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映画レビュー『劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦』(2024)リアルのバレーボールを超える臨場感

※2500字以上の記事です。
 お時間のある時に
 お付き合いいただけると嬉しいです。


最近のテレビアニメの
劇場版には意義がある

『ハイキュー!!』は、
2012~2020年に
『週刊少年ジャンプ』で
連載されていたバレーマンガです。

2014~2020年に
(第1~4期)
テレビアニメ版が放送され、

その続きの物語が映画版として
制作されました。

以前のマンガ原作の
アニメ化作品では、
テレビアニメと並行して、

原作にはない、
オリジナルのストーリーが
展開される

アニメ独自の劇場版が
制作されるのが主流でした。

同じくジャンプの
アニメ化作品『鬼滅の刃』で、

原作の物語の一部を
劇場版として展開する
スタイルが出てきましたが、

本作でも同じように、
テレビアニメの続きの物語が
劇場版となっています。

こういう展開のしかたは、
賛否両論あるのかもしれません。

しかし、個人的には、
いずれも必然性があっての
劇場版に感じられるので、
これもアリだと思います。

『鬼滅の刃』にしても、
『ハイキュー!!』にしても、

いずれの劇場版も
物語の全体の中で、
「見せ場」と思われるところが
劇場版として制作されています。

それぞれの作品の
ファンからすれば、

大好きな作品のいいところが
劇場の大きなスクリーンの
大迫力で鑑賞できるのですから、
これほど嬉しいことはないでしょう。

本作に限って言えば、
『ハイキュー!!』が好きな方は
ぜひ劇場で観てほしい作品ですし、

『ハイキュー!!』を知らない方でも、
バレーボールが好きな方なら、
楽しめる作品になっています。

私が本作をおすすめする理由を
詳しく書いていきます。

『ハイキュー!!』を
知らない方のためにおさらい

原作やテレビアニメ版の
『ハイキュー!!』を
知らない方のために、

どんな物語なのかを
少し振り返ってみます。

主人公の日向翔陽は、
子どもの頃にテレビで観た
春高バレーの中継で、

低身長にもかかわらず、
試合で活躍する地元の選手に憧れ、
みずからもバレーボールを
はじめました。

(日向も背が低い)

しかし、中学時代は、
日向一人の部だったため、
まともに試合をすることもできず、

他の部の生徒に
練習を手伝ってもらったり、
ママさんバレーに
入れてもらったりしながら、

練習の日々が続いていたのです。

中学3年の夏に、
やっとのことでメンバーを集め、
公式試合に出場します。

その試合で戦ったのが、
天才セッターと称される
影山飛雄でした。

影山のいる強豪校に惨敗し、
中学時代のバレー部生活が
終了します。

しかし、日向はくじけません。

影山へのリベンジを誓って、
高校でもバレーを
続けるつもりでした。

日向が入学したのは、
烏野高校です。

烏野高校は、かつては、
バレーの強豪校だったのですが、
今では成績もパッとせず、

「落ちた強豪 飛べない烏」
と揶揄されるほどに
落ちぶれていました。

それでも、日向にとっては、
憧れの学校でした。

何を隠そう、少年時代の
日向が憧れた春高バレーで
活躍していたのが、
この学校だったからです。

日向は、ここで意外な人物との
再会を果たします。

なんと、烏野高校バレー部の
新入部員として、
あの天才セッター、
影山も入部したのです。

影山ほどの実力があれば、
他の強豪校に行くことも
できたはずですが、

影山は志望校の試験に落ちて、
烏野に入学しました。

リアルのバレーボールを
超える臨場感

日向と影山は、
スポーツマンガの
王道とも言うべき、
ライバル関係でもあります。

星飛雄馬と花形満のような
関係です。
(『巨人の星』)

しかし、『ハイキュー!!』の
おもしろいところは、
そのライバル同士が、
同じチームになるところです。

プレイスタイルが異なり、
性格も合わない二人ですが、

同じチームになることによって、
徐々に名コンビとなっていきます。

そして、落ちた強豪、
飛べない烏と揶揄されてきた
烏野は、この二人の才能が
開花していくことによって、

再び強いチームへと
成長していくんですね。

その前に立ちはだかるのが、
数々の強豪校の存在です。

いずれの高校にも
一癖ある個性的な選手がいて、
その個性のぶつかり合いが
魅力的なんですよね。

中でも、烏野の一番の
ライバル校が本作でも登場する
音駒(ねこま)高校です。

音駒高校とは、
前にも何度か
試合をしてきましたが、

烏野が勝利したことは
ありませんでした。

本作で描かれているのは、
春高バレーの準々決勝戦です。
(勝てばベスト8に進出)

一番のライバルであり、
盟友でもある音駒との一戦は、
『ハイキュー!!』ファンにとっては、
期待度の高い試合と言えます。

だからこそ、本作は、
劇場版として制作されたのですね。

個人的には、
テレビアニメ版を観ていた時から、
「これは劇場版も期待できる作品」
と思っていました。

なので、私自身は、
原作を読むのは、劇場版の
手前で止めて、

(今回の劇場版は、
 原作の33~37巻にあたる)

テレビアニメ版の方も観てから、
本作にのぞみました。

私はリアルのバレーボールを
観戦したことが
何度もあるのですが、

会場で観ても、
テレビ中継で観ても、
やはり、見えない部分が
多くあるんですよね。

リアルタイムで観る
ワクワク感は味わえますが、

本当のバレーボールの楽しさは、
自分でボールを触ってこそ、
試合に出てこそ
なのではないかとも思うんです。

その点、映像作品では、
その臨場感を
疑似体験することができます。

しかも、この臨場感のすごさは、
どれだけ映像の技術が上がっても、
実写では出せない
ところがあるんですよね。

というのも、
『ハイキュー!!』を観ていると、
実写ではありえないような
カメラワークが散見されるのです。

例えば、画面に向かって、
ボールが飛んでくるとか、
選手の足元の
アップを見せるとか、

現実のテレビ中継では
ありえないような視点が
ふんだんに盛り込まれています。

こういった複数の視点の
切り替えが試合を立体的に
描いていますし、

さらに、本作はドラマ性も
非常に高い内容です。

それぞれの選手の思いがあり、
この試合に辿り着くまでの
積み重ねがあるんですよね。

そういうものを
試合のテンポを崩さない
絶妙なバランスで
組み込まれており、

試合の臨場感と物語を
両立させています。

ネタバレになるので、
詳しくは書きませんが、

試合の終盤で観られる
独特な演出方法は、
本作の一番の見どころです。
(ウルッとしてしまった)

できれば、原作を読むか、
テレビアニメ版を観てから、
本作にのぞむのがベストですが、

本作から『ハイキュー!!』に
入るというのも、
おもしろいかもしれません。

そう言えるくらい、
完成度の高い作品でした。

やっぱり、日本のアニメって
すごいですね!


【作品情報】
2024年2月16日公開
監督・脚本:満仲勧
原作:古舘春一
声の出演:村瀬歩
     石川界人
     梶裕貴
配給:東宝
上映時間:85分

【原作】


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