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DX・IT・効率化の本懐は?いますぐやるべき理由と注目業界

Hello, people.
今回のテーマは「DX・IT・効率化の本懐は?いますぐやるべき理由と注目業界」です。ひとくちに「DX・IT・効率化」といっても、今人力がかかっているところをDX化する、競争力を獲得するためにITを活用した新規事業を立ち上げるなどさまざまなレベルがあると思います。そこで実践的ビジネスコミュニティ GDA(Good Days Association)ではウェビナーを開催。デジタル領域に関わっている3名にご登壇いただき、これらの本懐やこれから注目すべき業界についてのディスカッションや、それぞれの事例紹介をしていただきました。その内容をお届けします。

DX・IT・効率化の本懐とは?

DX・IT化の現状

岩井 日本の上場企業のIT予算は売り上げの20%程度。アメリカでは3.7%かけているのに対して少ない。中小企業だとそもそもIT予算もありません。

木野瀬 銀行だと7%。勘定システムがあるからIT化はしますが、法人営業の人などは結構アナログ。不動産、医療業界もファクスを使うことが多いですね。

岩井 既存業務をそのままデジタル化するのではなく、効率化を考えてから、どこを切り取ってデジタル化するかを考えないとしくじることになります。

木野瀬 発注前に用件定義とか業務プロセスの改善から入らないと意味がありません。そもそも企業内でDXしようとしても、たいして効率化にならないと却下されるケースも多い。

平野 手間をかければすむ、頑張れば終わるというのが根底にある企業が多い。そこの意識改革がないと変わらないと思います。

木野瀬 個人的な結論をいうと、DXは現場の人が自分でできるようになるのが最強。現場でパワークエリやフラッターを使える人がいれば、コンサルや開発会社もいりません。DX、IT化されることはコスト以外のメリットもある。SlackSalesforceを導入して会社の情報が見えてくると、いろんな気づきが生まれ、分析もできるようになり、会社自体の知性が上がっていく。そういうことが実際の効果だというレポートも出ています。

岩井 ワークマンでは、各店舗での数字について、Excelのピポットを使った集計を行い、きちんと分析することで全店舗の売り上げがアップしたそうですね。

ニコニコ動画やLINEを使ったデジマと診療所向けのDX化の事例

木野瀬 私は、エンジニア・コンピューターサイエンスを学んだあと、YouTubeで人気のひろゆきらと一緒にニコニコ動画を運営していました。今はデジタルマーケティングや、病院の経営コンサルティングなどを行っています。
一つ目の事例は、ニコニコ動画の動画の下に商品を貼る「ニコニコ市場」というサービス。
いまも「2ちゃんまとめブログ」などの下にAmazonの商品が貼られたりしていますが、それはブロガー本人が面白そうなのを貼り付けているんですね。これをニコ生でやったら面白いけど、運営側が貼っていたら面白さが萎える。そこでユーザーに貼り付けさせるデジマサービスをつくったら、意外と商品が売れました。
アフィリエイト収入はドワンゴが100%持って行くしくみなのですが、ユーザーも面白ければそれでいいし、動画の下に面白い商品が貼られてて、コメントもできるというエコシステムができるので、サービスが成り立つわけです。

次の事例は「LINEを使った自動声がけツール」。LINE公式アカウントは便利ですが、削除やブロックをされることも多い。一方アパレルショップなどの会員証アプリは、個別に案内できるが登録しない人も多い。そこで、それぞれのいいとこどりをしたツールをLINE公式アカウントのAPIを使って作りました。店員が一言声がけするだけで友達追加してもらえ、ブロックされにくいメリットがあるので、数百店舗レベルで導入が進んでいます。

DXの事例は診療所でやっている「ORCAぽちぽち」というサービス。

ORCAは診療行為や患者情報を管理するソフトウエアです。その中で、行われた診療行為を精査して保険料を受け取るためのレセプトチェックの入力が手動で難しい。それを月間300〜1000回も行うため、医療事務が逼迫しています。そこでUiPathを使って自動化し、医療事務の労働削減と心理的負担を大幅に軽減しました。

ほかにも診療所向けに「患者情報と診療行為のSalesforceの取り込み」を行い、患者が治療離脱していないか、連携機関から定期的に紹介がきていないかなどを把握できるしくみを制作。またExcel機能のPowerQueryを使ってサービスのレポート集計を一発で行えるしくみを作り、それが自治体向けの政策ダッシュボードなどで活用されたり、CSVを、webのAPI、Excelファイルを取り込んで更新できるしくみを作り、社内のバイトの仕事の手間を減らす、PDCAサイクル回す、他部署との利害の一致を意識できる、などの価値を生み出した事例もあります。

