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IBの目指すHuman Flourishingとは?

先日東京にいました。
世間はどこもクリスマス一色でした。日本人はいつからこんなクリスマス好きになったのかわかりませんが、コロナが明けた初めての年末ということでとにかく人出の多いこと・・・私のような田舎者は、人混みを歩くのも慣れていませんし、人酔いしそうな感じです。
が、いいことです。こういう世相があって、世の中の金回りが良くなるのは日本経済的にも良いことでしょう。

そして大谷選手が全国の小学校すべてにグローブを送ったのが各地に届けられたというのと、さらにはドジャースで自分に背番号を譲った選手の奥さんにポルシェをプレゼントしたというニュースが、もう・・・そのスケールの大きさがあまりにも・・・自分なんか大人として生きている価値がないのではないかとすら思ってしまいます。苦笑
本当に夢があって素敵です。

私は長年の親友がロサンゼルスに住んでおり、アメリカ人ですが、筋金入りのドジャースファンだということで大谷選手の契約が決まった日は大喜びで連絡をしてきました。奥さんからのクリスマスプレゼントは大谷のユニフォームだそうです。

こうみえて元警察署の署長です!


話は少しそれますが、彼によれば、大谷選手については、アメリカ人も「まるで漫画の世界から出てきたようなスーパーヒーロー」だと、本当に特別視されているようです。非の打ち所がない、どうしたらこんな子が育つのかと誰もが憧れる存在ですね!



さて、ここまでは世界の表側の楽しい話題です。我々は、クリスマスプレゼントどころか、爆撃に怯えながら今日を過ごしている子ども達が数多くいることを忘れてはいけません。
もはや「かわいそう」などという言葉では表現できない実に悲惨な、残酷な現実です。この寒い冬を、電気もガスもない闇の中で過ごしているのだと思います。

私は、この6年、IB機構の校長の代表12名で組織される総裁付きの諮問委員会のメンバーをさせていただいたおかげで、IB機構の中枢で進められている色々なプロジェクトにかかわってきました。

IB Heads Councilのメンバー 後列左から4人目がオリペッカ総裁


去る11月もジュネーブで会議があり、色々な話を聞きましたが、総裁からは次のIBのビジョンとして"Human Flourishing"という言葉が紹介されました。
あえて、日本語に訳すとすれば、「人類の開花」とでもいうのでしょうか。

IB機構が戦後、この50年以上に渡り貫いてきた理念は"Education for a better world"です。教育を通してより良い、より平和な世界を。それに貢献できる若者の育成を理念にしていることは皆さんも良くご存知だと思います。
そしてそのビジョンの実現に向かって、時代に合った、理にかなった最先端の教育実践の知見を蓄積してきたのがIB機構です。ジュネーブに本拠地を置く世界最大の教育NPOであり、その取り組みはいたって真面目なものです。

先日、ガザとイスラエルの間で戦争が始まった際も、総裁であるオリペッカ氏はすぐに隣国のヨルダンに入り、その地域の学校関係者を訪問しました。
そしてすぐに、世界のIBコミュニティーに対して、IBは決してこのような武力による紛争解決を許容しないのだというオープンレターを発表しました。

発表前、総裁は私に個人的にそのドラフトを共有してくれ、「何か意見があれば教えてほしい」とわざわざ聞いてくれるような、謙虚で、実に素晴らしいリーダーです。もともとフィンランドの教育大臣をされていた方ですが、いつも力強く私たちを導いてくれます。

そのIB機構総裁が今回打ち出した新たなビジョンがHuman Flourishingです。この言葉が意味するもの、それはひと言で表せるものではなく、我々ひとりひとりが、それはどのようなものなのか、どういう景色なのか、話し合うべきもので、色々な意見があるべきだと考えます。

世界に生きるすべての人が、それぞれの人生を、生きがいを感じられるもの、幸福を感じられるものにしていく、それがHuman Flourishingなのでしょうが、それはいわば、「平和な世の中の"さらに先"にある世界」です。
先日、テレビでN高の特集がやっていました。校長先生は「N高の教育の目的は、子ども達に生きるための武器を与えること」と表現されていました。
素晴らしい理念だと思いましたが、IB教育が目指すものは、自分の生きるすべの先にある、もはや自分のことだけではない、「平和な社会に貢献する」「人の役に立てる」そういう社会人を育てることです。

IBは別に宗教ではありません。先日の記事にも書きましたが、学校教育の目的は、大学受験のためであってはならないんです。
そういう当たり前のことを、すべての教師、すべての生徒、すべての保護者が共有できる、そういう学校コミュニティーを作るのが私が目指す学校づくりです。
だから自分はIBコミュティーが好きだし、多くの皆さんに知っていただきたいと考えています。


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