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芸大卒生が考える「漆工芸品が売れない理由」・後編

 漆工芸が生きていくにはどうしたらよいか。
 まずは、私が調べた中で現在行われている方策をざっと上げてみたい。
 
・漆器のレンタル
・海外進出
・金継ぎ講座
・ユーチューブでの制作動画
・子ども漆講座
etc…
 
 これだけやっても、漆器は伸びない。
 漆器を無くしたくないという思いを持った人々はいるのに、どうして?

しっきって、なんだっけ


 まず、漆器を愛する人に断っておきたいことがある。
 一般人に「漆器」と言っても、まず「漆器」が何か知らない人の方が多い、ということである。
 本当の話だ。
 漆工芸品で今も残っているものは、日本の伝統的な年中行事に関わりが深いように思う。
 お食い初めの漆器、正月のお屠蘇用の椀やお重、等々…
 本来はそういう文化の中で「日本のモノの良さ」を培ってきた。
 しかし、今は年中行事さえ馴染みが無くなっている。
 「漆器」や「漆」と言われても、分からないのである。
 そんな人々に「”漆器”ってこんな素晴らしいよ」「”漆”を知ろう!」と真面目にPRするだけでは、興味を持ってもらえないのである。

 
 

漆へのあこがれ、その根幹


 前提条件に立ち戻りたい。
 現在、生活必需品としての役割が無くなりつつある工芸が、どうして残っているのか。
 それは柳宗悦の民藝運動によるところが大きいのではないだろうか。
 柳の啓蒙活動は、間違いなくこの国に工芸品を残すきっかけを産んだ。
 先の記事で、「問題を解決してくれるものを人々は求める」と言ったが、柳は「日本の手仕事が消えてしまう」という問題提起を発し、人々に「国の文化や事業を残したい(楽しみたい)」という思いを抱かせるに至った。

 柳宗悦が生きていた時代、それは戦後まもない日本である。
 当時はまだ農業も手仕事も地方に生き残っていたものの、柳は日本の近代化の気配を敏感に感じ取り、警鐘を鳴らしていた。
 今の日本が工業やIT産業、サービス業に力を入れているのは、日本が成長におけるスタンダードモデルとしてアメリカを選んだからである。
 そのおかげで私たちは、おおよその人間が土いじりとは無縁であり、天候に関係なく週5日働き、休日には映画を見たり推しのイベントに赴き、思い思いの服を買って、また働くという日々を過ごしている。
 


 ここで強調したいことがもう一つある。
 今でも歴史の教科書に残る民藝運動は、「民藝を見直す」運動であって「民藝品を作る」運動ではないということだ。
 柳は「質の良い民藝品を作った」のではない。「広めた」のだ。
 

 漆工芸品の売れない理由


 では、現代ではどうやって広めればいいのだろうか。
 もちろん、地道なPRも大切だ。
 しかし、現代の人々が信じるのは、数と実績である。
 フォロワーが何人か、再生数がいくらか、年収がいくらで、どんな賞を取ったのか。
 まずはそこに興味を持つ。
 
 有り体に言おう。
 毎日Twitterを更新しているからフォロワーが増えるわけでは無い。
 良い記事をたくさん書くからnoteやサイトを見てもらえるわけでは無い。
 時間や手間をかけたから、人に選んでもらえるわけでは、無いのである。

 「興味を持ってくれる人にだけ知られたらいい」
 「こんなに素晴らしいものなのだから、認めてくれる人が認めてくれたらいい」
 「工芸品に大切なのはそれを使うときの心地であって売れるかどうかが価値なのではなく…」
 などと言っていないだろうか。
 

 私の結論である。

 漆器が売れない理由は、「売れようとしないから」だ。 
 
 だから、今日から売れようとしてほしい。
 貴方の売り物はこんなにも素晴らしく、あなた自身はこんなにも素晴らしいのだと。
 もっと大きな声で言い、しつこく顧客を探してほしい。 
 
 そして、いつか日本人にとって、心から必要なものになりますように。

 
 
 



『終わりに』
 
 思っていたよりも、様々な方に見ていただけてありがたいです。
 不勉強な為、様々な意見あるかと思います。
 自分は漆工芸の界隈の内情に関わったことが無く、また、なんの実績もありません。
 しかし、そんな自分の記事を目に止めていただけたということは、漆の今後を思う方が多いのだと、嬉しく思います。
 ここまで読んでいただきありがとうございました。
 
 今後、勉強の記録を順次noteにまとめていく予定です。
 ご興味ありましたら、読んでいただけましたら幸いです。


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