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少しいびつな恋愛オムニバス

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恋愛は真っ直ぐで綺麗なばかりじゃない。歪んだ情熱を持て余す人達のための、少しだけ怖い恋愛オムニバス短編集です。
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#ショートショート

キキタリナイ。#2000字のドラマ

好きなやつが恋人と別れたらしい。 _ 「やっべぇぇぇ、死ぬ死ぬ死ぬ!」 「おい! 一旦逃げ…

七屋 糸
2年前
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kiss & Crush

愛されたがりの結末なんてとっくの昔に知っていたけど、それを認めるのはいつも怖い。今度こそ…

七屋 糸
3年前
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バス、走る。 #旅する日本語

からかわれているのだと思った。 「生一本だね」 笑った貴女の顔は俺の人生でもっとも魅力的…

七屋 糸
3年前
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「さよなら」には三日いる #お気に入りの音楽で言葉を綴ろう

二年付き合った彼女に別れを切り出したら「三日だけ待って」と言われた。 大事な話があるとメ…

七屋 糸
3年前
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溶けない人 #みんなの2000字

ぴちゃ。 朦朧とした頭が聞いたのは、自転車のカゴに放ったペットボトルの音だとわかっていた…

七屋 糸
3年前
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あなたに送れなかったメールが無料公開のエッセイになった日

オレンジ色のガラケーの行方がわからない。 高校生の頃から大学にあがる頃まで愛用していた二…

七屋 糸
3年前
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行き止まりに蜘蛛の罠

「ゴミ袋がなくなった」と言ったのは、嘘じゃなかった。 現に着なくなった服を詰めたら最後の袋がちきれんばかりに膨れ、部屋の隅で口を閉じてほしそうに傾いている。断捨離は当分のあいだ続くというのに、不用品が行き先を失ったことで大掃除の進行が止まってしまっていた。 西陽に翳りはじめた彼の部屋で、わたしは不在の人の私物をひとつひとつ丁寧に机や棚に収めていく。 買い置きのコンタクトレンズ、仕事で使う専門書、種類を間違えて買った乾電池。雑多に散らばったものがあるべき場所に帰っていくの

今年も夏がうそをついた #また乾杯しよう

蝉が、死んでいた。 小さい頃の思い出だ。家の玄関前だったか、通っていた幼稚園の園庭だった…

七屋 糸
3年前
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光を待つひと #ナイトソングスミューズ

駅のホームのへりに立ち、遠ざかっていく電車の後ろ姿に手袋をした親指をあてる。羽虫でも押し…

七屋 糸
3年前
63

あなたがほしいものは #触れる言葉

喧嘩をすると、彼は決まってわたしに背中を向けてじっとしていた。 駅から歩いて10分の場所に…

七屋 糸
3年前
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【短編】浅き夢見に

靄がかった天井の壁に、線のように細い光の筋が走る。その筋はだんだんと太くなり、わたしの顔…

七屋 糸
4年前
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時空間に花は咲くか(前編)

恋人を笑顔にする魔法はありますか? 5分程度で読める短編です。 以下、本文です。 *ーー…

七屋 糸
4年前
13

【短編】エンドロールの赤い傘

人間は、いくつかの煩わしさでできている。 五分程度で読める短編です。 以外本編です。 ✳…

七屋 糸
4年前
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【短編】愛が「可愛い」に重なれば。

恋人の条件はありますか? 五分程度で読める短編です。 以下本文です。 ✳︎ーーーーーーーーーーーーーーーーーー そりゃあ女だから「可愛い」って言われたら嬉しいけど、それだけじゃ物足りないのよ。 一樹の背中を見てつくづくそう思う。自慢の大きな身体を縮こまらせ図書館を出て行く姿は、家の庭によく現れる尻尾の短い黒猫に似ていた。 大学の図書館でレポートの仕上げ中、「あ、資料忘れちゃった」と独り言みたいに呟いただけで「俺、用事あるからついでに取ってくるよ」と一樹は言った。