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「リーダー」をやめると、うまくいく。かもしれないけど経営者って大変だな。


なにこれのっけからあやしい。買う本間違えたのか?
南インドで経営者だけを集めてやるようなヨガの話からはじまってるぞ…。

どうやらこの著者、カンブリア宮殿でとりあげられた企業の経営者で、とても注目されているらしい。某都市銀で中堅社員になってから辞めて、伝統ある稼業を継ぐべく役員として転職。素敵すぎるぐらい王道。おお、一国の主ぞ!

王道漫画のように家業を継いだ著者による改革が始まる…んだけど、試行錯誤した著者が到達したのが、漫画ワンピースだった。

あ、そうだ。一昔前にワンピースを題材にしたリーダー論とかで流行ったよね!ビジョナリー経営が軸の話かな。あと、この本は冒頭に断りがあるように、HOW TO本ではなくて「うちのビジョナリー経営はこういう感じで表現されてます」という本。中規模経営者向けかも。でも、これビジネス本読み始めた就活生が読んで酔っちゃいそうだな(筆者の企業は就活生に大人気だそうです)。

以上、これが半分まで読んで思った、正直な感想です。


この調子が続く本だったら、しょっぺーリーマンクラスのあたくしに得られるものは一体…って不安になって読み進めてたら、気になる点が。

改革を無理に推し進めていったら、伝統的な味を守る職人も離れていったとかいうくだりがあるぞ。じゃあビジョナリー経営もといBeing経営するようになったらやめていかないのか?何やったんだろう。これは興味深い。

職人の扱いってたしかにどの業界でもやっかいなのは共通してるよなぁ…そういやこないだも技術職の本読んだような・・・。

あ、「その仕事、全部やめてみよう」だ!

これの圧倒的面白ポイントは、獰猛と称される多種多様なプログラマーをリーダーとしてどう律するのかという話だった。筆者曰く、現場リーダーはプログラマたちの個性を見ぬいてうまく御する必要があると主張し、やつらの傾向を事細かに分析していた。
私はこの本から、職人は適材適所というか使い方(扱い方)が大事なんだよって教えてくれたんだと受け取ってる。わたし使うタイミングないと思いますけど。

で、一方で、今回の『「リーダー」をやめるとうまくいく』っていう本。(今気が付いたけどこっちも「やめる」本じゃないか。みんなそんなになんかやめたいの?

この本によると、著書はBeing経営っていう方針をとっている。ビジョナリー経営を軸に、経営者が企業目的や指名を明確にし、それに対して個人の働く目的のすり合わせに成功した、やる気・能力のある社員が活躍できる舞台を作る。それこそ経営者の仕事だよね、と。経営者は、リーダーになってなにもかもやる必要なんかなくって、自分の理解者で能力あるリーダーをたくさん作ればいいんだよ、と。

でもそれって職人が活躍する環境としてもなかなかハイレベルだよね。職人はただでさえ役に立つまでに時間かかるし、軌道修正が難しそう。活躍の場も狭いから職場に縛られやすいけど、生ものの人間なんて成長すればビジョンがすり合わなくなって不満度も上がる可能性も高いんだが・・・。

と思って読んでいたら、職人に対する評価方法の話がありました。おお、どれどれ・・・。

「職人を神格化しなければ不正は起きない」

へ!?不正の話!?
これはちょと斜め上からきましたね。データ改ざんしたりするのは彼らのプライドが高すぎたからだ、と。そこまで旧態依然とした会社だったんでしょうか。もはや職人云々の問題じゃない気がしますが、その話題は置いておかれて、本は技術職の人たちをどう扱うか、評価の話にシフトします。

結局、「マイスター制度」を創設、各工程においてできることやその技術を数値化し、人事評価制度にアドオンすることで整理したということでした。でもたぶん、この企業でも360度評価を取り入れて、上司だけが評価者じゃないと明確にしているため、その考え方がこの職人世界を変えたんじゃないかなとも思いますけども。基本的に職人は切磋琢磨して他人に能力を認められるのが好きなので(獰猛だけど)。
にしても、数値化して自分の出来ることできないことを明確化するのは、資格の多いIT系の企業だったら普通のことなんですが、老舗和菓子屋なんてまったく新しい評価軸が必要でしょうから、大変な作業だったのではと思います、うんうん。

・・・というかですね。

全体を通じて本当に思いますが、理路整然と明確なルールがある銀行から、突然の老舗和菓子役員そして代表になるなど、本を読み進めていくうちに、もうビジョナリーとかどうでもよくなってきて、まじで大変そうだなーという感想しかでませんでした(あと、いろいろ書けないことがありそうだなーっていう行間を勝手に受け取った)。

記載があまりなかった気がするんですが、そもそもなんでこの人、家をつごうと思えたんだろうか・・・。
あと、この人の個人的ビジョンは、ほんとのところなんなんだろうか。

それから最後のほうに、生き生きした会社の飲み会(社長賞の授与とかもある大企業のいわゆるキックオフとか祝賀会みたいな)が紹介されているんですが、確かに社員が中規模だといい効果があるかと思います。大企業では、社員も多種多様だし効率化してないとやってられないので、逆にあまりヒットしなくなる気が。

そもそもビジョナリー経営が効くのって、スタートアップで手ごたえある商品が出来てそのあと事業拡大って段階で、特に会社のガバナンスをうまく効かせるための最適な手法だと勝手に受け取ってるので、うまくミート&ヒットした事例なのかなーーーって思います、しらんけど。

ただ本の読ませどころっていうんだろか、もうちょっと社長個人としての努力、苦労、つらみ~~~~とか、武勇伝もかいまみえると嬉しいなと思ったんですけど、それがないのは冒頭の南インドのヨガで洗い流せたってことですかね。

この本、ビジョナリー経営を軸に、老舗和菓子屋が組織を動かしつつも社員の幸福満足度を上げるために、企業目標や価値観、評価から商品開発、マーケティングに至るまでを忠実にこつこつやっている姿をばーーーーっと表現しています。あとがきにも書かれてますが、「きわめて自然で理にかなった実践の話」だと書いてありますがその通り(でもそれが難しいんですよね)。

ということで、一言でいってしまうのもアレですが、ビジネスマン向け企業紹介本といった印象でした。中規模経営に興味がある方は是非事例としてどうでしょうか。

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