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オナラのシンフォニー

 近頃の僕たち家族の日常は、まるでスパイ映画のようだ。コロナ禍で、病院への往復が日課になっている。妻の母親や僕が洗濯物や差し入れを持って行くと、看護師が門番のように荷物を受け取る。そして妻からの荷物を我々が預かって帰宅する。このスパイ映画のようなやり取りにも次第に、私たちはようやく慣れてきた。

 そんな中、息子が一つのおもちゃで何か哲学的な洞察を得ているらしい。ちなみにそのおもちゃは、妻の友人からの贈り物だ。息子はそのおもちゃをぼーっと眺めているが、その眼差しの中には何か深遠なものがある。というのは大袈裟で、ただの「なんか目の前にいつもと違うものがある」という感じかもしれない。子供の心、大人には計り知れない。

 そして、妻から送られてきた息子の動画が僕をビールが美味しく飲める気分にさせた。息子は、ふにゃふにゃと何かをおしゃべりして、最後には堂々とオナラをして寝た。僕はその瞬間、ベートーヴェンの交響曲よりも息子のふにゃふにゃとオナラの方が素晴らしいと思った。そう、これが家族。これが愛。これが人生。

 人生とは、泡も苦味も一緒に楽しむビールのようなもの。つまり、妻から預かる洗濯物も、息子の哲学的な洞察も、全部愛の一部。僕たち家族は、この小さな幸せを大切に生きていこう。それが僕の新しいモットーだ。

 だから、今日も明日も、どんな困難な状況でも、ビールのように泡と苦味を楽しんで前に進む。何もかもがうまく行かなくても、その全てを報われる瞬間は必ず来る。それが人生だから。そして、それが僕のモットーだから。

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