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【映覧】北野武・監督 『首』(2023)

今月初めに映画館で観劇。
いつか書こうと思ってたらもう今月も終わりジャマイカ、
いや今年もお終いジャマイカ!
書きたいと思ってる映画は渋滞を起こしていて、上塗りするように新たな映画を見てしまうので、実際の色が霞んでしまう。
肛門見えても(ナイツねた)
いやこうみえても、たけし(敬称略)映画はほとんど見ている。
僕らぐらいの年代にとっては、絶対といっていいほどの影響を受けている。
小学生で漫才ブームの洗礼を受け、いつしかお茶の間はビートたけしで溢れ、
"赤信号みんなで渡れば怖くない"
まさに日本人の本質をエグってるジャマイカ!
フライデー殴り込み事件、バイク事故と狙ったかのように世間を煙に巻き、
とうとう日本映画界では巨匠となってしまわれた。
詰まり、たけしファンなのである。
「その男、凶暴につき(1989年)」から「ソナチネ(1993年)」まで、僕が20歳そこそこの年齢で洗礼のようにそれらの映画に浸かってしまったのだ。
俳優としての彼もいつでも光っていて、そうショーケンのようにその映画を喰ってしまう。
何かのインタビューで、たけしとショーケンが対談していて、いつか共演できたらといった話をしていたが、残念ながらもうそれは叶わなくなってしまった。


『首(くび)』(2023)

監督・脚本・原作:北野武
出演:西島秀俊、加瀬亮、中村獅童、木村祐一、遠藤憲一、
浅野忠信、大森南朋、小林薫、岸部一徳、寺島進、荒川良々

「首」の題字が白黒から真っ赤に染まり、部首のくさかんむりがバッサリ斬り落とされる。
それが始まりだ。
戦(いくさ)で、躯(むくろ)となった無惨な兵が映し出されていく。
足軽の死骸に、それを喰らう甲虫(しでむし)が這い回り、川は血で染まる。
戦国時代、織田信長を長とし、その配下の家臣には、秀吉、家康と名を連ね
ご存じのところ、明智光秀の謀反で信長が討たれる本能寺の変までが描かれていく。
それにしても今の日本映画の、中堅どころ(たぶんこれからベテランの域)の役者が勢揃いしてる。
北野組、それは役者の憧れだともいう。
演技指導なし、一発撮り、撮り直しなしの、ライヴ感溢れる現場だという。
それが芸人ビートたけしの、映画の撮り方だ。
その手法が、二度と撮り直さないコトで役者に極度の緊張感を与え、最初で最後の演技を引っぱり出すようだ。
何度かたけし映画に出ている役者には有名な話だが、静寂と緊張で張り詰めた現場はいともあっさり撮り終わり、明るい時間に撮影は捌けるという。

信長役、加瀬亮の激昂ぶりが凄くキレキレだ。
暴力と狂気、暴虐のお殿様。
それにブン回される光秀(西島秀俊)や、村重(遠藤憲一)この二人はカップル(男色)の関係、
あまりにも手痛い仕打ちが続くので、ある意味、殿と家臣のSMプレイを訝しるくらい。
これ実際見てる方は圧倒され笑っちゃうしかない(あまりにも痛々しいので)
たけし映画の本領発揮である。

清水宗治(荒川良々)が切腹する場面は笑った。
どうどどうぞ(ダチョウ倶楽部)的な感じで、秀吉の策略にハマり腹切りに追い込まれるんだが、良々が小舟の上で舞ったり辞世の句詠んだり勿体つけるもんだから、遠目に見てる秀吉(たけし)たちが
「早く死ねよ」って騒ぎ立てて、もうこりゃ"風雲たけし城"そのまんま東。
秀吉の弟・秀長(大森南朋)も佳い具合に、たけしの相方をこなしていて、素晴らしく息が合っている。

大抜擢だと思ったのが、曽呂利 新左衛門(落語家の始祖ともいわれる)木村祐一か、
ユーモラスにそしてどんな役回りかも分からないうちに活躍を続ける。
本を読んでいないので知らないけれど原作本では、彼が主人公だという。

中村獅童は、庶民側から武臣を目指し出世していく様を、悲しく虚しく演ずる。
気持ちを入れ過ぎるくらい体当たりだが、そちら側からの目線で映画は進行していないので少し霞んでしまう。

全体的な絵は重厚、クロサワ映画かと思うくらいだ。
色の使い方は「乱」こんな時代劇撮れる監督がまた出てくるなんて、たけしと同じ時代を生きられて嬉しい。

そんなわけで(どんなわけだ)大将の「首」をめぐって、どいつもこいつも狂乱続ける戦国絵巻でござい。
「首」持ってこいよ、「首」って云って、
サッカーボールみたいに蹴飛ばす秀吉サイコー。
その時代の史実は知っていても、本当の姿は誰にも分からない。
ステレオタイプな時代劇ではない、刺激ックスで破廉恥な映画だ。
淀川長治も黒澤明も認めたビート先生の最新作。
映画界からではなく、門外漢な芸人ビートたけしが、まさか日本映画界を席巻するとは30年前には誰も思わなかった。
そして大御所と呼ばれる昭和の名俳優がほとんど鬼籍に入られてしまわれ、もはやお先真っ暗とも思われた日本映画にも、
少しだけ光明が差してきたんじゃないかな(偉そーですが)
この映画に出てる役者陣、みなとってもイイ顔していた。

たけし映画、僕は死ぬまで見続けていくことでしょう。
乞う次回作!!!

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