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映画「ウーマン・トーキング」 南十字星に拳を突きあげて


□2023年の重要な1本

2023年のとても重要な1本だと感じる

この作品のテーマは女性の尊厳についてだ

しかし本作は他にも重要なテーマと
向き合う機会を与えてくれた

紛争のときにとるべき態度について
洗脳や教育がもたらすものについて
次世代のために今を生きることについて

またテーマの崇高さに溺れることなく
作品として実に豊かで美しい仕上がりだった

会話劇だが優れた編集で目が離せない
大人の真剣な討論にはしゃぐ子どもの姿を
挟み込むことで作品に批評性をもたらす

顔に深い傷を持つフランシス・マクドーマンド
彼女に代表されるように登場する女性たちの
人物設計が個性豊かで惹きつけられる

プロットも緻密で何も知らず観ていた私は
「Daydream Believer」で大驚愕した

あの美術や衣裳も私を驚愕させるために
周到に加担していた共犯者と言えるだろう

□積極的”leave”

forgive - fight - leave

彼女たちは単に選択を議論していただけではない

”leave”をいかに意義あるものにするか
そういう葛藤をしていたのだと思う

積極的”leave”
主体的”leave”
愛と赦しを生み出すための”leave”

ある女性がインスタで書かれていた

“男だったらleaveという結論は到底出せない
負け犬でいいのかと煽る奴がいたり
立ち向かうことで信念を示そうとするだろう“

私にはその言葉がずっと残っている

そして例えば憲法9条のことなど考える

「もし他国に侵略されたらどうするんだ」
大きな声が9条の本質を終わらせようとする

しかし”leave”と積極的戦争放棄は
最先端の叡智ある態度であるという思いが消えない

少し話が逸れたようだ

□今は雨を降らすな

この村の女性は学習機会を与えられず
考えることや意思決定も奪われていた

特異な宗教はおそろしいという見方もできる

性暴力に及んだ男性たちもしかりで
村や宗教の因習が生み出したとも言える

だから教育こそ重要だということになる

そこに異論はないが教育も手放しで
崇拝してしまえば宗教と同じようになる

教育にも洗脳という側面がある
何をどう教えるのか常に問い続ける必要がある

この村の女性たちが命を賭して
守ろうとした可愛い子どもたち

ルーニー・マーラのお腹には赤ちゃんがいる

でもそんな子どもが何年後かに
性暴力をはたらく男性となり得るのだ

青年たちの瞳には純粋さとともに
すでにギラついた衝動が宿っている
キャメラはそれをとらえている

彼女たちの旅立ち

そこには多くの困難が予想されるから
希望の旅立ちとは言えないかもしれない

それでもボクは映画史に残るような
旅立ちの場面に立ち会っているのではないかと
心がクシャクシャになった

だって彼女たちは南十字星に
拳を突きあげて進んでいくのだ

勝つとか負けるとか
そんな卑小なことは考えていないというほどに
その強いまなざしから静謐な意思を感じる

エンドロール
暗闇のなかで遠雷が聞こえる
女たちの旅立ちのときだ
今だけは雨など降るなと祈る


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