子ども嫌いのバリキャリが子どもを産んでみて思ったこと

私は昔からあまり子どもが好きではなかった。うるさいし無神経だし(当たり前)、子どもを産んだりしたら、時間もお金も子どものために遣わないといけなくなって自分の人生がぐちゃぐちゃになってしまうと思っていたからだ。1人っ子で周りに幼い子どもがいなかったことも理由かもしれないが、子どもより猫の方がよっぽど可愛いと思っていた。

そんな私がひょんなことから(?)妊娠した。夫は子どもが大好きだったので、私も少し影響を受けて、まあ将来的には産んでもいいかなぁと態度を軟化させていたところ、予想外に早く妊娠したのだ。

子どもが大好きというほどではなく、でも子どもを産んだら好きになるかな?と産むかどうかで悩んでいる人は、一般的に考えられているよりたくさんいると思う。巷には、元々子どもが好きだった人が子どもを産んだ感想はあふれているが、子ども嫌いの人が子どもを産んだ感想はあまり見かけない。そこで、この文章を書くことにした。かなり正直に自分の気持ちを書いたので、中には不快に感じる方もいるかもしれないが、ご容赦いただきたい。

私自身、子どもを産んだらどんな気持ちになるのかは非常に興味深かった。世間には、子どもを産んで初めて対面した瞬間について、「なんて可愛いんだろうと思った」「これからはこの子のために一生懸命生きていこうと強く感じた」「こんなに愛おしい存在がこの世にあるなんて知らなかった」などの感想があふれている。産んだ瞬間、本当にそんな気持ちになるのだろうか?私のようにDINKSに憧れるバリキャリ女でも??

…結論。突然そんな感想にはならなかった(笑)。子どもがおぎゃーと産まれてきた瞬間、まず思ったのは、「やっと出た…」ということだった。出産にかかった時間は平均的だったが、最後の方はいきんでもなかなか出てこなくて苦労した。半ばあきらめそうになりながらいきんでいきんでやっと出たのだ。次に、子どもの顔を見て思ったのは「わたしたち夫婦のどっちにも似てない…」ということだった。正直産まれたばかりの子どもの顔はあまり可愛くなかった。これについては、産まれた直後はかなり顔が浮腫むのだそうで、時間が経つにつれ、すっきりと可愛い顔立ちになってきた。というわけで、さすがに産まれた瞬間から自分の人生を子どもにかけたいと思うほどの愛情は沸かなかった。

そして、生後2か月半くらいまでは育児がきつすぎて、やはりそこまでの愛情はなかった。あまりにも無力な小さな赤ちゃんを、どうやって死なせないように育てていくかに必死だった。生後3か月くらいになると、まあそれなりに可愛いけど、離婚した場合は親権はいらないかも=夫婦2人で幸せな状況なら問題なく育てていけるが、仮に離婚などという事態になった時に、果たして私1人でこの子の人生を背負っていけるかは不安、くらいのレベルになってきた。

しかし、子どもが生後半年を過ぎた頃から、子どもを産んで本当によかったと思ようになってきた。我が子が順調にいい子に育ってくれているおかげかもしれないが、以下に子どもを産んでよかったと思う理由を書いてみたい。

1 人生の追体験ができる

当たり前だが、子どもにとっては人生の全てが初めてのことだらけである。初めての食事、初めての夏、初めての病気、初めての誕生日。親もこれを一緒に経験することで、これまであわただしく生きてきてしまった自分の人生を、もう一度じっくり追体験している気分になるのである。これは非常に楽しい。宮本恵理子さんの『子育て経営学』(日経BP社)は、気鋭のビジネスリーダーたちの子育て観をまとめた面白い本であるが、その中で、ノバルティスファーマ社長の綱場一成さんも、「あなたにとって、子育てとは?」の質問に、「素晴らしきかな、人生の追体験」と回答されている。全く同感である。ちなみに、この質問以外についても、綱場さんのお答えはどれも素敵だった。

2 子どもなしで生きるには人生は長すぎる

1とややかぶるが、アラサーにもなってくると、人生に新鮮味が欠けてくる。一生懸命仕事をして、週末には夫と出かけたり友達と遊んで、時には高級レストランで食事をしたり旅行に行ったり、自分へのご褒美を買ったりする。そんな気ままなDINKS生活は非常に楽しいが、この先も何十年も続けていくのかと思うと、ちょっぴり飽きてくる。全てが予測の範囲内という感じになってくる。そんな中、子どもが産まれると生活がガラッと変わる。ミルク、オムツなど今まで自分の人生には無縁だった言葉が日常にあふれるようになり、母親学級や保育園を通じて新たな友達もできる。それに、一人では何もできなかった子どもが、笑ったり、寝返りをしたりするのを見るのは、どのジャンルとも違う新たな喜びをもたらしてくれる。

3 子どものいる人の気持ちが分かる、仲間意識が生まれる

何事もそうだが、やはり自分が実際に経験してみなければ分からないことは多い。私も子どもができるまで、子連れの外出がこんなに面倒なこと(荷物が多い、ミルクをあげる時間やどこでミルクのお湯をもらうかを考えないといけない)や、子どものいる人に何をしてあげたら嬉しいのか(家に招く場合には、ミルクのお湯を用意したり子どもを寝かせる布団を用意してもらえたらとても助かる、子どものことを可愛いと言わない人とは付き合いを断ちたくなる)全然わからなかった。この世にたくさんいる子どものいる人の気持ちが分かようになると、楽しく付き合える人の数が増える。

また、今まで思っていた以上に、子どものいる人同士というのは仲間意識が強い。私自身、妊娠中は、職場の子持ちの方に非常に助けられた。子どものいる人は、子育ての苦労をよく分かっているので、子どもを産む人に対して親切にしてあげたいとかなり強く思っている。

4 自分が死んでも自分のことを覚えていてくれる人ができる

自分が死んだら…と考えるのはとても怖いことである。しかし、子どもができてから、死んだら子どものことが心配というのはあるが、同時に、自分が死んでも、少なくとも子どもは自分のことを覚えていてくれる、子どもが未来を生きていくことで、自分も未来と少しつながっていられる、という感情が芽生えた。

最後に。私は、当然のことながら、人それぞれ人生の選択は自分の自由であるし、自分が幸せと感じるなら、未婚でも既婚でも、子どもがいてもいなくても、それが幸せな人生だと思っている。ただ、もし子どもを産むチャンスがあり、子どもを産むことに少しでも興味を持っている人には、産んでみるのもきっと楽しいよ、と伝えたい。

いくらごはん

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