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寺子屋でやった「たとえ話100本ノック」が、実にすばらしい企画だった(自画自賛)。

先日、おとなの寺子屋〜文章教室〜では、「たとえ話・比喩」をテーマに勉強会を行いました。

寺子屋としては初めての企画だったのですが、これがもう、とてもすばらしく、手応えを感じたので、たまらずお伝えします!!

その日の寺子屋は、いつものように言葉を使ったゲームから始めました。好きなんです、言葉ゲーム。今回は「謎かけ」

AとかけてBと解く。その心は? C

っていうあれです。ねづっちです。

これはあるコツをつかめば誰でもできるんですが、まずはそのコツをメンバーに伝えます。ヒントは同音異義語と語彙力です。

このコツをつかむと誰でも簡単にねづっちになれるんです。ほんとです。参加した方もみなさん、すぐにできるようになっていました。

僕は謎かけが大好きで、よく人前でも披露するんですが、反応としては「おお・・・」って感じです。へへ、って感心されたり、あはは、と小さい笑いが起きることはあっても、爆笑が起きたり、尊敬されたりすることはありません。どちらかというと、ダジャレを披露したときの空気に似ています。

で。

なんで最初に謎かけをやったかというと、これが「比喩・たとえ話」に役立つ考え方だからなんです。ちゃんとそのへんは計算してプログラムを組んでます(ほんとか?)。

謎かけを終えて、勉強会はいよいよ、比喩・たとえ話について学ぶステージに入っていきます。

比喩・たとえ、というのは、

AはまるでBのようだった

ですが、これは何を言っているかというと「AとBには共通点がある」ということなんですね。

Aの中のある要素はBと共通している。だから、Aの様子はまるでBのようだった。

Aはとても~~だ(形容詞、形容動詞)。その様子はまるでBと同じだ。

で、その形容詞を言わずに表現する(粋に言いたい、時間を短くしたい、野暮に形容したくないなどなど)のが、AはBのようだった、ということ。これが比喩です。

これって謎かけに似てるんです。

AとBの間にはCという共通する要素(形容)がある。

AとかけてBと解く。その心はC。

AとBは遠すぎてもよくないし、近すぎてもつまらない。絶妙な距離感が必要。それは謎かけも比喩も同じです。

たとえば、ということで、僕が出した例がこちらです。

「君のことを好きな感情は、あたたかで、かわいらしくて、静かだけど、キュートで、食べちゃいたいような、小動物を見るときのような感情だ。それはまるで春に出会った小熊のようだ」

→これを比喩で言うと、

君のことは春の熊ぐらい好きだ。(村上春樹の伝説の比喩ですね)

次。

「その別れの切り出し方は、冷たくて、事務的で、当然の権利を行使しているようで、拒否や交渉の余地がなく、すごく冷酷だった。それはまるで、請求書を出すようだった」

→これを比喩で言うと、

彼はまるで請求書を出すように別れを切り出した。(これは五百田オリジナル)

つまり、比喩を使うにはいきなり「AはBのようだ」とするのではなく、「Aはどういう状態か」を考える、できれば言葉にする。で、その様子から連想されるのは何か、という発想でBを考える。ということです。

さて。比喩の仕組みがわかったところで、実地訓練です。たとえ話100本ノックの始まりです。これも、ゲーム形式で進めます。まず出題者をひとり決めます。

・出題者はお題を出す(最近あったこと・考えていること)
・それを自分の言葉でなんとか形容する(ああだこうだ、こんなだった、ああんなだった。こういう経緯がある、うんぬん)

で、他のメンバーは、

・それを表現できる上手なたとえを考えて発表する
・出題者が、どれがいちばん自分のお題をうまくたとえられているかを決める。

という仕組みです。

これがまあ、ほんとにうまくいったんです。まったくの初めて企画だったのですが、みんなうまくて。上手な比喩がたくさん出てきて。

寺子屋のみなさん、すごいんです。それぞれの個性・味も出るし。語彙やセンスや表現も鍛えられる。短いワードを考えるだけなので、短時間で楽しめる。まるで俳句のようです。

というわけで、以下が、当日行われたノックの模様です! しかとご覧あれ。

出題者:「最近、ものすごく本を読んでる。本を書く仕事をしているので、ちゃんと読まないとな、と思って。週に1冊は読むと決めていて、モリモリと読んでる。さあみなさん、僕のこの状態を例えてください」

