約束
「お父さん!お母さん!」
勢いよくハルくんが朝の食卓に飛び込んできた。
「サンタさんからプレゼント!ほら見てごらん」
両手で頭の高さまで掲げた箱には白地に金と銀の雪の模様の包み紙。その上から赤と緑の太いリボン。
その場でその包み紙をしわくちゃにしながら開いてさらに金切り声で歓声を上げる。
「わあ!サンタさんにお願いしていたロボットだ!」
今度はロボットを抱きかかえて子ども部屋と食卓をスキップしながら行き来する。
嬉しい表情が溢れて止まらない。
ハルくんのお父さんとお母さんはまるで絵画に魅きつけられるようにその様子を見つめていた。
実はね、
ハルくんは昨夜サンタさんに会ったんだ。
サンタさんが小指を差し出しながら言ったの。本物のサンタさんと会ったことを大人たちに言わないようにって。
大人たちはサンタクロースがいないと信じてる。
大人たちのクリスマスの夢をこわさないようにねって。
ハルくんがうんと大きく一回頷いてサンタさんと小指同士重ねたら、頭を撫でてもらって虹色のセロファンに包んだ大きなキャンディを手のひらに乗せてもらったよ。
そのあと、お父さんがそうっとハルくんの枕元にやって来たときにはハルくんはもうすやすや眠りについてクリスマスの夢を見ていたよ。
ハルくんは来年のクリスマスもサンタさんがいるって信じてくれているだろうか。
そして包みを持ってまたこんな風に小躍りしてくれるだろうか。
お父さんもお母さんも同じことを思ったけれどお互い口には出さなかった。
ハルくんの口がぴちゃっと鳴った。
お父さんもお母さんもハルくんの片頬が膨らんでいることに気付かない。
雪が降り始めた。