉としてあるようです。
gentilityは、南部での家父長としての地位に固執するDudleyを表しているようで「確かに当てはまりそう」と思いました。
ここで注目したいのは、stupidityです。
Dudleyはゼラニウムに自分自身を投影し固執していましたが、その姿は「愚かである」という意味でゼラニウムの象徴性を解釈できると思いました。
自分が愛でているものが自分の愚かさを象徴するとは皮肉的です、、、。


O’Connorはいいぞお!haha

僕は今、この文章を勢い任せで書いています。(笑)
研究で頭狂っている感覚になっていたので、いいリフレッシュです。

1カ月ぶりくらいに研究に関係ない作品を読みました。そんで、これだけは皆さんに伝えたい!!


O’Connorはいいぞお!!!
O’Connorの短編は30分あれば一本読める!


「アメリカ南部作家」とかキリスト教とか、O’Connorを理解する上で重要な要素はたくさんあるけれど、一旦それは無視してOK。
何と言っても30分あれば一本読めちゃう。スピード上げたらたぶん20分でも読み切れちゃう。そんなお手軽なサイズ感がとてもいい!!!

気分転換にもってこいのO’Connorでした。
皆さんも是非。


てか、よく考えたら1925年生まれで1946年て21歳やん。
21で"The Geranium"書いたんか、、、。
とんでもねえ。


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