見出し画像

あえて自分の手で廻す、焙煎器のこと。


こんにちは。

お店のない間借り手廻しロースター
イマフクコーヒーの中の人、
イマフク ナオキです。

今回は、僕が使っている焙煎器について
少し話してみたいと思います。


僕の相棒、ユニオンサンプルロースターの特徴

僕が使っているのは、
ユニオンサンプルロースターという
手廻し方式の焙煎器。

半熱風タイプを使用しています。
もうすぐ3年。ドラムの色がいい感じです


東京のかっぱ橋道具街にある
株式会社ユニオンさんの製品です。

立派な建物。交差点の角にあります。
コーヒー用品以外に豆もあるYO


“サンプル”という名前のとおり、
大きな機械での本焙煎の前に味見をするためや
生産地で収穫・精製された豆のサンプルローストに
使われているのがこの焙煎器。
(最近ではあまり使われてないのかな。)

おそらく何十年も前から存在している焙煎器で
変わらない、ちょっと無骨な鋳物のままです。
そこが愛しくもあります。

大きな焙煎機は費用もかかりますし、
そんな量を毎回焼くと大変なので
最近では自宅で焙煎する人が使ったりしてるかな。


あとは、かの有名な「大坊珈琲店」の大坊さんが
フジローヤルの手廻し焙煎器で
深煎りネルドリップのスタイルを確立(ご本人はそんなこと意識されていないのだと思いますが!)されてからは、
その道を志す人の相棒としてカルト的人気だったり。



ただ、この焙煎器
やっかいなところがそれなりに多いのです。

①排気の調整機能がない。

普通、焙煎機には“排気”といって釜の中の空気の流れを調整する機能がついているのですが
この焙煎器は穴ひとつ。

排気を調整すると味のクリーンさや火の入り具合を
細やかに調整できると言いますが、
そんなものは一切なし。

なので比較的長い焙煎だと
煙を被った味の雰囲気になりがちな印象です。
※あくまで私観、おいしいは人それぞれ。

②1回で焼ける量が少ない。

大きな焙煎機では、1回の焙煎で
1kgくらいは焼けるところ
この焙煎器は250gほど。

焼く事によって重量は減少するので
頑張っても200gくらいしか出来上がりません。

③腕、しんどい。

買う前に気づけや! と言われそうですが

僕の焙煎プロファイルだと
予熱に15分、焙煎に10分ほど、
合計25分はまあまあの速さでドラムを廻し続ける必要があり
間借り出店となると一気に何回も焙煎するので
「焼いているというより、廻しているという方が正しいのでは?」
と我に帰る瞬間があります。

自動の焙煎機だと、ドラムの回転は自動だし、
なんなら撹拌のスピードも変えられますよね。

④温度が測りにくく、プロファイルの再現難易度が高い

①にもあったように、この焙煎器は排気口がなく
開いている穴は豆の投入口の一つだけ。

最近の焙煎機だと、ドラム内に温度計があったり
なんなら排気温度とかも測れますよね。

温度が測れることによって、何分で何度、といった
ある意味で絶対的な指標ができるから、
同じ傾向の味にしたければなるべく同じようにやってみたらよかったり。
厳密に同じ味というのは存在しなさそうだけど。



でも、そんなとこ含めて全部がこの子の良いところ。


自分と共に成長していく感覚



疲れたり、再現性がないとか、効率が悪いとか色々と書きましたが
それはぜんぶ、良いところなのではないかと思っています。
ユニオン!ばかにしてごめんよ。


アナログだからこそ、温度や数字だけでなく
豆の匂いや水蒸気、色をしっかりと五感で感じられると僕は思うのです。

ドラムを廻す手に響く豆の振動が、
焙煎が進むにつれ軽くなっていったり、

豆の香りを嗅ぎながら煎り止めを察知したり。
様子を見ながら火力を強めたり弱めたり。


もちろん、お店で出すからには
測れるだけのことを計ってプロファイリングしていますが

毎回の出店のための焙煎を重ねていく中で
数字をみるだけではわからない感覚のようなものを掴んだり見失ったりしています。
そこがとても楽しい。


"焙煎"というものは大好きなのですが、
仰々しい技術の披露ではなく、
自分の当たり前のライフワークにしたいのです。
飲んでくれる人にも、派手じゃなくても
毎日に馴染む地味深いしあわせをお届けしたい。


だから、あえて手で廻して焙煎することで
いつか焙煎が自分とひとつになるような、そんなことになったらいいな。
その日は来るのでしょうか。



以上、今回は僕の焙煎器
ユニオンサンプルロースターについてご紹介しました。

ではまた!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?