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「十二支のはなし」番外編 「インドアな穴居人」「恐竜時代のマッドマックス」「SF版 ウラシマ太郎・R18指定」


(番外編だけど、本編よりも長いです。ショートショートの豪華三本立てだと思ってください。順番に読まないとストーリーが分からないようにはなっています。それから、ストーリーは地球ではない、どこかの遠くの惑星の話なので、その前提も忘れないでいてくださいね🙏 浦島の話は下品だけど、パロディとしてここまでよくできたのはないと自信を持って言える。)

「インドアな穴居人」

十二支のはなしでは、ドラゴンの口の中に住んでいるウサギさんが出てくるが、同じくドラゴンの体内には穴居人(けっきょじん)が住んでいる。彼らがウサギの飼い主である。

穴居人とは洞窟に住む原始人のことだが、ドラゴンのあんぐりと開いた口を住処にする者もいた。

彼らは、その後に登場するヤドクガエルの毒を矢じりに塗る原住民とは、敵対関係にある部族で、原住民が好戦的なのに比べて、暗闇を好みどちらかというと性格的に大人しい。

アウトドア派(原住民)と、インドア派(穴居人)に区別するとわかりやすいかもしれない。

ドラゴンはヒフが分厚いので、原住民の貫通性の鋭利な武器(吹き矢、弓矢など)を寄せ付けない。

ドラゴンが口を大きく開けて寝ている時に敵襲があると、穴居人は食道に設置した縄ばしごを降りていき、真下にある「火袋・ひぶくろ」を揉む。

火袋を揉むとドラゴンは「ゴーーーーーーッ」と口から火炎を吐くので、口の入口にファイアーウォール(火の壁)が築かれて、しばらくの間、敵が侵入できなくなる。

入口近くのウサギが炎で焼けないのは、ドラゴンの口の中は非常に深くて、頭上高くを炎が通りすぎていくからだ。ウサギさんにとっては「温風が走っていった」とむしろ心地よいくらい。夏はドラゴンが海辺に移動するので、中は意外にも涼しい。穴居人がビーチでスイカ割りを楽しむので、スイカを食べすぎてウサギがお腹を下さないように注意する。


「火袋・ひぶくろ」はこのドラゴンに特有の器官で、高熱なので、素手で触ると火傷してしまう。必ず軍手をはめないといけない。

軍手は、ホームセンターで束になって売っている白い徳用軍手で、イボのついたやつがいろいろ使えて便利らしい。

ある穴居人はハーレーダビットソンの黒いグローブを持っているけど、これにはある逸話がある。

「恐竜時代のマッドマックス」


このハーレーのグローブは、サイドーカー付きのハーレーダビットソンに乗ったサングラスのバイク乗りのものだった。

どこまでも続く長距離の移動に疲れたバイク乗りは、国道のど真ん中にオートバイを停めて、気分転換に腕立て伏せをしていた。

その時、原住民のチンピラが繁みから現れて、バイク乗りを襲った。

穴居人の血気盛んな若者も、近くでずっと様子を見ていた。バイク乗りはモヒカンのチンピラに無残にも身ぐるみを剥がされて、パンツ一丁で震えている。

国道が整備されてからは、オートバイや、自動車、大型ダンプが通り過ぎることは珍しくなかったが、一帯は未開の危ない部族がうようよしているので、貨物や金品を車ごと奪われたり、服を盗られて丸裸にされることがよくあったし、車は立ち止まらずに猛スピードで走り去るのが交通の鉄則だった。

大人しい穴居人の中でも、若い世代にはチンピラ化する者が少なからずいた。

彼らは革ジャンを着て、コンバットブーツを履き、頭髪はモヒカン刈りに剃り上げ、分銅の付いたチェーンを振り回し、バイクや改造車で暴走した。これは穴居人も、原住民もほとんど同じスタイルで見分けがつかなかった。

