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川の流れのように生きていきたい。着物のソムリエ 吉武 真衣さん〜後編

日本料理店で着物でサービスをするソムリエ。吉武 真衣さん。
「着物は、変身スーツ」とおっしゃる吉武さんのお話をもっと聞いてみました。前編はこちらです。↓


いつも自分の中に、山が一つ二つある。

──吉武さんとお話をしていると、大自然の情景が頭に浮かんでくるんです。常に自然をイメージされているんですか?

 あー。いつも頭の中に自然がありますね。山が一つ二つくらい。笑。
実家が本当に山の中にある旅館なので…。そういう大自然の中で育ったことが大きいかもしれないです。今でも覚えているのは、小学校低学年の頃、よく妹と庭のような感覚で近くの山で遊んでいました。大雨の後は、大きな木がたくさん倒れているんですけど「どこか遠くの海に持っていって、乗ろう!」とその大きな木をくり抜いて、船に見立てたものを作っていました。山梨県は海なし県で海に対する憧れがあるんですよね。笑。

──ふふふ。かわいいですね。

 台風で近くの崖が崩れることもよくありました。とくに私が住んでいた場所が、周りのクラスの子よりも山の奥地なので、それで学校がお休みになることも。物理的に行けなくなっちゃうんですよね。道がなくなっちゃうので。笑。「まいちゃんは特別に今日学校お休みになりました」と先生から朝、お電話があるんです。
だからなのか、ちょっとやそっとでは動じないかもしれないですね。大自然の前には、人間の存在はちっぽけであることを小さい頃から感じているからですかね。仕事中も、周りから「冷静だね」と言われることが多いです。

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川の流れのように生きたい。

 私、「流れる川のように生きていきたい」と思っていて。山から水が湧きて出て、上から下に流れる。途中で色んな川とくっついて、最後に大きくなって流れていく…。途中で大きい岩があって、せき止められて、水の細さは変わったりもするけれども川は止まらずに上から下に流れていく…。つまり、ずっと太い川のような生き方でなくていいと思っていて。目標があってもいいし、なくてもいいし。

 どういうことかというと、私は自分の好きなことをやって、自然の中に身を置いていていきたいなと。時計も見ないし、好きなもの食べて、好きな人と好きな時間に好きなことをして…。だけど、好きなことをやってるだけじゃ生きていけないから、自分のやりたいことを満たしながら、生活手段として仕事をするような生き方が理想です。

──そのように思う、何かきっかけがあったんですか?

 昨年、コロナになって、予定していたお仕事がなくなったことが大きいかもしれません。今まで、目標を立ててがんばってきたタイプだったんです。
1週間のスケジュールを目標と期間から逆算して、毎日のノルマを決めてやっていました。筋トレや読書、英語の勉強などです。ですが、昨年一年は一切やめました。やりたくなかったら、やらない。やりたくなったら、やる。それが、すっごい気持ちよくて。笑。ほんとっに!
 因果関係があるか分からないんですけど、そこからいい気がまわり始めた。色んなことをするにあたって、タイミングが良すぎることが増えたんです。小さなことだと、電車のホームに着いたら、ちょうど電車が来たり…。友人に連絡したら、「あ。ちょうど連絡しようと思ってた」と言われたり。今、すごく生きやすくて。こういう生き方が私には、ぴったりなのかな。と気づくきっかけになりました。

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今、幸せなことを積み重ねていけば、その先も幸せ。

 最近、和菓子の練り切りを作ることにハマっていて。私が普段やっているサービスという仕事は目には見えないし、瞬間瞬間で終わってしまうことなので、あとで振り返りたくても振り返れない。ものづくりは上達したら、作るもののレベルが変わってくるだろうし。それが、あとから振り返ることができるのがいいなって。自分の想いが形になって、ちゃんと残る。茶道とはまた違った観点で好きなんです。

 私は、大きい望みもなければ野望もないけれども、その瞬間瞬間のことをコツコツやってそれがいつか、なにかに繋がるかもしれない。と思っていて…。今、幸せなことを積み重ねていけば、その先も幸せだと信じて生きていきたいなと思います。

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毎日が、せわしなく過ぎていく日々のなかで
私たちは、つい「今日という日の尊さ」を忘れてしまいます。

今日のお天気はどんなだろう。と太陽の光や風を感じること。
今日の家族や友人はどんな調子だろう。と人の声や表情を感じとること。
今という時間を感じて、楽しむこと。

まだ見えぬ未来のことばかりを案ずるのではなく、
今、目の前にある今日この時間を大切に生きていく。

その積み重ねが、幸せな未来へと繋がっていく。

そんなことに気づかされました。
吉武さん、お話ありがとうございました。

取材、文 :大島 有貴
写真、写真提供:櫻井 充

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