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人がどんどん辞めていくのはなぜ?

長年NPO業界でお仕事させて頂いていて思うのは、こんなにも人がどんどん辞めていくのはなぜか?です。

比較的に若い世代が入ってきやすい業界ではありますが、どんどん辞めていきます。

辞める理由はだいたいメンタルヘルスを病んでの理由が多いです。「そんなにしんどいなら辞めたらいいよ」とこれまで私も何度もアドバイスをしてきました。

メンタルヘルスを病む原因

どうしてそんなに病むのでしょう。

給料が安いからと思いましたが、給料安いだけが原因でメンタルヘルスを病む人はいません。その根底には理想と現実のギャップを自分の力で解消するできない板挟みの状況があるのではないでしょうか。

そのギャップはどんなものか参考情報を元に考えてみます。

企業の管理職が若手社員に期待していることに関するアンケート結果を見てみましょう。

書籍:社員が「自ら動き」「自ら成長する」チームのつくり方 P16から抜粋

これは企業の管理者が若手に「期待」していることですが、NPOの場合は、人が少ないので「期待」ではなく「既に持っている」前提で人に接する傾向があります。

  • 業務に必要なスキル・知識は自分の努力で獲得しろ(研修はしないぞ)

  • 何があってもあきらめずにやりきれ(社会問題を解決したいからNPOに入ったんだろ?)

  • 任された仕事を確実に進行すること(与えられたタスクをこなすのは社会人の前提だよ)

  • 何事も率先して取り組め(次必要なことを先んじて取り組むのは基本だ)

  • 新しい発想を提供しろ(若いんだから柔軟は発想の発言は当然)

  • 社内外と良好な関係を築け(NPOではたらいているんだから自分でつながりつくってそれを仕事に活かすべき)

それが前提なので、どんどん人が辞めていく団体のリーダーの言動として以下のような傾向があるのではないでしょうか。

「やったことないので」と教えを請うても「はぁ?そんなん自分で考えろや」と一瞬思いますが、「自分で考えてやりたいようにやっていいんだよ」と笑顔で放置します。

「しんどくてくじけそうです」と言っても「何のためにここにいるの?」と一瞬思いますが、すぐさま「困っている人に対して支援するのが私達のミッションだからがんばろ!」と励まして、大丈夫だろうと思い込みます。

こわくて発言を控えている人に対して「会議で発言しないやつはいないのも同然だ」とイラっとしますが、実際は「◯◯さん、ずっと黙っているけど何か意見あるかな?」と促しつつ、どうせないだろうと圧をかけます。

「モチベーションとかエンゲージメントとかまじわからんわ」と皆がいるところで誰に対して言っているかわからないように、笑いながら大きな声で言って牽制します。

超ブラックなスタートアップ企業のように直接言ってしまうとパワハラで通報される世の中になってきましたので、挙げたようなソフト派が増えています。

一方、NPOに入ってくる人は以下のような感覚です。

書籍:社員が「自ら動き」「自ら成長する」チームのつくり方 P20から抜粋

答え知っているくせに「自分で考えてみて」って、日頃「スピード感大事」って言っているくせに矛盾しているよね。

ざるな計画しかたてられないのに「あとはよろしく」って、学校ではそういうことはしてはいけないと習ったんだけどな。

グループチャットで仕事しているのに、なんかあったら個別チャットでねちねち言ってくるの、まじ引くわ。

18時に「今日中によろしく!」って残業代払えるようになってから言えよ

10年後のビジョンを大事に言っているけど、こんなに人が辞めていて3年後続いているの?この団体

こんな双方のミスマッチがメンタルヘルスを病んで退職につながっているのだと思います。

NPOでチームマネジメントができない理由

以下のグラフは、管理職の方にプレーヤー中心かマネジメント中心かをアンケートをとった結果を目標の達成度合いで分けたものです。

これを見ると毎年目標を達成していくには、リーダーがプレーヤーとして活躍するよりも、チームマネジメントをすることの方が目標達成に有効そうであることがわかります。

書籍:社員が「自ら動き」「自ら成長する」チームのつくり方 P25から抜粋

また、以下のグラフはチームメンバーの成長度合いと目標の達成度合いを比べたものです。これを見ると、チームメンバーの成長を感じながらチームづくりをすることが目標を達成することに有効そうです。

書籍:社員が「自ら動き」「自ら成長する」チームのつくり方 P25から抜粋

こうしたマネジメントを重視したチームづくりや、メンバーの成長に関心を持つことへの有効性がはっきりはしていますが、NPOは職員数が少ないのと、当事者を支援したい意欲が強いので、リーダーもプレーヤーとして活躍するため、それがやりにくい環境です。

相手をコントロールするではなく、自らを変えるところからが出発点

いろんなリーダーさんが言いそうな、

「指示待ちでしか動かないメンバーが、主体的に動くようになるにはどうしたらいいですか?」

のセリフの根底には、

「どうすれば思ったようにメンバーを動かせますか?」

という他者をコントロールする意図が含まれています。

この考え方の先にたどり着くところはマイクロマネジメントで、細かい作業に介入してタスクレベルでミスを怒ったりなじったりすることで最終的に退職につながっていきます。

マイクロマネジメントが個人のモチベーションを下げてしまうことは明らかなのですが、「できないんだったらやらせてやるよ」的な考え方で、本人はよかれと思ってやっています。 