乗り物も、ファッションも、ほとんどは強奪したものだが、実力で奪い取ることこそが彼らのステータスだった。

強盗に遭っているバイク乗りを目撃している若者も例外ではなく、無法の世界に途方もない憧れがあった。彼は手に、未使用の先太で疣(いぼ)のついた棍棒を握りしめて、その殴り心地(なぐりごこち・・・笑)を試したくてうずうずしていた。彼はまだ、暴力の味を知らなかった。手にした武器の凶悪さ以外は、服装もおとなしかった。

・・・・・・・・・

バイク乗りを追い詰めて、財布の中身の小銭をジャラジャラ言わせて、「ヒャッハーー」と歓喜の叫び声をあげているモヒカンの原住民は、背後から忍び寄る危険にはまったく無防備だった。

ぶんと鈍器が空を切ると同時に、「ごき」「げふ」といやな音がした。

この時、穴居人の若者が垂直に振り下ろした棍棒のスイングはあまりにも見事に決まり、やられた敵は、両肩の間に頭部がすっぽりと陥没して、まるで首を引っ込めた亀にそっくりだった。ビギナーズラックだった。

頭を胸までめりこませたモヒカンは泣きながら家に帰った。家族が狩猟したばかりの大亀の中身をくり抜いて、甲羅を与えたところ、それを着てやがて、ほんとうに亀になってしまった。

生きたまま甲羅から追い出された亀は、オオトカゲのような姿で暗闇を走り去っていったそうだ。

その後、亀になった男は改心した。中央部分だけ残した頭髪まで剃り、竜宮城の乙姫に仕えて重宝される(彼が亀になったはなしは、後でくわしく書こう)。

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一方、穴居人の若者は人を殴る感触に興奮して、モヒカンが去った後に棍棒を膝に乗せて、サイドカーの座席で、何度も今日のできごとを繰り返し思い出しては、自分の腕の良さにうっとりしていた。

シートの上の彼はすでに、革ジャンに、チェーンのついた革のズボンを履き、靴はアーマーのついた軍靴。すでに世紀末の無法者御用達のスタイルだった。後はふさふさした頭髪を、黒曜石のナイフでキレイに剃り上げるだけだ。手が震えているから、家でゆっくりやろう。

バイク乗りはパンツ一丁で逃げ回っていたところを、ダンプの運転手に拾われて町へと帰っていった。

この異星でのお話、まるで映画「マッドマックス」みたいな世界観になってきましたね。違う点はあくまでも彼らの略奪や抗争が、不良少年の勢力争いの域を出ず、穴居人の年長者も、原住民の年長者も彼らに頭を抱えていることだ。

若者のチンピラ化のおかげで、かえって二つの仲の悪い部族の間の融和を実現しつつある。

穴居人の若者もサイドカー付きのオートバイを手に入れて、ウキウキしながらその日も、ドラゴンの口に帰ったが、ナイフでじょりじょりと鏡とにらめっこしながらモヒカン頭を作っていたところで、親に激怒された。棍棒はドラゴンの火炎でたちまち焼却され、トサカのようなモヒカンも燃やされたからツルッパゲとなり、反省で頭を丸めた人のようになってしまった。彼が謹慎期間中にドラゴンの体内から外出しようとすると、ドラゴンが「ゴーーーーーッ」と火を吐いて出口を塞いでしまうから、ウサギを撫でているより他にやることがなかった。ドラゴンも彼を更生させようとしていた。

ついに改心した若者は、お父さんにハーレーの黒いグローブをプレゼントした。これは今でもドラゴンの火袋を揉むのに使われている。

「SF版 ウラシマ太郎 ・R18指定」

亀になったモヒカン男のその後だが、醜い姿になった代わりに、超能力を獲得した。彼は時間のすすみを極度に遅延させる「チロー(遅漏)効果」という能力を操るようになった。

亀がその気になると、一定の閉鎖された空間の内部は、彼の放射する「チロー波」で満たされ、時間の進行はほとんどゼロに近づく。剃髪して後は乙姫様に仕えるようになったが、竜宮城は永遠の栄華を誇り、「チロー波」には時間の遅延作用の他に、媚薬のお香を焚いたような強力な催淫効果もあり、乙姫様の快楽も永久に持続することになった。

