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#197 個別学習と一斉授業のバランスが大事

私が教員時代、定期考査ごとに、その結果を常に分析していました。

テストは学習者だけではなく、授業者にとっても大きなフィードバック。

自分自身の展開する授業が、学習者の教科・科目の知識・技能・思考の獲得にどれだけ効果的になっているかを判断する大切な材料になります。

テスト結果から数多くのフィードバックを得ることができますが、私個人として非常に気にしていた要素の1つに「得点分布」があります。

下の定期考査分布AとBのグラフを一例に見てみましょう。


定期考査分布A
定期考査分布B


グラフで示したクラスAとクラスBの得点分布を見れば、平均点が似たようなテストでも、その内容は大きく異なることが分かります。

 クラスAのような集団であれば、平均点の得点層に最も効果のある学習レベルを設定しつつ、難易度を適度に上下させることで、ほぼ全ての児童・生徒の学びに適切な授業を展開することができます。苦手な児童・生徒の数も少ないので、個別対応でフォローアップを図ることもできるでしょう。
 一方、クラスBのような集団の場合、学習レベルの設定は難しくなります。得意な層に合わせると苦手な層には難しすぎ、苦手な層に合わせると得意な層には簡単すぎてしまいます。どちらかの層にとって「適切な困難」を伴う学習レベルにならないのです。平均点の層に合わせてレベルを設定したとしても、その層の人数は少ないので、学習効果は非常に中途半端になってしまいます。

私は私立の中高一貫で勤務していましたから、入学段階である程度学力が選別された生徒が入学します。それでも授業を上手に展開できなければクラスBのような状態になり、いわゆる「一斉授業」はほとんど機能しなくなります。

いわんや、公立小学校・中学校では学力の差は私立小中の比ではありません。
 

多様化する社会の中で、子どもたちの「学び」の段階も幅広くなっています。

記事の中で藤原和博氏は

先生が黒板と教科書で生徒に一斉に教えるのは、20年前からすでに無理があったのだ。
 しかも、子どもたちの学力は「普通の子」が7割いるようなひと山型ではなく、「低学力で落ちこぼれちゃった子」と「(塾に通っていて)もうわかっちゃってる吹きこぼれの子」が激しく分かれるフタコブラクダ型になっている。真ん中の普通の子に向けた「一斉授業」はなおさら意味をなさないから、授業がウソくさい!

と述べています。

大切なのは「一斉授業」の中でいかに個別学習を取れるかだと個人的には思っています。
一斉授業は、教科・科目の知識を伝える意味では効果的である一方、伝えた知識の処理能力は児童・生徒の「学び」の段階に依存します。

公教育のその理念は、家庭環境を越えて全ての児童・生徒の「学び」を担保すること

にありますから、ある程度の人数を受け入れることを前提に展開する必要があります。

その中で、学びの1〜10の全てを、個別的に行うことは難しいですし、個別学習を推奨しすぎると、結果協働的な学びという観点を蔑ろにすることにも繋がりかねません。

ある集団の中で、一斉に学ぶ時間、お互いに学ぶ時間、個別的に学ぶ時間をバランスよく取り入れ授業を展開することが大切なのです。


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