見出し画像

【超短編】第17話 双生児

「僕は、町の灯りが煌めいているのが好きだし、町の道はまっすぐなのが好きだ。四つ辻に立ち、ある方向を見た時、その道がまっすぐ続いているのが良い」
「俺は、暗く、ひっそりとした町の雰囲気が好きだし、町の道は複雑に入り組んでいるのが好きだ。時に坂道や階段なども加わって、空間がいっそう歪んでいくのが良い」

「僕は、天体や地球が回っているのは、終わりを嫌うからだと思っている。前に進めば、きっとどこかに終わりがある。回ることは、終わらないことだから」
「俺は、回るという行為そのものが既に終わっていると感じる。前に進むということは、始まり、終わり、始まり、終わり、また始まることだから」

「僕は、精神的なつながりを大切にしたい。思うこと、考えることは無限だし、それは無限大の愛の可能性を秘めている」
「俺は、肉感的なつながりを大切にしたい。今、ここ、俺、お前、カラダ、それだけが真実だ」

ふとリビングを見ると、妹が怪訝な顔でこちらを見ていた。

「お兄ちゃん、何ひとりでブツブツ言ってんの?気持ち悪いんだけど」

「え?」
「え?」

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?