竜宮城ではゼロ時間だが、地上では何千年という年月が経過した。

ある日、竜宮にウラシマという男が連れて来られた。

亀が乙姫様の言いつけで、地上のできごとを観察しに陸に上がったのだが、ウラシマは潜水服を着たまま地上で溺れているところをカメに助けられて、竜宮城に担ぎ込まれた。

地球の昔話の浦島太郎では、ウラシマが亀を助けることになっているが、この異星の未来世界では、事実がまったくの真逆である。

乙姫は股の間にウラシマを挟むと、ナイフの一突きで潜水服を切り裂いた。滝のように液体があふれ出した。ウラシマは自分のおもらしで溺れていた。

潜水服からの脱出に、ウラシマは帝王切開とか、出産のメタファーを感じ取ったのだろうか。乙姫を見て、目をパチクリとさせたウラシマの第一声は「・・・ママ!??」だったそうだ。ウラシマはとてつもないマザコンだった。

地上でのウラシマだが、彼は性的には極度の早漏に分類された。

早漏も並外れたものになると、亀が頭部から放射する「チロー波」に対して、陰部から「ソーロー波」を放射することになり、竜宮城では、チロー波とソーロー波がぶつかりあって、ふたつのエネルギーがお互いを打ち消しあおうとするから、地上では数千年も経過する間にほとんどゼロに近かった竜宮城の時間が初めて進んだ。

亀のチロー波の方が強力なために、時間のすすみはかなりゆっくりとだが、着実にすすみ、ウラシマは乙姫様との性行為で、チロー波の作用で早漏をかなり克服した。それでも早いことには変わりなかったが、ウラシマは歓喜雀躍した。

竜宮城では、亀のおかげでなんとか性行為を楽しむことができたウラシマ。枕元では地球製の「SEIKO(性交が成功だけに。笑)」の置き時計が、ゆーーーーーーーーーーーーーーーっくりゆーーーーーーーーーーーーーーーっくりゆーーーーーーーーーーーーーーーっくりと秒針を刻んでいる。

数千年も時の止まった竜宮で、これだけゆっくりとだが時計の針が動いている。ウラシマの「ソーロー波」がどれだけ強力なのかがわかる。

亀の「チロー波」が外部から遮断された竜宮の閉鎖空間で、最大限に効果を発揮するように、ウラシマの「ソーロー波」も、同様の条件で効果が最大になる。ウラシマのいた地上で、どんどん時間のすすみが加速しなかったのは、彼が開けた陸上の生活をしていたからかもしれない。地上では性行為における不全、日常生活における困難として、重度の早漏が彼を困らせた。

地上でのウラシマは刺激に対して弱すぎたから、パンツがこすれただけでどくどく。うっかり肘が女性の胸にぶつかっただけでどくどく。町に氾濫する怪しからんエロスが彼の動体視力をほんの0.1秒かすめただけでどくどく。

ウラシマのいる未来世界では、大気や環境の汚染が極度にすすみ、市民の標準的な服装は潜水服だった。頭から、つま先までぴっちりと隙間がない。

潜水服の中で窒息して、溺死寸前だったのは、早漏すぎるゆえに立て続けにおもらしを連発したからだった。

まずいことに亀に助けられた日のウラシマは、半径数キロをエネルギーの半円のドームで囲われた、ヌーディストビーチに遊びに来ていた。一部の海水浴場は、バリヤーで包み込むことによって強力な日光や、有毒な大気から保護されている。

ビーチに来たら窮屈な潜水服を脱ぎ捨てて、みんなスッポンポンになるのだが、ウラシマはカナヅチでまったく泳げなかった。

海仕様で、潜水服にシュノーケルや足ヒレまでつけて、銛(もり)を撃つピストルまで持って、ビーチで誰も寄せつけない不気味なオーラを一人だけ放っていた。「コーホー」とダースベイダーみたいな呼吸音を立てながら、水に浸からずにペンギンのようにペタペタと砂浜を歩いていたり、カニ🦀✌️とじゃんけんをしてパーを出して✋負けたりしていたのだが、ゴーグルのくもりを拭って周囲を見渡すと、彼の目に飛び込んできたのは!!

