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ロジカル ハピネス マネージメント

異世界転生なろう系になろう。

脳ブーム、エモ・マネージメントシリーズ最終回(?)、アンガーサッドネスに続く第3弾は『ハピネス』です。果たしてハピネスにマネージメント法とかあるのか謎ですが、ハピネスについてロジカルに考えてみたいと思います。

転生したら変なゲームに巻き込まれた件

唐突ですが、ひょんな事から君はうっかりゲームの世界に転生してしまいました。この世界には魔法もループもデスゲームもありません。自由度の高いオープンワールド、流行り風に言えばメタヴァース系世界です。

君が持っているのはアバターと100年という持ち時間のみ。『これらを駆使して、できるだけ多くのハピネスジェムを集める』それがこのゲームの遊び方です。さあ君はどれくらい集められるかな?それでは行ってみよう、ゲームスタート!

ゲーム開始時の君のアバター、容姿、頭脳、環境、ロケーション、すべての初期パラメータは完全ランダムです。ガチャです。リセマラもできません。最初から容姿Lv99、頭脳Lv1みたいなアバターもいれば、その逆もいます。全パラメータMAXなのにバッドイベントで早々にゲームオーバーしちゃうアバターもいます。そもそもフェアじゃありません。でも上手くプレーすれば、もしかしたらアバターの隠しスキルが覚醒発動したり、様々なボーナスイベントも発生するかもしれません。そして誰であってもアバター変更や持ち時間の延長は絶対できません。長〜い目で太極的に見ればある意味フェアと言えなくもないのかも。

どこを目指して、何をどういう順番でこなすか。どの作業にどれだけの時間を配分するか。そもそも何をやればハピネスジェムを獲得できるのか。アバターと100年、どう使うかはプレイヤー次第。

ゲームハック超攻略

そこで最近の子はすぐにハックに走る訳です。最も効率的な攻略法を探して、最短ルートでの最大効果を求める、コスパ最大化の合理思考。それはもはや現代の基本思考で、必ずしも悪い事ではありません。まあ僕も子供の頃は攻略本見てましたし。サービス開始から既に5万年経つこの長寿ゲーム、先行者は色んなTipsを残していますし、それらを学習活用して不要なプロセスをスキップしてしまうのは正しい攻略だと思います。但し、合理だけで必ずしもハピネスジェムがゲットできる訳ではありません。ハピネスジェムはパラメーターではないからです。そしてその発生条件は各アバターによって異なります。なかなかトリッキー。

パラメーター上げはハピネスジェムゲットの手段のひとつですが、目的にはなり得ません。例えば全パラメーターLv1、不細工でアホで貧乏でまさにルーザー丸出しな最弱アバターがいたとしても、本人が超ハッピーならばその人はゲームの勝者です。逆に全パラメーターLv99俺強えーってやってても、ハッピーじゃないならルーザーです。だってそういうゲームなんだから。ステータスばかり追っていると、ハピネスゲットする前に時間切れです。「いいねを貰う方法」とかググってる時点で本末転倒なのです。ハピネスを追求している人に対して、ステータスは後から勝手に着いてくる。順番が逆、ハックすべき場所を間違えてはいけません。

ロジカル ハピネス マネージメント

「ハピネスとは何か」それは人類の永遠のテーマです。数多の賢い人や表現者達が、繰り返しこのテーマに挑戦し続けています。「幸福論」とかでググるだけでも、アランにヒルティにラッセルに、わんさか出て来ます。ニーチェは超人&末人とか言ってますね。そしてそれらは大体似たような結論に帰結します。

更にそういうのも全部飛び越えて、現代科学は身も蓋もないロジックを突きつけます。「幸福とは脳内の化学伝達物質である」と。マトリックスみたいに、人間をカプセルに突っ込んで、頭にケーブルぶっ刺して脳に直接エンドルフィン流し込んでおけば、もうそれだけでハピネスジェムMAXです。ある意味真理ですが、チートなのでたぶんすぐゲームオーバーになっちゃう

とはいえ、「この脳内天然麻薬を大放出させる状況をどうやって作り出すか」という事が、どうやらゲームハック、ロジカルなハピネスマネージメントと言えそうです。それにはまず人間というアバターの特性を知らなければなりません。

人間とかいうちょっと賢い猿は、基本群れで生きる社会生物です。個体差と能力差で互いを補完し合いつつ、群れ全体でひとつの生物としてサバイブする生存戦略です。進化の過程で、そういう風に遺伝子レベルで設計されています。血族としての核家族、それらの集合のローカルコミュニティ、その集合体としての群れ。その中の一個体として上手く機能するよう、群れに貢献する事で報酬系物質が出るようにデザインされているのです。

つまりハピネスの発生条件は「自分のアビリティを発揮して、役に立ち誉めてもらう」こと。所属パーティに「あなたがいてくれて良かった、ありがとう」と言ってもらう事が、幸福物質放出、ハッピネスゲット攻略法という事になります。その条件を満たすために全てのアクションを全集中させれば良い訳です。言い換えれば、幸せになるには他者の存在が必要、ひとりでは幸せになれないという事でもあります。「ビジネスで成功する」とか「恋愛で無双する」などの個人的成果はアドレナリン放出によるエキサイトメントに過ぎず、ハピネスゲットの間接的要因にはなったとしても、直接条件では無いという事です。そしてそれが「たとえ相対的敗者に見えても絶対的勝者になれる」理由でもあります。ハピネスは他者との比較値ではなく、自身における絶対値なのです。