業務マニュアル、社内FAQの開発や、通信教育のIT化の事例

岩井 エンジニアチームTechBeansはおもに紙で行っていた業務をデジタル・システム化するシステム開発を。バングラ法人at Bでは、日本に対して安価なIT労働力の提供を、バングラに対して雇用を生み、日本開発レベルのノウハウの提供と教育、育成の提供をおこなっています。ILY.incは企業の武器をデジタル化で作ることをしています。ざっくりいうと、業務のデジタル化と企業のデジタル化を行っているんですね。

Techbeansでの業務のデジタル化の事例ですが、
・業務マニュアルをweb上で閲覧、検索でき、
・年間行事など紙やExcelで作っている資料などをweb上で作れて回覧でき、社員がコメントできるしくみを作りました。
・また社内FAQのシステムも制作。たとえば100店舗ある企業で各拠点に20人スタッフがいるとして、2000人が本部に対して質問を電話やファクスしてくると大変です。そこでスタッフがFAQで検索し、よく関わる業務についてはお気に入りに入れて閲覧しやすくできるようにしました。
・ユーザーが来店予約やキャッシュバックをweb上でできて、お店側もシステムで管理できるようにもしています。
・過去にはタブレット上で授業が受けられるZ会アステリアというサービスの設計にも関与。
・ほかにも企業の社員の幸せ度を数値化するしくみを開発、
・デジタルで業務を改善していくしくみを制作したり、
・SDGsに関わる指標を数値化、可視化できるサービスも制作しています。

Techbeansやエンジニアの立場としては、非効率な業務をデジタル化。ILY.incではそれを企業の武器にしていくことをやっています。

ツールを活用し、大規模プロジェクトの稼働コストやリスクを削減した事例

平尾 デジタルマーケティング支援の会社で、クライアントのお仕事をお手伝いする立場にいます。領域としてはwebサイトの制作運用、デジタル広告のプランニングと運用、KPI設定、サイト分析など。

事務局運営を任され、外部パートナーと一緒に仕事を回していくこともしています。
こうした座組でやっていると、関わる人や情報が多くなるので、それらをまとめるためにコントロールしていかないと、リスクと工数がかかってしまいます。稼働コストについてはコミュニケーションコストや、そして置き場所が散らばった情報の管理コストにおいて無駄を極力減らすことが大事。リスクに関してはコミュニケーションの抜け漏れ、誤解を防ぎ、人によって解釈に迷わないようルールを決めることを徹底しました。

あるクライアントからweb運用と広告、分析を一任された事例と使ったツールをご紹介します。
数百ヶ所以上の第三者機関から原稿を集めてライターがリライトして出し戻し、コンテンツ公開するという大規模なプロジェクトでした。第三者機関とのやりとりはコールセンター経由。資料情報はGoogleドライブやボックス内に点在。規定により1ヶ所にまとめることが不可という状況です。
最初はGmailでやりとし、SlackからAsanaを採用。大規模事業のポイントとして全体が俯瞰できることと、スピード感をもってやりとりする上でAsanaがベストと判断しました。
進行管理としては、関わる人がコールセンターやライターなど多かったので、依頼は直接やってもらって工数を削減し、パスをがんがん回すしくみをAsanaで構築しました。
また情報集約のために点在するクラウドサービスを集約。コンテンツ履歴のアーカイブや返信メールのテンプレ格納、例外ルールのアーカイブなどをツールを使って行い、大規模な案件をかなりの人数で回せた実績があります。こうしたツールやしくみを導入するときは、前工程が大事です。BIツールを使うにしてもルール付けは人間が考えないといけません。目的や主語を明確にし、定義づけ、この先起こりうる分岐、可能性を洗い出しておく。それから先にようやくしくみが入ってくる。そのへんのつめをしっかりやらないとコスト、リスクが高まるので要注意です。

DX・IT・効率化で注目の業界は?

