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自他ともに尊重する人間関係を築く為に「アサーション」について解説するよ。

● はじめに


 リワークに通って初めて「アサーション」というコミュニケーション技術があることを知った。アサーションとは英語の「assertion(自己主張)」からきており、アメリカで提唱された「 相手も自分も大切にするコミュニケーションスキル 」だそうだ。

 休職する原因を考えてみると、仕事量が多くて大変だったとか、理不尽な指示を受けたとか、ミスに対して感情的に叱責されたとか、色々と上げることはできるけれど、根本的な原因は職場の人間関係のコミュニケーション不全だと思うようになった。

 「言いたいことも言えないこんな世の中じゃPOISON」という歌詞もあったが、コミュニケーションが取れている職場であれば、風通しもよく、それぞれの抱えている問題を共有し、自分一人で問題を抱え込んで潰れてしまう、なんてことも防げるはずだ。

    ということで今回は職場での良好なコミュニケーションを目指して、アサーションに関して学んだことを自分なりにまとめてみたいと思う。


● 自己表現には3つのタイプがある

 まず、自己表現には3つのタイプがあると言われている。

自己表現3タイプ

 ・アグレッシブ(攻撃的表現)
 自分中心のコミュニケーション。相手をないがしろにし、自分の主張を一方的に通そうとする。パワハラなどもこれに該当する。

 ・ノンアサーティブ(非主張的表現)
 相手中心のコミュニケーション。自分をないがしろにし、相手の主張を一方的に受け入れてしまう。周囲に気を使いすぎて疲れてしまう。

 ・アサーティブ(適切な表現)
 自分も相手も大切にするコミュニケーション。自他ともに尊重し、互いを違いを認め、バランスの良い関係を築ける。

 アグレッシブやノンアサーティブを続けていると、人間関係が悪化し、自分自身もストレスを抱えてしまうのでアサーティブになることが望ましいが「自分も相手も大切にするコミュニケーション」と言われも正直ピンとこないと思う。こうした考えを理解する為には「基本的人権」に基づいて誰もが保証された「自己表現の権利」を持っている。という思想を理解する必要がある。

● 基本的人権に保障された自己表現する権利=アサーション

 アサーションは「すべての人間は、生れながらにして自由であり、かつ、尊厳と権利とについて平等である」という人権思想に基づいており「自他の権利を侵さない限り誰もが自由に自己表現できる権利」「アサーション権」と呼ぶ。

 つまり、アサーション権に基づいてコミュニケーションを取ることが「自分も相手も大切にするコミュニケーション=アサーション」ということになる。アサーション権には以下の内容が明記されている。

  • 私には、自分のための優先順位を決める権利がある。

  • 私には、能力のある対等な人間として、あつかわれる権利がある。

  • 私には、自分の感情を認め、それを表現する権利がある。

  • 私には、自分の意見と価値観を表明する権利がある。

  • 私には、自分のために「イエス」「ノー」を決めていう権利がある。

  • 私には、まちがう権利がある。

  • 私には、考えを変える権利がある。

  • 私には、「よくわかりません」という権利がある。

  • 私には、ほしいものやしたいことを求める権利がある。

  • 私には、人の悩みの種を自分の責任にしなくてもよい権利がある。

  • 私には、周りの人からの評価を気にせず、人と接する権利がある。

  • 私には、アサーティブではない自分を選択する権利がある。

 以上のアサーション権を「自分も相手も持っている」という前提に立ってコミュニケーションを行うことがアサーションというわけだ、では具体的にどうすればいいのか、ステップを踏んで紹介する。

● ステップ1 自分の気持ちを明確に把握する

 アサーション権に基づいて自己表現する為に、まずは自分の気持ちを明確に把握する必要がある。自分の気持ちが分からないと、感情や意見を表明することができないからだ。

 だが、社会常識とされているものの中には、支配者側に都合の良い、操作的な理屈が混ざっていることがよくあり、そうしたアサーティブではない誤った思い込みがあると、自分の気持ちを抑圧してしまい、明確に把握することが難しくなる。例をいくつか紹介する。

  • 人に好かれなくてはならない。

  • 弱音を吐いてはならない。

  • 大人は子供よりも偉い。

  • 失敗することは良くない。

  • 人を傷つけてはならない。

 こうした思い込みは、自分を支配する側に都合の良い考え方で、アサーティブな考え方ではないと理解することが大切だ。「失敗しても、責任を引き受け、学んだことを次の挑戦に活かす」ことは誰もに認められた権利だし、自分の人権を侵害してくる相手に対してはアサーティブではない(攻撃的な)対応をすることも抵抗権として認められている。他にも「◯◯は良くない」「◯◯するべき」「◯◯して当たり前」という固定観念があれば、本当にアサーティブな考えかどうか、確認した方が良い。

