押井守とSF映画

「日本アニメの革新」の自分用の補足のため、というわけではないけれど、アニメ監督の大家の中では押井守が一番好きなので、関連するSF映画とからめて書いておきたく。押井守はゲーム好きなのでゲームも少し(結構)からめて書きておきたい。

2016年のLINE LIVE(サービス終了)より。ガルムウォーズの宣伝のための配信だったらしい。

1968 2001年宇宙の旅
(1977 スターウォーズ)
1979 エイリアン
1982 ブレードランナー

押井守によればSF映画とはこの3作品のことらしい。監督はスタンリーキューブリックとリドリースコット(ちなみにエイリアンシリーズの監督は1がリドリースコット、2がジェームズキャメロン、3がデヴィッドフィンチャーである)。

スターウォーズはスペースオペラであり違うらしい。SFとはある種の思考実験、スペキュラティブフィクション(思弁小説)でもあると。SFは文学のかわりに読んでいた。


ブレードランナーからマトリックスへ

1982
ブレードランナー

サー(ナイトの称号を持つため)の「ブレードランナー」を語らずしてSF映画は語れない。「ブレラン」登場以前と登場以後では、まるっきりSF映画が変わってしまったから。

某プロデューサーと一緒に観に行って、そのあと「ブレラン」の何が凄かったのか、彼とずーっと話していた。自分の映画体験を振り返ってみても、決定的と言っていいくらいの衝撃だった。じゃあ「ブレラン」の何が凄いのか?世界観ですよ。それに尽きる。

たとえば映画の三要素。キャラクター、ストーリー、そして世界観。この3つが映画の本質だということは、映画の教科書にも載っている。僕はこれについて(ジェームズ・)キャメロンと話したことがあって、彼はこの順番をいつも強く意識して映画を作っていると言うんだよね。

彼の順番はまずキャラクター。観客が共感してくれるキャラクターを作るのが映画にとって最重要というわけだ。2番目にストーリー。起伏があり、仕かけがあって観客が飽きないような物語を生み出す。そして最後に世界観。まあビジュアルですよね。

でも、僕の映画作りはその逆で、まずは世界観、それからストーリー、最後にキャラクターがくる。世界観を語るためにストーリーが必要で、どんなシーンを撮るか、どういうシーンを組み合わせるかを考える。そして、最後にその世界観を支えるにたるキャラクターをもってくる。これは観客のため。彼らはそのキャラクターを通じて世界を理解するから。

師匠たちに教えられたこと

1984
うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー

東浩紀はこれが一番好きらしい。好きな人は多そうだ。終わらない日常。オタクでいえば第二世代(団塊ジュニア)。

愛はブーメラン

らきすたでもエンディングで歌われた曲(パロディ)。

1985
天使のたまご

2007年に押井守特集があってその時のもの。当時の押井守作品ランキング。宮台真司は天使のたまごがマイベストである。オタク第一世代(新人類)。

ランキング
1 パトレイバー 2 the Movie
2 パトレイバー the Movie
3 攻殻機動隊
4 ビューティフルドリーマー
5 イノセンス
6 パトレイバーOVA
7 うる星やつらTVシリーズ
8 アヴァロン
9 御先祖様万々歳
10 天使のたまご

うる星やつらにしろパトレイバーにしろ攻殻機動隊にしろ2本目は必ず冒険する主義だ。ちがう物語をつくるんじゃなくてちがう種類の映画を目指す。映画そのものをちがう映画にする。世間的には1本目のほうが褒められる。


1987 紅い眼鏡
1991 ケルベロス地獄の番犬
1992 トーキングヘッド

実写映画3作品。川井憲次とは紅い眼鏡で出会ったようである。学生の自主製作映画真面目に見たことがないそびえ立つ糞

1990 サンサーラナーガ

ファミコンソフトもつくっている。こちらも音楽は川井憲次。1990年発売のファミコンRPGというとドラクエ4、ウィザードリィ3(ダイヤモンドの騎士)、女神転生2、FF3などである。ファミコンRPGの全盛期といってよく、SFCでいうところの1995年と同じである。


1989
機動警察パトレイバー the Movie

1993
機動警察パトレイバー 2 the Movie

おもひでのベイブリッジ

パトレイバー2を押井守の最高傑作という人も多い。異論なし。レイアウトシステムの確立。

1995
GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊

今さら語ることもないでしょう。AKIRAと共にジャパニメーションの代名詞。このシーンの前半部分(?)の作画担当は磯光雄である。


いろいろ抜けているかと思いますが、まあいいでしょう。うーんやはり全盛期は20世紀なのか?作品の数はあきらかに20世紀のほうが多い。


ブレードランナーからマトリックスへ

1999
マトリックス

ブレードランナーから攻殻機動隊を経てマトリックスへ。

しかし、ブレードランナーの世界観は、それらとは大きく異なるものであった。暗く雑然とした都市には夥(おびただ)しいネオンが灯り、巨大画面にはゲイシャガールが微笑むCMが流れ、酸性雨が降りしきる中を群衆は無秩序に歩いている。それはさながらアジアの都会の混沌を思わせる。しかし、こうしたイメージは東京・歌舞伎町や大阪・道頓堀のいかがわしさを身近に知っている日本人にはむしろ受け入れやすいものだったのかもしれない。

