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少しいびつな恋愛オムニバス

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恋愛は真っ直ぐで綺麗なばかりじゃない。歪んだ情熱を持て余す人達のための、少しだけ怖い恋愛オムニバス短編集です。
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#月刊撚り糸

短編小説_変質する夜を抱いていました #月刊撚り糸

「あんたには異父兄弟がいるよ」  こっくりと濃い宵闇に立ち尽くした私に、女は顎をさすりな…

七屋 糸
2年前
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短編小説_秋に馳せる。#月刊撚り糸

 その寿司屋の制服はうさぎの目のような色をしていた。  女の子の胸元には「研修中」の札が…

七屋 糸
2年前
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キキタリナイ。#2000字のドラマ

好きなやつが恋人と別れたらしい。 _ 「やっべぇぇぇ、死ぬ死ぬ死ぬ!」 「おい! 一旦逃げ…

七屋 糸
2年前
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異星人とペティナイフ #月刊撚り糸

まさか押し倒す側になるとは思わなかったが、見下ろした佐竹の白いおでこが意外にも優越感を刺…

七屋 糸
2年前
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あの木陰にはユウレイが住んでる #月刊撚り糸

あの大きな木の名前、なんて言ったっけ。 ずり落ちる花束を左腕だけで抱え直すと、鼻先に百合…

七屋 糸
3年前
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『砂城に夕立ち』 #月刊撚り糸

あなたの声がして、ドアノブにかけた指が躊躇う。まるで初めて訪れる場所のように身体が強張り…

七屋 糸
3年前
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今年の冬は彼女のために #月刊撚り糸

国道沿いから一本外れたトウカエデの並木道は暖かなまどろみに包まれていた。若葉の木漏れ日が作るまだら模様のアスファルトの踏み心地は柔らかく、5センチヒールの足取りは軽い。半歩前を歩く彼のスニーカーはまだ新品同様に真新しく、春らしい清潔感にあふれていた。 短く明瞭に告げられた「付き合ってほしい」の一言に「はい」と返事をすると、彼はほっとしたようにしばらく沈黙した。私もそれに合わせて唇を引き結び、人通りの少ない道を連れ立って歩く。風にざわめく木々の音をBGMにして、ふたりの関係が