ほぼ観光客な、ヘルシンキでの2日間
あっという間に、フィンランドに来て3日目の朝が来た。
12時間にわたるフライトの疲労、無事にここまで到着した安堵、はじめてのヨーロッパの街並みに胸躍る高揚感。
まだ、人に見せられるような文章を書くには、頭も心も準備が整っていないけれど、そんなことを言っていたら、しばらくは書くことができなさそうなので、せっかく早く目が覚めたから何か書いてみようと思う。
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到着日はフィンランドでも何日かぶりだという吹雪の日だった。
東京を22時ごろ発ち、ヘルシンキのヴァンター空港に現地時間で朝4時台に到着。乗客は多くがヨーロッパ人で、日本人は少なかった。比較的空いていた飛行機は、思いの外フリーダムな雰囲気で、席を自由に移動する人もいれば、3列シートを贅沢に使い横になる人もちらほら。
予定よりもやや短い12時間のフライトは、案の定しっかりと眠りにつくことはできなかったけれど、それでも思ったより長く感じなかった。
離陸時に眼下に広がる東京のまちが無数の灯りが輝く宝石箱だとしたら、雪化粧をした早朝のフィンランドは粉砂糖をまぶしたお菓子のまちのように見えた。
乗客のほとんどは乗り継ぎで次にフライトへと向かっていった。入国審査ではワーキングホリデーのビザが理解されずに、やや手こずったがなんとか通過。警備員の一人もいない、手荷物受け取り場では、わたしの荷物だけがベルトコンベアをぐるぐる回っていた。
8時。ヘルシンキ中央駅で、一足先に同じくワーキングホリデーでヘルシンキに滞在している日本人の友人(といっても、この日が初対面)と待ち合わせ。荷物は合わせて40kgをゆうに超える。非力なわたしは、空港から中央駅へのたった30分ほどの移動で、すでに半べそをかいていたので友人の助けが心底ありがたかった。
吹雪と大荷物で視界が狭まる中、それでもはじめて見るヨーロッパの街並みはどこもかしこも映画の中の世界のようで、今自分がここにいることが信じられないような心地だった。
ホテルのチェックイン後は、そのままベッドに倒れ込み泥のように眠った。夕方、少しだけまちへ繰り出してみようと思っていたものの、そのまま夜を迎え、シャワーを浴び、再び朝まで爆睡。フライト後の疲労を想定してケチらずに、個室を予約しておいた自分、グッジョブ。
長い、長い一日だった。
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翌朝、空腹と頭痛で起床。それもそのはず、昨日の昼から何も口にしていない。頭痛はおそらく単なる寝過ぎだ。昨日の吹雪が嘘のように、雲一つない快晴が広がっていた。身支度を整え、カメラを持ってまちに繰り出す。建物の中が暖かいので、忘れかけるが気温は-5℃。しっかり冷え込んでいる。
ホテルがあるのはハカニエミという地区で、ヘルシンキ中央駅のあたりまでは歩いて30分ほど。パステルカラーの建物、信号や表札、道行く人々のファッション、通勤通学客を運ぶトラム、何もかもが新鮮で、寒さも空腹も忘れて歩き、夢中でシャッターを切った。
いつの間にか港まで辿り着き、さすがにお腹が空いたので、オールドマーケットで小休憩。室内の暖かさに、すっかり体が冷え切っていたことに気づく。ミーハーだとは思いつつも、フィンランドでの最初の買い物に、選んだのはシナモンロールとコーヒー。kiitos(ありがとう)以外は何も聞き取れないフィンランド語に、耳を傾けながらゆっくり味わった。
途中、目の前の席にやってきた現地の若い女の子3人組が、ジャケットを脱ぐとノースリーブで目を疑った。日本の女子高生が真冬でもミニスカートなのと同じようなものなのだろうか。
午後からは昨日が初対面ですっかり意気投合した日本人の友人と、まちを巡った。カンピ礼拝堂とテンペリアウキオ教会を目的地に、お互いのことを話しながらひたすら歩いた。教会は心を落ち着ける場所だというけれど、異国の地に着いたばかりのわたしは高揚感が抜けず、正直、あまり冷静になれなかった。また改めて訪れよう。
これがわたしのフィンランドでの最初の2日間。
気持ちも行動もほぼ観光客だ。
今日はヘルシンキから電車で2時間弱北上し、フィンランド第2の都市タンペレに移動して、滞在先はホテルからホームステイへ。
少しずつ現地の日常に近づいていきたい。
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