【短編小説】鏡の向こう
ピカ ゴロゴロゴロ
ザァァァァァ
雷だ
空は厚い雲に覆われどんよりしている
「私はこれからどう生きたらいい」
稲妻の光を眺めつぶやく
その日私は初めて男性と寝た
その男性とはもう会うことはなかった
残ったのは痛みだけだった
ポツ
雨が私の頬に落ちた
私の身体は雨に濡れた
その日私は仕事を辞めた
その仕事に未練はなかった
残ったのは一生治らない傷だけだった
部屋にある鏡が光った
「眩しい」
近づき覗くと
そこにはあらゆる天候が広がっていた
晴れ 曇り 雨 雪 雷
大きく変化があることを私たちに伝えた
時には青空広がる快晴
時には雲で覆われた曇天
鏡にしか見えない向こうで言葉もなくただ伝えていた
「私は見守られていたんだ」
遠くの空が光った気がした
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