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都会へ駆け出す

街中を歩く。ふっと、この前会った人に出会う。名前は知らない。話したこともない。けれど、顔は知っている。多分、あの人もよくこの街を歩いているんだろう、と思う。この先も、きっとあの人を知らないまま生きてゆく。顔さえ知らない人が通り過ぎても何も感じなくなったのは、都会に住みはじめてからだろうか。あの人を見かけると、いつもそのことを思い出す。挨拶すらしなくなった私を、都会に染まっている、と誰かが言うのだろうか。都会に染まった瞬間、私たちは余命宣告されている。都会から脱出できない人間へと変貌していく。欲望に溺れてゆく。沈んだ先には、どんな景色が広がっているのだろうか。飛べるはずもないのに、都会の街へ大きく羽ばたいてゆく。飛んでいる姿を見る者はいない。着地した姿だけ見る者はいるが、欲望を満たすため都会の街へ消えてゆく。

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