80年代の日本は達成感に満ちていた。達成感は同時に目標の喪失をもたらす。欧米中心の近代的進歩の原理がもはや有効に機能しなくなった閉塞感と、アジア的混沌への肯定感を、ブレードランナーは見事に描いた映画だった。

一方マトリックスは、1999年に公開された。私たちが現実だと思っていた世界が実は現実ではなく、私たちは巨大なコンピュータ・ネットワークが作りだしている仮想現実の中で夢を見せられているにすぎない。現実の世界では、人間は子宮のような狭いタンクの中に眠らされて、生体が発する電気エネルギーを機械に吸い取られている。そこでは人間は、もはや資源として巨大なネットワークを動かすために利用されるだけの電池としての存在になっている。

映画の中で主人公ネオはマトリックスという仮想現実の夢を見続けるか、現実世界に脱出するかの二者択一を迫られる。映画の世界観ではマトリックスの夢から醒めると、その外部には確固たる、しかし荒涼たる現実世界があり、そこでは少数の目覚めた人々が船に乗って、イカ型のロボットと戦っている。仮想現実とその外部の物理的精神世界という構図は、夢と現実の区別とさして変わらない。

後半、主人公ネオが仮想現実の内部で超能力を身につけてから、敵に捕らえられた仲間を助けに行くシーンなどはオタクたちの評価が高いが、逆に私は評価できない。ふだんの生活ではさえない存在であった自分も、ネットワークが提供してくれる仮想現実にログインさえすれば世界を動かすヒーローになれるという物語は、一日中パソコンに張りついて、ゲーム三昧の日々を送っているオタクたちの願望充足にしか見えない。

ポストモダンとは何だったのか

2001
アヴァロン

マトリックスと同じ時期につくられたSF(というよりはファンタジー)映画。ガルムウォーズがポシャったのでかわりに副産物としてこの映画がつくられたらしい。

アーサー王伝説を題材としたオンラインゲームの話で、VRヘッドギアそっくりのヘルメットをかぶりゲームの世界へログインする。アッシュ(灰)という名の女主人公、マーフィーズゴースト、盗賊のスタナー、識別能力持ちのビショップなど、押井守版ウィザードリィである。リセット技もあり。

アマプラで330円で見れます。自分はこれが一番好きです。

2003
アニマトリックス

正直なトレーラーで続編よりおもしろいといわれていたオムニバス形式アニメ。U-NEXTなら見れるようです。

2004
イノセンス

攻殻機動隊の続編。押井守的身体論。映像的にはこれが最高峰。

2006
立喰師列伝

押井節全開の知られざる傑作(知ってる?)。アマプラ330円也(なり)。腹が減る映画です(笑)。

2008
スカイクロラ

押井守が若い人へ向けたメッセージ。アニオタには評判が悪い。


この間もいろいろありますがまあいいでしょう。かなり飛びますがまあいいでしょう。


2015
Fallout 4

押井守のFallout 4好きは有名ですね。PC版でMOD入れてプレイしている模様。バイオハザードやドラクエビルダーズも好きらしい。

ダイアモンドシティという都市で「タカハシ」といううどんを売るロボットがいるのはブレードランナーへのオマージュ。ナニニシマスカ?

2016
ガルムウォーズ

これで冒頭に返ってくると。これもSFというかファンタジー。構想15年遂に完成。アヴァロンは超えられなかった。配信されていません。まあされないでしょう…。なんというかかわいそうな映画です。

2017
メッセージ

久しぶりの本物のSF映画。完成度高し。日常生活と関係ないところで、利便性とか利害とか超えたところで何かと接触する。その前後で人生が一部変わる(っていうさ)。そういうダイナミズムがある。

ブレードランナー2049

ブレードランナー ブラックアウト 2022

30年後のブレードランナーの世界。アナ・デ・アルマスがかわいい。

2020
ぶらどらぶ

セルフパロディ満載の吸血鬼アニメ。

2021
花束みたいな恋をした

冒頭にちょろっと出演(本人役)。

マトリックスレザレクションズ

ネトフリか。どうしようかなー。ノスタルジー(それ自体は悪くない)以上の意味はあるのか?……っていうかまだ支配されていたのか(笑)。


こうしてみると長編アニメは2008年のスカイクロラが最後ですね。今年2023年には新潟国際アニメーション映画祭の審査委員長を務めましたね。

押井守は中学生の時にSF作家になりたかったほどのSF好きのようです。やっぱりSFかー。押井守は現在はアニメ作品と実写作品と半々くらいなのだそうである。

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