新樹の夕

夏が来る、その前に
稜線なぞるこの春を
僕が書く、この詩に
新樹に遺るあの夏を

過ぎ去りし今は望遠
待ちわびる今は遠景
立ち止まれない心象
振り返ればただ残像

忘れがたいと藻掻き
空白の隣をただ嘆く
始まりだと奮い立ち
今一本の旗を掲げる

負けるものかと叫び
進み続けようと歩き
忘れまいと書き続け
君が待つ場所へ今も

狭間に雲が色を変え
立ち込める煩慮の青
色づきを覚えた泡沫
夕景に咲く君の白描

時として感情は暗く
人として心情は尊く
貪り食う欲求として
自己の肥大は隠せず

死にかけて生を知り
生きて尚崇高を求め
抗うは無為と悟りて
揺蕩うは生にあらず

夏が来る、その前に
稜線なぞるこの春を
僕が書く、この詩に
新樹に遺るあの夏を

春晴るる、この青に
君を待つ、その時を
青染まる、風を背に
君が待つ、夏の詩を


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ありがとうございました。

貴方のその気持をいつか僕も 誰かに返せたらなと思います。