見出し画像

回廊



視界の隅で贈る
赤い気配に
映した、夏の葉が満ちてゆく
ガラスの回廊と蜃気楼、おなじ時を
生きていたことでもあるみたいに
息を潜めて、響かせていた
蜜蜂の
翅音が消えた空、
飛び交う軌道を
走るイバラが悼む造花の棘、
青い鱗粉が光るワンピースを選んで
旅立つ雨の日、バスターミナルを
行き交う人影の中で
愛されるために避けてきた波紋を
壁にもたれて待っていた、燃えて刻まれた
動線の奥、
誰の隣にも座らなかった私を今日、連れて
巡る、窓の向こうからも
降り注ぐ、生きた
雨音に触れているとき
言葉の
みなもへ昇ってゆく かわいいあぶく、薔薇の
庭へ続いている呼吸の、一瞬を
切り取る感性はガラスを伝って、消えた四月の
空を見上げるように
見惚れていることも
 
知らずに光る






この記事が参加している募集

眠れない夜に

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?