カニさん🦀、女の裸、裸、はだか、裸、裸、裸、はだか、裸、裸、裸、裸、裸、裸、はだか、はだか、裸、裸、裸、裸、はだか、裸、スイカ🍉、裸、裸、浮き輪、裸、裸、裸、裸、裸、はだか、ビーチサンダル👡、裸、裸、裸、裸、裸、裸、はだか、はだか、裸、裸、裸、裸、はだか、裸、裸、裸、スイカ🍉、裸、裸、裸、裸、裸、裸、はだか、裸、裸、裸、はだか、裸、ビーチボール🏐、裸、裸、裸、裸、カモメ、カモメ、カモメ、カモメ、カモメ、裸、はだか、はだか、裸、浮き輪、裸、裸、裸、サーフボード🏄、はだか、裸、裸、裸、裸、裸、裸、裸、裸、はだか、裸、裸、裸、かき氷🍧、パラソル⛱、裸、裸、裸、はだか、はだか、裸、裸、裸、かき氷🍧、裸、はだか、裸、裸、裸、裸、裸、裸、裸、裸。

ウラシマは女の裸の数だけどくどくどくどくとおもらしをして、ぶっ倒れていたところを、竜宮城の亀に助けられたのだった。

「カメさん、あの時は助けてくれてありがとうごさいます。」

あの日のことが話題にあがるたびに、ウラシマは亀にありがとうと感謝をこめたお礼を言い、乙姫もにこにことしていつも嬉しそうだった。

ウラシマと乙姫の幸せな生活が続いた。地上では再び数千年の時が過ぎ去った。

ある日、乙姫は鏡を見て、自分が少し老化していることに気がついた。モデルのようだったスタイルが崩れて脂肪がついたように見えるし、白髪を発見したし、肌の張りが以前よりもなくなったような気がした。ウラシマが竜宮に来て以来、ゼロに近かった時間がゆったりとだが動き出したからだ。

マザコンで年増好みの浦島は、近頃の乙姫はますます魅力が増していると思っていたのだが、乙姫は自分が年を取ることが容易には受け入れられなかった。

ウラシマはカメの背中に乗せられて、一時的に地上に放逐された。

数千年後の誰も知っている人のいない未来で、ウラシマは早漏治療のためにクリニックに受診することになった。お使いに、乙姫のための「未来の若返りの薬」を頼まれた。ウラシマ用の若返り薬も買い込むから、大金を渡された。

もしも病院で渋い態度を取られたり、受診を拒否されたら、この玉手箱を使って、「病院を一瞬で廃墟にする」と脅迫できるからと漆塗りの小箱も渡された。

それでも、「この箱は絶対に開けてはいけない」と乙姫はウラシマに念を押した。この箱は爆弾だろうか?

未来の世界では大気がクリーンになっていて、潜水服はいらなかった。大昔にカメに助けられた時の持ち物だった銛(もり)を撃つ水中銃と、玉手箱(爆弾?)の入ったスーツケースを抱えて、おっかなびっくり病院の自動ドアを開ける彼は、ちょっとした銀行強盗のようなスタイルだった。

未来の病院のロボット医師は、戸籍データの存在しないウラシマに「ムリデス カエッテクダサイ」の一点張りで受診を拒絶したものの、ウラシマが凄んでみせて、スーツケースから玉手箱を出して、銃を突き付けたところ、X線アイで箱の中身を解析した後に、彼の診察を認めた。玉手箱を見せただけですごい威力があるじゃないか!

まずは、ロボット医師に無理を言ってせしめた若返りの薬をスーツケースにぱんぱんに詰め込んだウラシマ。

続いて、これが治らないと竜宮城への帰宅を拒まれてしまう、早漏の診察をお願いした。

ロボット医師は玉手箱の透視の時と同様に、手で触れることなしにX線アイをウラシマの陰部に向けた。

しばらくピコーンピコーンと電子頭脳で計算した後に、ロボット医師が導き出した、ウラシマの早漏に関する、取るべき治療法がモニターに表示された。

その答えは、

「去勢」

だった。

はたして、ウラシマは玉手箱を開けたのだろうか?笑




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