回答:(★が出題者が選んだ優勝回答)
昭和の下請け鉱山労働者のように。
★オホーツク海でカニ缶詰めをする漁夫のように。
まるでめちゃめちゃお腹を空かせた子犬のように。
再び目標を見つけたアスリートのように。
回し車のハムスターのように。
最後の受験と決めた浪人生のように。
砂漠の中で水を求めるように。
大人の塗り絵のように。
大雪崩に埋もれるように。

出題者:「娘の入学式に参列して変な気持ちになった。この子が赤ちゃんのころを思い出して懐かしい気持ちになったり、よくここまで育ったなあと嬉しい気持ちになったり、子ども時代が終わっていくなあとさみしい気持ちになったり。複雑で、混ざり合ってる。なんなんでしょう、この気持ち。さあみなさん、私の気持ちを例えてください」

回答:(★が出題者が選んだ優勝回答)
「もう食べられないよ」と寝言を言っているような。
いい夢を見てたら寝過ごしてしまったような。
儚い桜のような。
きれいに仕上がったネイルを見るような気持ち。
映画の途中で一時停止ボタンを押すような。
書きかけのラブレターを最初から読み返すような気持ち。
彼女はまるで自分の卒業式のような気持ちで、女子高生になった娘を見つめた。
★さっきまで見ていた夢を、なんとか忘れないように懸命になるかのような焦り。
天から降りてくる細い細い糸を手繰り寄せるような気持ちで。
サザエさんを見終わったような気持ち。
好きな子と雨宿りをしていて雨が上がりかけているのをみる気持ち。
曇りガラスの先に虹を探すような。
娘が小さいころの記憶は桜の花が舞い散るように。
入学式の娘は新緑まばゆい若木のように。
彼女は初めて卵焼きを作った女の子のような気持ちで。
薄皮に触れるような気持ち。

出題者:「1年間お試しで同棲している彼とのリミットが近づいている。これが終わったら、結婚かお別れか決めなくちゃいけない。焦るような、どきどきするような、楽しみなような、こわいような。さあみなさん、私の気持ちを例えてください」

回答:(★が出題者が選んだ優勝回答)
・入学試験後に北野天満宮に向かう受験生のような気持ちで
・明日が賞味期限のまんじゅうを手に取ってたたずんでいるような
・彼女は、彼の顔がおみくじであればいいのにと思っている
・★ミステリー小説の最後の1ページをめくるような気持ち
・隕石の落下を待つような
・彼女は、彼の賞味期限を見定めている。
・順番待ちがたくさんいるのに、バンジージャンプできずに、たちすくんでいるかのような気持ちで
・人間ドックで「胃に影がある」と言われたかのような
・今こそその時さぁ…と、…を打つような気持ち
・監督室に呼ばれた2軍選手のような
・ソチオリンピックで演技に向かう直前の羽生結弦のような気持ちで、
・明日は運動会! 降水確率は30%! どうなの? やるの? やらないの??

どうです?

すごくないですか?

まず、やっぱり「見たことないことばの比喩」はいいですよね。新しいし、ぐっとくる。

それに比べて「どこかで見たような比喩」は少し陳腐な気がする。

でも、目新しければいいかというとそうではなくて、内容をうまく表していない比喩はただの言葉遊びになってしまうし、ベタな比喩でもうまく気持ちを捉えている場合もある。

AとBの絶妙な距離が大事。

しかも、どれが正しいとか、どれが美しいとかではなく、あくまで、お遊びとしてゲームとして、出題者が「いちばん自分としてしっくりくるのはこれだ」と決めるのも、フェアでいいルールだよなあ、思いました。

自分の気持ち・状況を言葉で話す

それを他の人が聞き、新たな言葉に翻訳する

しっくりきて、納得して、発見がある

これはもう、カウンセリングです。とても和やかで温かく、それでいて知的で緊張感もある、言葉と表現のバトル空間でした。

ゲームのようで創作でもある、「たとえ話100本ノック」。またぜひやってみようと思うので、その時は遊びに来てくださいね。

さて。次回の寺子屋は、また趣向をガラッと変えて、「54字の物語」をみんなで書いてみようと思います。詳細はこちら。5月16日(日)19時〜です。

寺子屋メンバーの方以外にも開かれているオープンワークショップですので、ぜひ気軽に遊びに来てください!


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