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規則正しい睡眠がなぜ健康に良いのか – NK活性を高める睡眠とは

 皆さんこんにちは。順天堂大学医学部免疫学特任教授の奥村です。

「春眠暁を覚えず」といいますが、寝心地がよく、朝になっても気づかないほどぐっすりと眠り込み、つい寝坊をしてしまうことがあるかもしれません。

 ここでは、そんな睡眠と免疫の関係についてお話しします。

「○時までに寝なければならない」、「○時間以上は寝なければならない」なんて細かく考える必要はありません。

 あるポイントさえ押さえれば大丈夫なんです。

睡眠とNK(ナチュラルキラー)細胞の関係

 私たち人間の体では、毎日約1兆個もの細胞が新しく生まれていますが、残念ながらそのうちの約5,000個は、不良品の細胞です。これを放置すると病気になるおそれがあるのですが、すべての人が病気になるわけではありませんよね。

 これはなぜでしょうか。その大きな理由が、ナチュラルキラー細胞、略してNK細胞のはたらきにあります。NK細胞は、リンパ球の約20%を占めている、重要な免疫細胞です。このNK細胞が、全身をパトロールし、発見した病気の芽を片っ端から潰してくれているのです。なんと頼もしい存在でしょう。

 しかしこのNK細胞、残念ながら、20代をピークとして、加齢とともに働きが衰えていきます。そのため、高齢になると、病気にかかりやすくなってしまうのです。

 また、NK細胞は、昼間は活性化され、夜になると活性が低下するというように、一日のなかでのリズムがはっきりしています。このリズムが崩れると、NK活性が低下します。

NK細胞の活性を下げないよう、生活リズムを一定に

 今日は徹夜、かと思えば明日は早めに就寝・・・、というように生活のリズムが不規則な人は、NK細胞の働きのリズムを崩し、その働きを弱めてしまいます。

 完全に昼夜逆転した生活を毎日送る人はそれで構わないのですが、例えば医師や看護師のように、夜勤と日勤のシフトがあるような人は、NK活性が低くなりやすいので要注意です。

 「○時までに寝なければならない」、「○時間以上は寝なければならない」といったことにこだわるのではなく、「毎日決まった時間に起きて、決まった時間に眠る」、これがポイントなのです。


奥村 康 先生 医学博士
順天堂大学医学部特任教授

1942年生まれ。免疫学の国際的権威。千葉大学医学部卒、同大学院医学研究科修了。スタンフォード大学医学部留学、東京大学医学部講師、順天堂大学医学部免疫講座教授、順天堂大学医学部長を経て、現在は同大学医学部特任教授(免疫学講座)・アトピー疾患研究センター長。ベルツ賞、高松宮賞、日本医師会医学賞などを受賞。サプレッサーT細胞の発見者。臓器移植後の拒絶反応を抑える新手法を開発。