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佐藤可士和「佐藤可士和の超整理術」

私は片づけはとても苦手だ。家事の中でもっとも嫌いな分野。5人が一つの家の中で暮らし、それぞれの持ち物がある。自分自身が片づけが嫌いなこともあり、子どもにも片づけの習慣を身につけさせてこなかった。そんなこともあって、片づけレッスンを受講してみた。とても丁寧に分かりやすく教えてくれる講師だったけれど、私は正直なところ、せっかくの機会を十分に活かすことができたとはいえない。いくつか思い切って収納場所を変えたりして、便利になった部分もあったけれど、それ以外の部分はしばらくすると秩序を失い、完全に乱れた状態に戻ってしまった。1カ月だから、一部だけでも便利になったことを良しとしてもいいかなと思いつつ、心残りがあった。
けれども、片づけというものについての考え方はが大きく変わったのは、すばらしい収穫だったと思う。講師と話をしていて、腹落ちしたことがあったのだ。片づけは、見た目をきれいにすることが目的ではなく、使う頻度の多いものを取りやすく、使う場所に近い場所に設置し、管理しやすい状態にするということ。もちろん一気に決めることはできなくて、試行錯誤しながら、安定する形を模索していく。また状況が変わったら、それに合わせて変えていくことも必要だということ。片づけは生活のプログラミングのようなものなのだということだ。
そこまで理解しながらできなかったのは、この家で生活しているのが自分一人ではないからだった。ものを取っておく基準、買い物の基準、しまう場所の考え方、その辺りがかなりかみ合わっていない。それでも子育て前は私に余裕があったので、何となく私の基準でできていたけれど、今はそれどころではない。このような状況に対応できるレベルのプログラミング力を身につけるのは、きっとたやすいことではない。
一方で仕事についても同じような状況だった。4月からチームのメンバーが入れ替わり、私の立場も変わり、次々と色々な情報や仕事が入ってきて、混乱状態だった。
不思議なことだけれど、そういう時こそメモを取ればいいのに、手が動かなくなってしまう。頭の中が常にいっぱいで、何かをやろうとすると、他のことが頭に浮かんできて、集中できなくなったりした。どうにか時間を作って、整理して、ちょっと一息つくと、また不測の事態がやってきて、あっという間にもとと同じような状況に戻ってしまう。
仕事も机の上も家の中も全部同じだ、ということには、何となく気付いていた。仕事も家の中も一人で成り立っているわけではないからだ。
だからこの本を手に取った時にも、仕事に片づけを取り入れるという考え方を受け入れる準備はできていた。でも、期待していた以上のことがたくさん書かれていた。
例えば、ビジョンについて。何かプロジェクトを進める時には、ビジョンが大事、とか、優先順位をつけなければいけない、という。お題目のように唱えられるけれど、そのビジョンという言葉自体、みんなそれぞれどのように意味をつかんで話をしているか、はなはだ疑問に思うこともよくあった。けれど、この本にビジョンについて書かれていることは、すごくしっくりと来た。

クライアントが新に到達したいと望んでいること。それはまた、クライアントが潜在的に秘めているものでもあり、“あるべき姿”といってもいい

その後で、こんな風にも説明している。

一方で、この“あるべき姿”には、クライアント本来の意志だけでなく、社会からの要請が加わる場合もあります。たとえば、環境面への配慮や社会貢献的な姿勢など。会社の規模が大きくなるにつれ、こうした社会的責任は大きく問われます。
組織のビジョンを決めるのは、基本的にはリーダーということになる。もちろん個々人が自分の仕事に関するビジョンを持つこともあるだろうけれど、それをそのまま組織のビジョンとして仕事を進めるわけにはいかない。けれども、社会からの要請が加わる場合があると考えると、全てリーダーが決めなければいけないといわけではなく、より現場に近かったり、その分野に関して深く情報収集できる一員が組織のビジョンについて意見することも必要なことかもしれないと考えた。
その他にも、優先順位の付け方や、課題の抽出など、事例を挙げながら書かれていて、取り入れてみようかなと思うことがいろいろあった。
その前にまずは、家の中の片づけ、いや、バッグの中の片づけだ。片づけにおけるビジョンは、どんな暮らしをしたいかということだ。家の中の片づけよりももっとハードルが低いものは、バッグの中の片付けと著者は言っている。バッグにおいては、そのバッグを持って、その一日をどう過ごしたいか、ということになるのか。確かに、ひょっとしたら使うかも、というくらいでバッグの中に放り込んだままのものはたくさんある。早速今日やってみよう。

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