自分を知る。自分の「好き」や「得意」を発見する。それらに関連するパラメーターを強化し、それを活かせるパーティに所属する。そのパーティのために固有スキル発動し、貢献して感謝される。承認欲求&自己肯定問題まで解決で、見事ハピネスジェムゲット。そしてそれを繰り返している内に、気付けばステータスも高まって、背後にはフォロワーができている。まさにハピネスアドバンテージ法。なんだ、結局なろう系になってしまうのか。まあなろう系と言っても、別に世界最強になる必要もなければ、魔王を倒す必要もないので、難易度的には比較的実行しやすいんじゃないでしょうか。

さて、そうこうしている内にも持ち時間は刻々と過ぎていきます。ダラダラ鬱々してる暇なんて無いですよ。Life is too short。ハピネスジェムをたくさんゲットして、クリア時に「あ〜このゲーム超楽しかった〜、神ゲー確定」とか言いながら堂々たるエンディングを迎えたいものです。

タイトル絵回収

今回は転スラのリムル様に挑戦。それにしても異世界転生なろう小説ってもうすっかり一文化として定着しましたよね。僕個人的にはあんまり乗れないんですが、そういうのが受けるっていうのがまた現代の合理社会なんでしょうね。無駄やノイズを全部省いて、万能主人公がただひたすら無双する。挫折とか苦悩とかはサブキャラに任せて、主人公がやる事は基本全部成功して上手くいく。まあ極めて純粋な麻薬的現実逃避ですよね。マトリックスチートに近いご都合主義。でも創作物としてはひとつの方向性です。しかしその中でもやっぱりスキルアップやレベルアップ、仲間ゲット、最後に感謝される、という報酬系ポイントは抑えてあって、擬似的ハピネスで気持ちよくなれるように作られています。ドラクエに始まりネトゲやらエロゲやらアニメやらアイドルやら、サブカルの叡智をガンガン飲み込みつつ辿り着いたゲーミフィケーションの極地ですね。

ただ今回ロジカル・エモシリーズ書きながら色々考えたんですが、ハピネスばっかりじゃなく、怯えて怒ったり、つまづいて悲しんだり、やっぱそういうのも全部ひっくるめて人間なんだよなあと。ただひたすら甘いだけじゃなく、様々の感情の組み合わせで生まれる味わいというか。例えば脳のハピネス報酬系のもうひとつの要素として「期待感」というものがあります。それは不安と好奇心が合わさった時に生まれます。これも遺伝子レベルでデザインされているもので、新しい何かに出会った時に発生するワクワクハピネスです。悲しみを共有共感できた時のしみじみハピネスだってあります。そう考えると、一見ネガティブに思える感情だって無駄なものなんて無いんですよね。天然モノの脳内麻薬の味わい深さは、現実逃避の擬似麻薬では絶対に真似できないものだと思うんです。

ステータス重視の相対思考で生きてると「ガチャ失敗の不運な辛い現実から逃避したい」みたいな気持ちになるのもわからんでもないですが、ハピネス重視の絶対思考で生きられれば、もうちょっとラクに楽しく人生を味わえると思うんですけどねえ。

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※追記
過去3回の「エモ・マネージメントシリーズ」を脳科学的観点から綺麗にまとめてる動画がありました。

食事睡眠運動で安定&ポジティビティのセロトニン、所属貢献で安心安全のオキシトシン、挑戦達成で報酬&モチベーションのドーパミン。ただしドーパミンは依存性あり。ストレス下では不安&怒りのノルアドレナリン、ダウナー&ネガティビティのコルチゾール。わかってみればえらい単純。かくも脳内化学物質に振り回される僕たち。実は禅やヨガや太極拳や瞑想マインドフルネスなども、要は脳内化学物質や内分泌系をアナログ制御しようとしている訳ですね。

鬱やメンタル疾患は五大成人病に入るごく一般的な疾患、つまり太古の昔から人間はずっとこれと付き合ってきました。そして長い間、メンタルケアは宗教の役割でした。祈祷やセレモニーでナチュラルハイになったり、神父に告白し助言をもらったり、「悪魔憑き」とか「狐憑き」呼ばわりでエクソシストされたり、スピリチュアルな対応が取られてきました。その後つい100年前、フロイトが提唱したセオリーを元に「心理学」というものが整理され、よりプラクティカルな「カウンセリング」が行われるようになりました。そして50年前には脳科学が「神経伝達物質」を発見、日々解明が進み、現代では服薬+認知行動療法(CBT)という治療の形がスタンダードとなっています。

しかしながら現代でも「メンタル疾患」と聞くと、特に年配の人ほど拒否感を示す人が多いです。サイコセラピーなら受け入れる人でも「精神医療に行く奴は本格的メンヘラキチガイ」みたいな偏見も根強いです。セラピーの効果は認めますが、科学的・物理的治療はできないという意味では、それは神父の助言と大差ありません。故にセラピストやカウンセラーは科学者や医学者ではない訳です。現在の医療現場では、トラウマ採掘や催眠療法は諸刃であるという理由から使われなくなっています。メンタル疾患が「脳病」である以上、その科学的メカニズムに応じた医学的治療を行う事が合理的です。そのために適切な情報を得て、古い偏見やイメージに振り回されないようにしたいところです。まあ「病気になったらお医者さんに診てもらう」という当たり前の事ですね。

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いつの世も、アーティストという職業はファンやパトロンのサポートがなければ食っていけない茨道〜✨