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#272 コンピテンシーにおける定性と定量の境目を理解すること

 私たちがより深いものごとを学ぶには大きく二つの要素が必要となります。1つ目は知識・技能、もう一つは思考・判断です。前者は定量的なもので、客観的データとして比較的判断しやすい。しかし後者は定性的。そこに客観性が伴わない分、その実態自体が曖昧であり、だかこそどのように育んでいくかもまた難しい。

 思考・判断に関連する力はコンピテンシー(competency)と呼ばれ、学校における「学び」の中でも徐々に重要視されつつある。しかしながら、前述したように、それらの資質・能力は定性的なものなので、現行のテストなどではなかなかその客観性を担保することができません。

 そんな中、JTBとIGSが教育活動測定システム、『J”s Grow』を生み出したという記事を見つけました。

 JTBとIGSが知見と技術を掛け合わせて開発した『J”s Grow』では教育活動を約150の構成要素(誰と、どのような地域・場所で、どのようなテーマで、どのような活動を行ったのかなど)に分解して構造化し、AIを用いて生徒のコンピテンシーを科学的に測定する独自の技術を基盤に、教育活動の効果を定量化するオリジナルのシステムであるとのこと。

 今までは私たちが「なんとなく」捉えてきた資質・能力が「客観的」に数値化されることにより、自分のcompetencyを伸ばすために必要な要素を児童・生徒や教員が把握しやすくなる。主観による「なんとなく」は時として非常に危険であり、そこに技術革新がある程度の客観性を担保してくれるならば、それは非常に良いことだと考えています。

 一方、ある一定の基準「のみ」で、competencyを定義することもまた危険であると言うこと。例えば「英語能力」であっても、大学入試問題、英検、TOEFL、Ieltsなど、様々な基準が存在するものの何を持って客観性があるかと言われれば、そこには曖昧性が残る。competencyが「定性的」なものであることを念頭におかなければ、結局、その本質性を見失い、数字ゲームの中に取り込まれてしまいます。また数値化することで、その人の資質・能力が「数値化」されてしまい、結果自身の「自己肯定感」に大きな影響を及ぼす懸念もまた存在すると言えるでしょう。

 技術革新を本当の意味で役立てるためには、技術によって人間が翻弄されてはいけないことを肝に銘じなければならないのです。


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