駆け出し百人一首(4)君待つと我が恋ひ居れば我が宿の簾動かし秋の風吹く(額田王)

君(きみ)待(ま)つと我(あ)が恋(こ)ひ居(を)れば我(わ)が宿(やど)の簾(すだれ)動(うご)かし秋(あき)の風(かぜ)吹(ふ)く

万葉集 四・488番、八・1606番

訳:あなたを恋しく思いながら、訪れを待っていると、我が家の簾が動きました。お越しかと浮き立ちましたが、秋風が吹いただけでした。

I was waiting for you.
Then, a bamboo blind moved slightly.
That was just autumn wind, not you.


詞書は「額田王、近江天皇を思(しの)ひて作る歌」。人を待っていると、物音や気配に敏感になります。それが愛する人ならなおさら。
かすかに簾が動いたことに気付き、期待を込めて振り返った瞬間。
それがただの風だと気付いて、切なくため息を吐く瞬間。
それらが冷凍保存されたかのような歌。1350年の時を超えて、ありありと情景が浮かび、共感を誘われる恋の歌です。


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