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SS【荒れる人々は光を求めて】


世の中が不景気になると人々の心も荒むようで、狂ったような行動をする人が増える。

先日ぼくは電車の中で狂った人たちに襲われた。

座席はガラガラだというのに、わざわざぼくの周りを陣取り、いきなり横の男と前に座った男がぼくを押さえつけ、そこへ近くに立っていたもう一人のリーダーらしき男がやってきてぼくの靴を脱がせた。

「何するんですか?」と言うぼくの言葉はまるで聞いていない。

男たちは目が死んでいる。それでも何かが彼らを突き動かすのだろう。

リーダーは指をパキパキ鳴らしたかと思うと、大型の猛禽類のような指で、ぼくの足の裏をゆっくりと押し始めた。

位置をずらしながらぼくの表情を確認しつつ逞しい親指で押してくる。

そのうち「ぐわぁ ぁ ぁ」と悲鳴を上げるぼく。

足の裏に我慢できないくらいの激痛が走った。

押しているのは土踏まずの辺り、胃腸のツボだ。

指を緩めたかと思うとまた押し始め、一回に十秒くらいは続いた。それが十数回。

それが済むとリーダーは、「暴飲暴食に気をつけてください。今回はサービスです」と言って部下たちと共に去っていった。

上着の背中には電話番号と、どこでも出張足つぼマッサージと書かれている。


その日はよく眠れ、翌朝も調子が良かった。

そう言えば最近、マッサージ店が一軒つぶれてたな。

しかし、腕はいいが営業が下手すぎる。

あれでは通り魔と変わらない。


仕事帰りに事務所に立ち寄ったぼくは、嫌いな上司の机に退職届を叩きつけ、「まことに勝手ながら、本日をもって辞めさせていただきます」と言った。


それから数週間後、最近できたばかりの商業施設の一角で、例の通り魔たちと新しい仕事を始めた。

ぼくは予約を受けたりSNSを使って宣伝する役だ。彼らだけでは路頭に迷うのは目に見えている。ぼくはいちからマーケティングを学び、お店のサイトも立ち上げた。

小さな商売ながらも久しぶりにやりがいを感じ始めていた。そして通り魔たちの目にも少しずつ光が戻ってきた。


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