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#275 長い人生の「学び」を支えるのは、自立的な学習方法

 世界でも有数の長寿国である日本。厚生労働省の発表によれば、2060 年には男性が 84.19歳、女性が 90.93歳 となることが予想されていますし、医療の革新が起きれば、平均寿命はさらに伸びる可能性も十分にあります。

 「学び」は私たちの人生と共にあります。私たちの寿命が長くなればなるほど、私たちが学ぶべきことは増えていきます。大学卒業したとしても若干齢22歳。人生100年時代が目前に迫る中、学校教育で学んだことなど、人生の学びのほんの一部にしか過ぎなくなるのです。

 ロンドン・ビジネス・スクール経営学教授のリンダ・グラットン氏らが著書『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)』で提唱した「100年時代の人生戦略」では、今の高校生の2人に1人は107歳以上まで生きる長寿社会となり、働く時間が長期化し、20代で得た知識やスキルは役に立たなくなるかもしれないし、技術進歩や社会の変化に対応するため、画一的な生き方でなく多様な生き方が求められると述べられています。

文部科学省で2008年、2017年の学習指導要領改訂に携わり、「高大接続システム改革」などさまざまな教育改革を推進してきた、文化庁次長の合田哲雄氏へのインタビュー記事を見つけました。

 合田氏は人生100年時代に大切なことは「アンラーン」と「デマンドサイド」だと述べています。

 前者はすでに持っている知識や価値観などを破棄することで、思考をリセットさせる学習方法のこと。時代の変化と共に私たちが過去に学んできたことは変容するし、「当たり前」が当たり前ではなくなる。自分自身の「変化」を肯定的に捉える力と言い換えることができるかもしれない。

 後者は「需要(デマンド)側(サイド)」の視点、つまり「児童・生徒の側の視点」の重要性です。今までの学校はどうしても「供給(サプライ)側(サイド)」、つまり教員側の視点が主でした。教員が児童・生徒に何を・どのように供給するのかが、学校教育における起点になっていました。一方、「学校生活における主役は児童・生徒」であるという考えは、つまるところ、その学びを受ける「デマンドサイドに立つ」ことと同義であると言えます。

 学校教育の中で大切な感覚は「学びの自立支援」であると言えます。前述したように寿命が長くなればなるほど、私たちが「学ぶべき」ものごとは増えていきます。人生で学ぶべきこと全てを学校教育の中で完結できるほど、人生は甘くありません。一方、いかなる事柄を学ぼうとも、その本質は一緒である。そうであるならば、私たちはなぜ学び、どのように学び、その結果私たちは何を手に入れることができるのか。それらの感覚を獲得すれば、私たちがどのような道に進もうとも、どのような時代がきたとしても、「学び」を私たちの側に置き続けることができるのです。

合田氏が言及した「アンラーン」も「デマンドサイド」も、児童・生徒が自立的学習者になる支援を学校が行うための要素なのだと思います。


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