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長女が作る甘くほろ苦いチョコブラウニーが教えてくれた大切なこと


バレンタイン翌日のこと。

学校から帰ってきた高1長女。クローゼットの中のお菓子ボックスをゴソゴソし始めた。

あれっ…ない…ない!オレオだれか食べた?

あ!これやばい。ちょっと怒ってる。

即座に反応する小1三女。
「食べたよー、パパがいいよって言ったもん」
鋭いジャブを出し軽やかなフットワークで逃げる見事なヒット&アウェイ。

「ごめん、食べちゃったんだ」

「3パックとも?」

「うん、3パックとも……」

三女が小学校から帰り、オレオを見つけ「食べていい?」と聞いてきたので、何も考えず「いいよー」と答えてしまった。

しかもオレオの最高のパートナーの牛乳まで用意したら私も食べたくなっちゃって、二人でムシャムシャ一気に3パック食べたなんて口が裂けてもよう言わん。

ケーキ作ろうと思ってたのに…勝手に食べないでよね。バレンタインあげようと思ってたのに……

顔を紅潮させながら、長女は足早に自分の部屋に行ってしまった。

………やらかしちまった。

🍫    🍫    🍫   


ちょっと時間を遡り、バレンタイン当日。


長女がキングサイズのベットみたいに大きなふかふかのチョコ生地の上に、オレオを綺麗に並べていた。

「気合入ってるね。男の子にあげるの?」
ウケル、友達だよー!」
ホッとした自分にちょっとウケル

仕上げに5cm角に切ったチョコブラウニーに目玉の形をしたチョコをのせ、まっくろくろすけみたいに可愛いオレオチョコブラウニーが完成。

おこぼれを期待したが、一個ずつ丁寧にラッピングされた大量のブラウニーはチョコと同じような色をしたスクールバックにすべて吸い込まれていった。

🍫    🍫    🍫  

私の分まで作ってくれようとしてたのか。

1時間ほどして何事もなかったかのように長女がリビングに戻ってきた。その足はまっすぐにキッチンへ。そして冷蔵庫を開けて背を向けたまま…

仕方ないな。オレオなしで作ってあげるよ

切り替えの早さは奥さん譲り。さすが長女。
心の中で万歳三唱。

しかし冷蔵庫を開けたまま固まっている。

何か様子がおかしい……。

「だ•れ•か……!板チョコ食べたぁっ?」


背を向けたまま怒声がリビングに響く。


そういえば三女が夕方、イスの上に立って冷蔵庫の中をガサガサやって「やった!チョコ見っけ。この残ってる板チョコ食べていい?」と聞いてきた。

お土産でもらったものと勘違いして「いいよー食べてー」と、これも軽〜くOKしちまった!

三女がさっきよりさらに速いジャブを繰り出す。
「食べたよ、パパがいいって言ったよー」

「ごめん!ほんとごめん、チョコとオレオ買いにいく。お土産でもらったやつだと勘違いしてた。今からすぐ買いにいくよ」

もういい!チョコまで勝手に食べるなんて考えられない!もう絶対作らない!

奥さんもただならぬ雰囲気を察し、必死でフォローしてくれたが、時すでに遅し。ガンガン足音を響かせながらまた部屋へ戻ってしまった。

板チョコはあと2枚冷蔵庫に残っていたが、使う予定のチョコまで食べてしまったことや私のよくわからない言い訳にもきっと失望したのだろう。

三女に「少しは一緒に謝ろうよ」と言っても、パパがいいって言ったの一点張り。確かにそうだけども。。

中2次女は「板チョコ食べてもいいかな?」と冷蔵庫に寂しく取り残されたチョコを狙っている。私も含めハイエナ一家か。

こういう類の食った、食わないのトラブルは大家族ではしょっちゅうある事だが、ここまで怒らせてしまったのは初めてだった。

翌朝、ちょうど子どもたちの小遣い支給日だったため、小遣いと一緒に一筆添えた。


昨日はオレオとか食べちゃってほんとにごめん。
また今度スタバでもご馳走するから許してください。 パパより

リアクションはなかったが、翌日はいつも通りの長女に戻っていた。

それからもずっとこの件は、私の心の片隅にかさぶたのようにくっついていた。スタバをプレゼントすることも出来ず、気づけばもう3月になっていた。

仕事を終え、家へ帰ると、長女が冷蔵庫の中のタッパを次から次へとキッチンに並べだした。何が起きた?タッパの奥に隠していたお皿を抱え、そぉーっと私の前に差し出した。


これ、あげるよ…バレンタイン


幻のチョコブラウニー

心躍るなんてレベルじゃなくて、大きな打ち上げ花火が上がったかのようにぱぁーっと視界が明るくなった。お雛さまも祝福してくれているように見えた。

スタバもご馳走してもらえるし、お返しも楽しみにしてるねあっ、あとNIKEのエアフォースワン欲しいんだよね

前に断ったスニーカーまでおねだりしてくるあたり、さすが長女だ。それにしても冷蔵庫の板チョコを次女に食べさせなくて本当に良かった。

家族みんなで1個ずついただいたが、中1長男にはお返しの確約をとってから、ワンちゃんのように「よしッ!」と言って食べさせていた。

ブラウニーは程よい甘さでなめらかで上品な口触りだった。

「嬉しいよ。最高に旨い、ありがとう」

感謝の言葉を伝えた後、盛大に上がった打ち上げ花火はいつのまにか線香花火に…。色んな想いをすべて飲みこんで、またケーキを作ってくれた長女。何もできずイモイモしていた私。

今さらだけど、長女だけではなく家族に自分からしっかり想いを言葉に出して伝えていきたい。そして与えられることを期待せず、与え続けることができる親でありたい。

甘い甘いチョコブラウニーのほろ苦さを感じながらそんなことを考え、自分と約束をした。


まずはホワイトデーに精一杯の感謝の気持ちを伝えたい。スニーカーは買わんけど。

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