上川陽子外相の”納得力”の遅さが岸田文雄首相の足を引っ張る~パレスチナ危機対応のドタバタの背後に起きていること
◆「遅い」「緩い」で非難轟々、「ハマス攻撃」での岸田首相X(旧ツイッター)発信
少し遡った話だが、10月7日から起きたハマスによるガザ暫定自治区からのイスラエル攻撃、市民襲撃と拉致に対する岸田文雄首相のX(旧ツイッター)発信が非難轟々の事態となった。問題となった岸田氏のX発信(10月8日 午後3時58分)の文面は次のようなもので、英文でも同様のものがほぼ同時発信されている。
「昨日、ハマス等パレスチナ武装勢力が、ガザからイスラエルを攻撃しました。罪のない一般市民に多大な被害が出ており、我が国は、これを強く非難します。…御遺族に対し哀悼の意を表し、負傷者の方々に心からお見舞い申し上げます」
(参考)X発信 「昨日、ハマス等パレスチナ武装勢力が、ガザからイスラエルを攻撃…」2023/10/8 15:58 岸田文雄 @kishida230
https://x.com/kishida230/status/1710912480141328752?s=46&t=gWqqmw1uVUwEeeuu7kV_vA
さらにこれでは言い足りないと思ったのか、続けて次のようにも発信した。
「多くの方々が誘拐されたと報じられており、これを強く非難するとともに、早期解放を強く求めます。…また、ガザ地区においても多数の死傷者が出ていることを深刻に憂慮しており、全ての当事者に最大限の自制を求めます」
(参考)X発信 「多くの方々が誘拐されたと報じられており、これを強く非難…」2023/10/8 15:58 岸田文雄 @kishida230
https://x.com/kishida230/status/1710912481848340592?s=46&t=gWqqmw1uVUwEeeuu7kV_vA
この2つの発信に対するリプライが凄まじく、「やっと出したのか、遅い!」というものから、「G20首脳の中でテロ非難をしていないのは岸田だけだ」など政権にはイタい突っ込みが殺到した。
「『全ての当事者最大限の自制を』ではないだろ。ここはパレスチナに抗議だろ。先月末決めた援助もキャンセルだろ。大丈夫か?」
「やっとですか 国内然りやること的外れ、対応は遅く残念」
「なぜこんなにも時間がかかったのか不思議でもあり残念です」
こうしたX発信での最初からのつまづきと共に、イスラエルなどからの在留邦人退避活動のためにチャーターした旅客機に搭乗する人から1人3万円の費用徴収をするといった措置がひんしゅくをかった。
「パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスとイスラエルによる戦闘から現地の日本人を退避させるため、日本政府が手配したドバイまでのチャーター機が『1人3万円』などと報じられ、SNS上で批判や疑問の声が広がっている。…韓国政府はイスラエルから自国民をソウルに避難させた際、同時に51人の日本人も無料で輸送。…この日韓政府の対応の違いもあり、15日には、ネット上で『有料3万円』といった言葉がトレンド入りする事態」
(参考)「イスラエル退避チャーター機”1人3万円”のトンデモ…約1.8億円計上の『邦人保護予算拡充』は何だったのか」2023/10/16 日刊ゲンダイDIGITAL/Yahooニュース
https://news.yahoo.co.jp/articles/1805d5011cf23e0282664446109c4957879db0f8
◆危機管理の最前線で失態を重ねる外務省~原因は新外相の上川陽子氏
首相官邸関係者は、岸田官邸の馬脚をあらわすようなドタバタの事態を嘆いて、こう述べる。
「今回の失態の第一要因は、9月13日の内閣改造で新たに就任した上川陽子外相のもたつきです。外務省は、転変する国際情勢に対応する最前線であり、危機管理の先頭に立つ役割が求められますが、上川氏は次々と起こる緊急を要する事態と必要な対処について、上げられてくる情報や方策についての提案を理解し、納得するまでの時間がかなりかかる。大臣のところで対応策の決裁に時間がかかるので、対応は遅れがちで、しかも十分な省内稟議がかけられずとられる策も不十分になってしまう」
「岸田首相のX発信も、外交マターについては内容を外務省から上げる。世間が『遅い』と怒るほど、出るのが遅れたのも上川大臣がなかなかGoサインを出さなかったからだし、しかも省内の局長レベルで稟議せずに中東アフリカ局だけの検討と起案内容だけで官邸に引き渡したので、内容もテロ非難が抜けたり、その後のイスラエル側による過剰反撃で民間人に大量の犠牲が出ている事態に対応するにも齟齬をきたすことで尾を引いている」
先の岸田首相による内閣改造は、内閣として歴代最多の女性閣僚5人の登用となり、その中でも林芳正氏と代わって外相に就任した上川陽子氏(70)は、かつて法相としてオウム真理教元教祖、麻原彰晃(本名・松本智津夫)死刑囚ら13人の死刑執行命令書に署名するなど胆力があり、「実務能力も高い」と評判の人物だった。しかし、外相就任1か月もしないうちに、問題が続出してきたのだ。
「外務大臣は、他の閣僚と比較して時間的余裕のもてる法務大臣とは違い、超多忙。現在、ウクライナ戦争の日々変わる情勢と国際的なウクライナ支援状況に加えて、ハマスのイスラエル奇襲とレバノンのヒズボラによる攻撃参加、イランその他の緊張状況が生じて、国としての態度表明と共に目の前の危機管理対応としての邦人救出など、『新人大臣だからボチボチ勉強して』なんて悠長なことは言ってられない。しかし、外務省内から聞こえてくるのは、『ともかく大臣が先に進めてくれない』との声だ」(前出の首相官邸関係者)
もともと外務省の対応は、あらゆる面で「これでも独立国の政府機関か?」と思わせるようなものが多かったが、現在の危機管理をめぐる対応は他国と比べてもあまりにお粗末だ。上川新外相は、こうした事態を改善するどころか、ますます悪い方向に向かわせてしまっている。外務省内では、何が起きているのだろうか?
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