〜この記事でわかること〜

「利上げ・利下げ」など、政策金利の変化がなぜ投資家にとって大ニュースなのか、わかる

〜初っ端から結論〜

・利上げは株価下落の引き金となる
・利上げはインフレを抑制する効果がある

＊本編＊

2024年3月19日、日本でも利上げが決定されトップニュースになっていますね。
消費者にとっては定期預金の金利が上がって嬉しいとか
変動型の住宅ローンを組んでいる人は苦しいとか
銀行から借入をする中小企業も苦しいとか
色々言われていますが、結局私たち投資家にとってはどう重要なのでしょうか？

今回は、投資家目線で「利上げ」を紐解いていきましょう。

そもそも「利上げ」ってなに？

「利上げ」とはずばり、中央銀行が政策金利を引き上げることを指します。
中央銀行とは、日本で言う日本銀行のことですね。アメリカではFederal Reserve Board 連邦準備理事会（略してFRB）のこと。

中央銀行は、民間の銀行や証券会社などの金融機関にお金を貸す役割を果たしています。

そして銀行や証券会社は、企業などに利子を付けて投資することで、そのリターンを得ています。企業は借りたお金でビジネスに投資し収益を上げます。

中央銀行の政策金利が低いと、金融機関は返済する利息が少なくて済むため、より気軽に中央銀行から借金ができるようになります。
そして金融機関は、企業に対してお金を貸す際の利息を低く設定でき、企業も気軽に借入できる。結果、企業が積極的にビジネスに投資を行うことで経済が活性化します。

ですが、中央銀行が政策金利を引き上げるとどうなるでしょうか？
政策金利とは、金融機関に対して行う短期金利のこと。
つまり銀行などの金融機関が中央銀行からお金を借りた際、返済する利息が上がります。
結果、企業が金融機関から借りる際の利息も高くなってしまい、企業のビジネス投資が停滞します。

企業の将来性に対して投資している投資家にとっては、企業がどんどんお金を借りて次なるビジネスに投資している方が好都合です。

ですが、中央銀行が政策金利を上げてしまうと、企業は金融機関から気軽にお金を借りることができなくなるため、企業のビジネスが停滞するきっかけとなり、それを恐れた投資家は売りを意識する。
その結果、株価が下落する原因となります。

なぜ、わざわざ利上げをするのか

経済が停滞するような利上げを、中央銀行はなぜ行うのでしょうか？
理由の1つはインフレ(物価上昇)を抑えるためです。
2020年2月のロシアによるウクライナ侵攻をきっかけに、ロシアとの国交が絶たれ、原油をはじめあらゆるモノの値段が高騰しました。

ですが、金利を上げ、企業の支出（使うお金の量）を減らすことによって、多くの物品への需要を下げることができます。特に高額なモノ・サービスは売れなくなるでしょう。
その結果、あらゆるモノ・サービスの価格が下がり、インフレ率が低下します。

もう一つの理由は、通貨価値の調整です。
過去3年間のインフレで、日本円は大きく円安に傾いてしまいました。

ですが、利上げをすることによって通貨の金利が上昇し、その通貨の需要が高まります。（日本が利上げした場合、日本円を買っておけば、その際につく利息が多くなるということ）
結果、日本円の需要が高まり価値が上がることによって、円高につながります。

また、通貨価値が安定すると輸入品の価格が低くなり、インフレ率のさらなる低下にもつながります。
海外旅行に行くのがおっくうじゃなくなる日は近いかも！しれない、、、

投資家にとっては「利上げ」＝悪いこと？

企業のビジネスへの投資が減るということは、投資家にとっては悪いニュースのように聞こえます。実際に金利が上がると、株価は鈍化あるいは下落に転じることの方が多いです。

ですが、利上げは投資家にとって悪いことばかりでもありません。
2023年のはじめから日経225、並びにS&P500も突き抜ける勢いで上昇してきました。

ですが投資が加熱しすぎ、株価が実態にそぐわないくらい高騰すると「バブル」の状態となってしまいます。そして、バブルはいずれ必ず弾けます。
ですので、私たち投資家にとっては、急激に上がりすぎることも良くないのです。

