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書籍レビュー『ラブコメ』松久淳+田中渉(2004)高橋幸宏の楽曲が使われているんだもの


高橋幸宏の楽曲が
使われているんだもの

普段の私は恋愛小説は
読まないんですが、
これは読まずにいられませんでした。

というのも、本作では、
挿入歌として、
高橋幸宏の楽曲が
使われているからなんですね。

とある音楽雑誌の
高橋幸宏のインタビューで、
このことが語られていました。

なお、本作の中で、
挿入歌として使われているのは、
以下の2曲です。

いずれも私が
二十歳くらいの頃に
よく聴いていた
アルバムからの選曲で、

作中の登場人物たちの
年齢設定も相まって、
(作中の主要な登場人物は、
20代前半)

なんとも甘酸っぱい
気持ちになりましたね。

こんな作品があることは、
高橋幸宏がインタビューで
語らない限り、
知ることがありませんでした。

なかなか想いを伝えられない二人

本作はコミック化や
映画化もしており、
それなりに人気のある
作品のようです。

主人公の二人のうち、
一人は花屋の女性、
松田真紀恵です。

親から継いだお店を
切り盛りしており、
サバサバした女性です。

彼氏がずっといないのを
本人も気にしているんですね。

もう一人の主人公は、
アニメの脚本家である
村田美晴です。

美晴と真紀恵は、
子どもの頃に
同じ学校だったんですが、

その後、バラバラになり、
何十年も会っていなかった
という設定です。

美晴の方は、
子ども時代に好きだった
真紀恵のことを
ずっと想っており、

それがなかなか伝えられずに
友達関係が続いていくんですね。

まぁ、ありがちといえば、
ありがちな設定かもしれません。

本作がおもしろいのは、
美晴が脚本を手掛けたアニメの話と、
現実の話が交互に
展開するところです。

このアニメの話というのが、
美晴の少年時代の話が
モチーフになっており、

真紀恵との思い出も
徐々に明かされていく
構成になっています。

抜群にテンポがいい軽妙な文体

このコンビ作家さんの作品は、
はじめて読んだのですが、
文章のテンポがとても良く、

さらに要所要所で、
遊び心のある書きっぷりも
味わえておもしろかったです。

あまり真面目な
文体ではないんですよね。

どちらかというと、
ライトノベル寄りな文体です。

そして、前述したように、
高橋幸宏の曲が
挿入歌としてあしらわれ、

その歌詞が小説の合間に
挟まれる形で
物語が進行していきます。

曲をよく知っているだけに、
そのシーンが映像のように、
頭に浮かんできて、

なんともにくい演出に感じました。

20歳の頃、
ちょっと背伸びをして聴いていた
高橋幸宏の楽曲ですが、

こうして、他の作品と
一体化してみると、

「若さ」にピッタリな
曲だったのだなぁ
と改めて感じました。

ぜひ、本書を読む前には、
高橋幸宏の楽曲にも
触れてみてください。

そこには、
あなたの新しい扉が
待っているかもしれません。


【作品情報】
発行年:2004年(文庫版2010年)
著者:松久淳+田中渉
出版社:小学館

【著者について】
松久淳
’68年、東京都生まれ。
'99年、エッセイ
『男の出産』でデビュー。
田中渉
’67年、長野県生まれ。
’00年、『天国の本屋』で
松久淳とのコンビでデビュー。

【映像化作品】

【同じ著者の作品】


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