なので、辞める人に「甘いんだよ」「NPOなめんな」「そんなんじゃどこでもやっていけんわ」と呪いの言葉をはきがちです。

でも、辞めた後のご本人はつきものがとれたようにイキイキと働いていることがほとんどです。

どんどん辞めていかないようにするには、相手をコントロールする、ではない考え方を持つ必要があります。

下図のように、リーダー自らの姿勢を整えて、メンバーからの信用を得てから、目標にむけてチームをマネジメントする順となります。

書籍:社員が「自ら動き」「自ら成長する」チームのつくり方 P35から抜粋


自らの姿勢については5つの要素で示すことができます。

対象とする困りごとを抱える人への支援スキル、知識、経験と実績があるからこそ、その団体のリーダーとしての存在があります。

そして、困りごとを抱えている当事者に対する眼差しや価値観、立ち振る舞いは人間性があふれていて、社会的に信用されている人が団体のリーダーです。

書籍:社員が「自ら動き」「自ら成長する」チームのつくり方 P37から抜粋

しかし、当事者に対しては5要素が揃っていたとしても、チームメンバーに対してはどうでしょうか。

当事者に対する印象とは全く違う対応をされているリーダーをよく見ます。つまり人間性がなく以下4要素のみでチームマネジメントをしていることが多いのです。

一般的にとうていうけいれられないことであっても、あれだけ社会的に信用されている人の言葉や態度だから受けとめている状態です。

書籍:社員が「自ら動き」「自ら成長する」チームのつくり方 P43から抜粋

リーダーのソトとウチの信用度のギャップでメンタルヘルスをやられてしまう人が結構多いのではないでしょうか。

リーダーのソトとウチのギャップとは?

このギャップは何かというと、以下の尊敬できない上司の特徴に書かれているようなことです。

書籍:社員が「自ら動き」「自ら成長する」チームのつくり方 P48から抜粋

感情的な行動、自分本位でおもいやりがない、一貫性がない、忙しくて話を聞いてくれない、アイデアを言うだけで行動しない、威圧的、こんなウチ向きの態度をしているリーダーに対する職員さん達からの嘆きをよく聞きます。

続いて尊敬できる上司の特徴を見てみましょう。

書籍:社員が「自ら動き」「自ら成長する」チームのつくり方 P47から抜粋

ここで注目すべきところは9位の「話がわかりやすい」です。

どんどん人が辞める団体のリーダーは、話がわかりにくい人が多いです。

わかりにくいだけならいいのですが、話が飛躍しているにも関わらず、理解できずにオロオロしていると、わからないことをバカにしてくるのです。

本来そんなことはあってはいけないのですが、論理が飛躍した短い言葉のやりとりで相手の頭のよさを値踏みして、よくないと判断すると「そんなこともわからないのか」と見下し、表や裏で悪口を言う人がいます。

チームマネジメントに求められるリーダーの人間性

チームマネジメントをするために求められるリーダーの人間性として以下の9つが挙げられていて、リーダーがポジティブファクターを多く持つほどチームマネジメントが良好になると述べられています。

書籍:社員が「自ら動き」「自ら成長する」チームのつくり方 P52から抜粋

どんどん人が辞めている組織のリーダーを思い浮かべて、この9つのポイントで見ていくとどうでしょうか。右側のネガティブファクターに当てはまる項目が多いはずです。

どんどん人が辞めていかないようにするにはどうしたらいいのか?

どんどん人が辞めていかないようにするにはどうしたらいいのでしょうか?

ウチ向きにはネガティブファクターばかりのリーダーが、ポジティブファクターに変わってもらうのを待つしかないのでしょうか?だとすると今いる職員さんは絶望的です。時間がかかりすぎるからです。

よく、大量離職があって目覚めました!みたいな成功談がありますが、そういのは稀なケースです。状況が変わらず長期間ブラックな組織の方が多いのではないでしょうか。

方法としては、マネジメントチームをつくり、1人のリーダーにウチもソトも対応させないことが重要だと思います。

以前マネジメントチームのことを書いたnoteがありますので、マネジメントチームについて知りたい方はご参照ください。

さいごに

NPOは、困りごとを抱えている人を支援する活動から始まっている団体が多いので、組織のありかたとか、チームマネジメントなどを知らずに活動を続けている中でリーダーになる人が多いです。

そのため、職員や関わる人が多くなって始めて壁にぶつかるリーダーも多いです。とはいえ、超忙しい時に管理職研修だのリーダーシップ研修などを受けるお金を時間も意欲も低いのが現実なのではないでしょうか。

しかし、この壁を超えるにはチームの力が必要です。研修を受けたり、伴走支援をうけながら自分も組織も変えていきましょう。

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