投資家の理想で言えば、加熱しすぎないように「ふんわりと落ち着いてほしい」というのが実情です。
アメリカのニュースで「ソフトランディング(柔らかな着地)」という言葉がしばしば強調されるのは、そのためです。

今回の日銀の決定も、マイナス金利を撤回するとはいえおそらく金利はそこまで高くならないでしょう。高くても0.25%とかだろうと思います。海外投資家からの国内企業への投資も抑制したくないと思いますので、ソフトランディングをきっと狙うと思います。

過去の利上げの際、株価はどうなった？

では最後に、過去に利上げが行われた際、経済はどうなったのか見てみましょう。日本は滅多に金利が変わらないので、アメリカを例にあげます。

直近でとてもわかりやすいのは2つ。
2020年の3月に行われた150ポイントの大幅利下げ、と
2022年の3月から12月にかけての合計425ポイントに及ぶ断続的な大幅利上げです。(0.25%＝25ポイントと言います)

2020年の年初からコロナウイルスがアメリカでも本格化。
株価も大幅に下落し、多くの企業が危機に陥りました。
そのため2020年3月、FRBは合計150ポイントの歴史上稀に見る大幅利下げを行い、金利を実質ゼロ(0~0.25%)に。コロナ救済特需で2020〜2022年は大幅に株価が伸びました。

一方2022年、ロシアによるウクライナ侵攻が勃発。
国交が絶たれたことによって、あらゆる物価が上昇。インフレを抑えるためにFRBは急激な利上げを実施した結果、コロナ特需の反動もあり株価は大きく下落しました。

2023年は、激しかった金利の締め付けが緩みはじめた事によって、株価は急速に回復しています。

もう少し前も見てみましょう。

リーマンショックのあった2008年には200ポイントの大幅利下げがあり、以降7年近く金利実質ゼロの状態が続きました。
その間株価は大幅に上昇しています。

そして、2015年に入ると7年ぶりの利上げが発表。
投資家心理を反映するように少しだけ株価は停滞しますが、見事ソフトランディングし、その後はコロナパンデミックまで上昇を続けました。

過去15年間ほどを見るだけでも、パターンが少し分かってきたのではないでしょうか？

株価が高騰しすぎると、利上げを行い調整する。
株価が暴落すると、救済措置として利下げを行う。
インフレになりすぎると、利上げを行い物価を抑える。
デフレになりすぎると、利下げを行い物価を回復させる。

このように、中央銀行は経済危機によって暴落したり暴騰する経済を、金利でもってコントロールしているのです。

これからどうなる？

2022年以降利上げを続けるFRBですが、2024年は果たしてどうなるでしょうか？2024年の3月現在、2006年以来となる5.25%の高金利を維持しています。
久しぶりの利下げが噂されている一方、FRB議長のパウエルは「2024年の利下げはデマだ」と否定もしています。

個人的には、2024年の利下げは正直ないと思います。
インフレ率は2022年当初よりは下がってきたとはいえ、未だ2020年以前と比べれば、決して低くはありません。

さらに、直近1年3ヶ月ほど株価が高騰しすぎています。
このまま利下げを行えば、ちょっとしたバブルに突入しかねません。そのため、金利は維持か少し上げるくらいが丁度良いと思います。

流石に2000年のドットコムバブル時代の6%まで上げる必要は無いと思いますので、現在の＋0.25%である5.5%あたりを維持する2024年になるのではないでしょうか？

今後の政策金利に関するニュースから目が離せません。

いかがでしたか？
日本でも大きな話題となっている「利上げ」、是非以下のポイントを押さえておきましょう！

・利上げは株価下落の引き金となる
・利上げはインフレを抑制する効果がある

〜偉人からの名言〜

"Interest rates are to asset prices what gravity is to the apple.
When there are low interest rates, there is a very low gravitational pull on asset prices."

資産にとっての金利は、りんごにとっての重力のようなモノだ。
金利が低ければ、資産価値を下に引っ張る重力も小さくなる。−ウォーレン・バフェット−