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ことばに「優しい間」を宿す


目に涙をため

顔を真っ赤にして

いつもより眉が上がったあの子は

普段話す声を3くらいだとしたら10くらいのボリュームで

普段話すスピードを2くらいだとしたら9くらいのスピードで

言葉を発した。

そして、手を握りこぶしにしてわたしの方に拳を向けた。


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「かんしゃく」というメガネで切り取られた

そのメガネをそっとはずしてみると

そこには一人の人の姿が浮かび上がってくる。


わたしには、その子の声がまるで「叫び」のように聞こえていたとしても

わたしには、その子の仕草がまるで「殴ろうとしていた」ように見えても

その子に何が起こっていて、本当の本当はどうしようとして、何を考えて、何を感じていたのかの全貌は

わたしにはわからない。

だから自分のメガネで切り取る前に

一人の人として生きているその子の姿をなんとかそのまま見つめようとする。話を聴こうとする。


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自分のメガネは、自分の経験や価値観、そして自分の生きてきた集団の文化や歴史から生まれた自分にとっては大切なリソースでもある。

そのメガネを大切に扱い、その上で自分のメガネを自覚して、そのメガネをはずしてみて日々何かを見つめるのはとても難しい。

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「かんしゃく」と切り取ったあと、わたしはどんな行動をしているのだろうか。もしその場をおさめようとする時、その背景に、わたしはどんな感情があって、どんな経験が影響しているのだろうか。わたしが生きてきた社会の規範がどう影響しているのだろうか。

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難しく、終わりはないけれど、自分のメガネや、そのメガネをかけたくなった感情や経験に気づき、それを大切に大切に扱い、そっと違うメガネをかけようとしてみる。そっとメガネを外そうとしてみる。

そっと自分に問うてみる。

そのメガネをはずしたら目の前のことはどんな風に自分に映るのだろうと。

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そんな営みを日々繰り返しながら紡ぐ言葉と、その言葉を受け取る人との間に優しい間が宿るのではないか。

そう願いながら、大切に大切に丁寧に丁寧に言葉を選び、それが誰かを排除していないか、誰かの傷をさらに深めていないか、この社会に埋め込まれてきたバイアスに無自覚に加担していないか、と振り返る。

選んだ言葉の背景にある複雑さを、その複雑さを宿す社会構造を、そこに関わる自分たちのことを、そしてそれを考えながらも自分たちの想像するその多様性の限界を、知ろうとする。

様々なことを見つめ、問い直し、社会に影響を与えることを自覚しながらアウトプットを育む。

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PIECESの広報を担い育むみこりんとなっちゃんは、そんなふうに

言葉に優しい間を宿すという願いを共有しながら、様々な発信をつくっています。

わたしたちの発信は、誰かに影響をし、社会の見えないけれど確かに育まれている文化にも影響をするからこそ、わたしたちは広報も市民性を醸成する大切な大切な一つの活動だと考えています。

虐待防止月間である11月。
この1ヶ月もその前後の11ヶ月も
様々な生活環境で暮らす子どもたちがいます。
今この瞬間も。わたしの隣で。

だから、この1ヶ月だけでなく、日々、その環境に目を向け、
安全が失われ困難になる状況を、そして安全が失われるその前の様々なサインを受け取り、働きかけていくことが必要であると考え、わたしたちPIECESは、日々活動しています。

それでも人が注意を向けるこの11月に、

見えないけれどすぐ隣で起きている暮らしのことを

見えないけれどじわじわと広がっているかもしれないほころびの兆しを

見えないけれど確かにその手元から育まれている、新たな明日のことを

「知って」「考えて」「行動する」

時間にしようと考えて、PIECESの広報、みこりんとなっちゃんが中心となり、PIECESのデザイナー長谷川さん、「まきば」メンバーの草刈さん、PIECESに新たにジョインした瀬戸さんが関わり、キャンペーンを立ち上げました。



それぞれが出会ってきた暮らしがあり、そこで聴いた声があり、そこで感じたことがあるからこそ生まれた取り組みです。

ぜひ一緒に広げていただけたら嬉しいです。




こちらのイベントでも、自分が受けているニュースからの影響や、自分がめぐりめぐって及ぼしているかもしれない何かへの影響、育んでいるかもしれない優しい間について一緒に考えていけたらと思っていますので、ご関心ある方はぜひお会いできたら嬉しいなと思っています。



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