木野瀬 注目は介護業界ですね。戦後は100人に1人が後期高齢者というレベルだったのが、2025年には3分の1以上が高齢者という時代がきます。そうなると若い世代が1人で2人の高齢者を支えないといけません。そこで介護ロボットが必要になる。ロボットの必要性の議論の指標として落合陽一がいうには、ある高齢者に「ロボットと人間とどちらに介護されたいか」と聞くと「人間のほうがいい。ぬくもりがあるから」と答えるが、「ウォシュレットと人間と、どちらにトイレでお尻を拭いてもらいたいか」と聞くと「ウォシュレット」と答える。誰でも始まる前には抵抗があるけど、実際に始まったらそれでよくなるというわけです。

平尾 SDGs界隈ではデジタル化の話が出にくいが、BIツールとかダッシュボードが生きてくる世界。SDGsは自分の会社の目標を立ててそれを追っていこうというのが本来の使い方。それが「みんなで素晴らしい世界に向かってがんばろう」というところで止まってしまっています。

木野瀬 SDGsは一個一個の標準を定めるとアイデアが出てくる。「貧困をなくそう」の実装例として、銀行口座を持っていない途上国の方々に向けて、銀行通貨の代わりの仮想通貨を用い、日本企業からの仕事として、転記業務などの仕事を時給500円とかでやってもらえるようになると、現地の人は日銭が稼げて日本企業も助かります。

岩井 コロナがきっかけで日本はデジタル側に予算を振られるようになったので、僕的には注目は大企業。業界一位の会社が予算をかけてくるから、それなりのイノベーションが生まれる。一方でニッチマーケットは大企業がいないから、そこに対して動いているスタートアップ企業も面白い。ニッチマーケットで海外も狙えるのは農業。たとえば四国でやっている養殖所にIOTのシステムを入れると、それがタイやインドネシアでも使える。そういうアイデアを見つけて実践できる企業は伸びると思います。

木野瀬 農業プロダクトは世界中で使える。昔でいえば耕運機、コンバインとかも、さらに昔は牛でやっていたわけです。そういう、機械化していながらも単純な機構でしか動けないものを、さらにデジタル処理してより気が利くように動かそうというのがDXです。

岩井 IT化で地域を超え、情報格差を埋めて、そうした国に雇用を産むのはいいことだし、広く考えるといろんな業界やチャンスが見えてきそうですね。

登壇者紹介

木野瀬友人

デジタルハリウッド大学大学院 特任教授。デジタルヘルスラボ所属/日本うんこ学会 うんコレ総監修。高校生の頃から技術の実用化に興味を持ち、人工知能とサイバーセキュリティーの研究を経て当時ドワンゴ会長の川上量生氏、2ちゃんねる管理人西村博之氏とともに株式会社ニワンゴを設立。取締役としてニコニコ動画の周辺サービスを企画・開発を担当する。医師の石井洋介氏とともに日本うんこ学会を設立。デジタルヘルスラボでは緑内障簡易発見ツールの研究開発、新型コロナ等の組織内感染管理ツールの研究開発、デジタルヘルス人材の教育を担当する。VR Creative Award 2018 ファイナリスト、第29回日本緑内障学会 優秀学術展示賞受賞、経済産業省 ジャパン・ヘルスケアビジネスコンテスト2019 アイデア部門 優秀賞受賞。


岩井和希

ILY.代表/エンジニアチームtechbeans取締役/バングラ法人at B代表。メーカー、金融教育のスタートアップを経て独立。これまでに8社の経営に参画し、国内4社/海外2社の法人設立を行う。2016年に4名でILY.incを設立。2019年に共同代表に就任。経営課題の発見・解決および事業推進を得意とし、事業拡大や新規事業開発のためのビジネスデザイン、組織デザイン、人材開発、システム開発など、幅広く提供している。


平尾健二

オービタル コラボレーションズ合同会 代表取締役。雑誌広告の代理店を経て、2005年にインターネット広告代理店へ入社。以来、デジタル領域を中心に企業のキャンペーン、コンテンツ企画、広告戦略立案、Webサイト運用のインハウス化支援、BPO領域まで幅広い分野に携わる。
2019年7月に合同会社平尾を設立。企業の訪日インバウンド、海外マーケティングを支援する。並行しグローバル市場においての共通認識を理解するため、また次世代の将来に貢献できる事業を構築するため、SDGsについて学びを深める。
現在、自社のマーケティング支援機能を活かし「社会、環境へ貢献する取り組みをしているのに、いまいち世の中へその活動が伝わっていない」企業、行政の情報発信を支援する事業を展開している。


GDAとは
約 30 名の経営者、ビジネスマン、事業推進責任者が集まり、専門知識の共有によるオープンディスカッション、他社・団体との協業、社会投資や支援を活動の主軸とする実践的ビジネスコミュニティ。


私たちILY,は、ロゴ制作やビジュアルデザインなどの”見た目のデザイン”にとどまらず、MVV策定や事業・サービスのコンセプト設計などの”コトのデザイン”もご提供しております。お気軽にご相談ください。


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