 また、自分のモヤモヤした感情をうまく把握できない時は、以下のような「感情リスト」を参考にするのも一つの手だ。

感情リスト

 この中で該当しそうな感情を選び、人生最大に感じた時を100%としたら今はどの程度か数値を入れていく。

・例:「1時間後にプレゼンでモヤモヤする」→「不安60%、緊張50%、憂鬱40%」

 このように自分の感情を数値化して分解してみると、自分の感情を具体的に把握することができるので、他者に自分の気持ちを伝えやすくなる。

● ステップ2 自分の気持ちを適切に言語化する

 自分の気持ちを明確に把握することができたら、次は言語化だ。重要なことは「自分の感情、意見、価値観」を相手に分かりやすく伝えることだ。そのコツは「客観的事実」を共有した上で「自分を主語にして、気持ちを伝える」ことで。こうした表現方法を「Iメッセージ」と言う。

・Iメッセージ=「A 客観的事実」 〈だから〉 「B 私はこう感じる」

 感受性は人それぞれなので、自分の気持ちだけを伝えても相手が理解できるかどうか分からない。そこで「A 客観的事実」を前提に置くことで「A」〈だから〉「B 私はこう感じる」という公式が成り立つようになる。こうすることで少なくとも相手に「この人はAだとBとなる人なんだ」ということは伝えることができる。

・例:「私はあなたを見ているとイライラする」をIメッセージにすると「あなたは作業を進めるのが遅い〈だから〉私はイライラしてしまう」となる。

 このままでは言いっぱなしになるので、最後に「提案」を付け加える。

・例:「あなたは作業を進めるのが遅い〈だから〉私はイライラしてしまう〈提案〉できれば、もう少し急ぐことはできないかな?」

 自分の提案を伝えたうえで、相手の気持ちを考えた「代替案」も用意しておくとバランスが良くなる。

・例:「あなたは作業を進めるのが遅い〈だから〉私はイライラしてしまう〈提案〉できれば、もう少し急ぐことはできないかな?〈代替案〉私が手伝えることはある?」

 このように自分の伝えたいことを相手にわかりやすく伝えた上で、互いに納得できる解決案を模索する方法を「DESC法」と言う。

・DESC法=「Describe(描写する)」 「Express(表現する)」 「Suggest(提案する)」 「Choose(選択する)」

 ここで大切なのはChoose(選択する)で、自分の提案だけではなく、相手の立場を考えた代替案を事前に用意することで、アサーティブになることができる。

● ステップ3 相手の表現を受け取る

 同じ体験でも、人によって感じ方が違うのは、それぞれが自分の経験から作り上げた「準拠枠=フレーム」で世界を理解しているからだ。だから、世界は多面的で様々な見方や受け取り方がある。

 もし、相手の意見を受け取りづらいときは「なぜそう考えるの?」と質問してみよう、相手の背景にあるフレームを探ってみると、理解できる時もある。また、相手の価値観を理解することができなくても、「自分と同じように相手も意見、感情、価値観を表明する権利がある」という原則を理解すれば「少なくともあなたがそう考えることは尊重する」と決めることはできる。「自分も相手も大切にするコミュニケーション」とは互いの違いを認め、多種多様な価値観を持った人が存在するという現実を受け入れることだ。

 『人は聞き方が9割』『聞く力』などの著書がベストセラーになったことからも分かるように「傾聴=アクティブリスニング」がコミュニケーションには重要だと言われて久しい。自分の記事だと以前に読んだ『超コミュ力』のまとめが具体的で分かりやすいと思う。

 『超コミュ力』に書かれている「笑顔で、相手の気持ちに寄り添い、頷き、相手を否定せず、話を遮らず、質問をし、ちゃんと聞く」というのは単純なことだけれど、相手の表現を受け取る為の基本的なスタンスだと思う。価値観が違う相手との向き合い方についても書いてあるし、読みやすいのでおススメです。

● まとめ

 ということで、ざっとだけれどアサーションについて学んだことをまとめてみました。よりしっかりと学びたい場合は、平木典子著『アサーション入門』や『自分の気持ちをきちんと〈伝える〉技術』が分かりやすくておススメです。

 書いてみて思うのは「アサーション権」という考え方をしっかり腑に落ちさせるのはまだ難しいということ。そもそも全ての人は神に与えられた「自然権」があり、法によって権利は守られるという「人権思想」自体が西洋思想そのものだし、山本七平が『空気の研究』で書いた通り日本人は「法よりも空気による支配」が長く続いてきた。「和をもって貴しとなす」ではないが、狭い島国の中で周りの人の顔色を伺いながら村八分にならないように生きてきた日本人にとって「権利」という言葉はなじみが薄いのかもしれない。とはいえ、日本国憲法にははっきりと「基本的人権」について明記されている。

 日本国憲法 第11条「国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。 この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。」

 当然、世界には様々な思想がある。国々によって理想とされるコミュニケーションも変わるだろう。日本は西洋諸国の一員として「基本的人権」を侵すことのできない永久の権利と定めた。当然「アサーション権」も保証されている。

 という事実を理解したうえで、あとは人それぞれが自分の理想のコミュニケーションを模索していけばいいのではないだろうか?個人的には「自他ともに尊重する」というアサーティブな立場でいたほうがバランス良くストレスも少なく健康的に過ごせるのかなと思う。

 ということで「アサーション」についてのまとめでした。何かの参考になれば幸いです。ではまた~('ω')ノ

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