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TISP (Tokyo Innovation Summer Program) 2022 参加レポート

i.schoolの大学生と高校生が一緒になってアイデアを考えるサマープログラム、TISP(Tokyo Innovation Summer Program)は2013年度より実施されています。
今年度も8月1日から5日間、宮崎県の高校生(宮崎大宮高校・築地泉ヶ丘高校・高鍋高校)とともに、宮崎県の地元中小企業の技術を題材とした「新たな生活の中心になる製品」の発想を行いました。昨今の情勢を踏まえ残念ながら大学生はオンライン参加となってしまいましたが、活発な交流が育まれました。

■1日目(8/1)ミニWS・未来シナリオ分析・フィールドワーク設計

午前中はi.schoolメソッドを簡単に学ぶという趣旨のもとで、バイアスブレイキングアプローチを行いました。
まずは「高校生の生活の当たり前」をテーマとして、昔当たり前だったか否か、今当たり前か否かの2軸で分析しました。その後、そのうちの「昔も今も当たり前なもの」(例:先生が授業をする)に潜むバイアスを崩してアイデアを発想しました。
高校生にとって身近なものだったということもあり、活発に意見や議論が行われていたように感じます。また、別々の高校から参加しているチームの学生同士、ファシリテーションを務める大学生とのアイスブレイクの場としても有効に機能しました。

お昼休憩を挟み、午後は未来シナリオ分析とフィールドワークの設計を行いました。
「未来シナリオ」とは、未来に起こりうる大きな社会変化(例:スーパーアクティブシニアが増える)をもとに、その詳細や具体的な人物像を記した文章です。TISPではi.schoolの大学生が事前の議論を経て準備しています。
ワーク内ではこの未来シナリオの要素から人々が望むであろう「未来の理想の生活」を想起し、チーム内で共有や議論を行いました。ここでの議論は3日目以降に行うアイデア発想の際に重要になるものです。

次に、2日目に訪れる地元中小企業で行うインタビュー内容に関して、事前に準備していた項目のさらなる精査と、未来シナリオ分析を通して追加で伺いたい項目を挙げました。また、高校生は企業の方にインタビューしていただくのが初めてということもあり、高校の先生方に模擬インタビューに協力してもらうことで段取りなどを確認しました。

オンライン上の集合写真


■2日目(8/2)フィールドワーク・企業の魅力アピール劇

2日目午前は地元中小企業へのインタビューを行いました。
高校生は現地に行き、オンライン参加の大学生はZoomでそれを見守るという形を採りました。高校生たちは緊張していたものの、前日に行った準備が功を奏したのか、スムーズに企業の方に質問を行えていました。実際に製品を作っている現場などを見学できたチームも多く、対象企業への認識をより深めることができたように思います。

午後はインタビューを行った企業の魅力を他のチームにも伝えることを目的に、寸劇を準備し発表するというワークを行いました。
準備時間は短かったものの、各チームともに笑いを取れる場面を随所に用意し企業の行っている内容が飲み込みやすいような劇を発表していました。劇の準備をする高校生は非常に和気藹々としており、高校生活が遠く彼方の思い出となっている大学生の視点からは非常に羨ましく映りました。

劇の様子

■3日目(8/3)企業の強み分析・アイデア発想

プログラムの中で最も重要となるアイデア発想を長時間かけて行いました。
i.schoolでは、未来における「ニーズ」と現在持つ「シーズ」を掛け合わせたアイデア発想を頻繁に行っています。今回の場合は、未来シナリオから想起した未来の理想の生活が「ニーズ」、企業分析やインタビューを通じて得た企業の強みが「シーズ」となります。

1日目に未来の理想の生活は分析していたため、3日目の最初は前日に得たインタビュー結果をもとに企業の強みを挙げた上で、その強みが今後どのように活かすことができそうかを分析しました。その後「理想の生活」と「強みの活かし方」を掛け合わせてアイデア発想を行いました。
ここまでのプロセスを通して発想しやすくはなっているものの、やはり慣れない中で新しいものを考えるということは非常に難しく、高校生は非常に苦戦していました。

多くの時間を掛けて発想を終えた後、各メンバーが最も良いと思った自分のアイデアのプロトタイピングを行いました。
プロトタイピングは考えていることを形に起こすことで自分の発想をより深めたり、他人に説明する際に理解を得やすくしたりする手段として有用なものです。i.schoolのワークショップ内でもプロトタイピングに特化したものが存在しています。高校生はプロトタイピングの際にも創造性を発揮し、校庭の砂などを材料に取り入れている学生も存在しました。

その後、各人が考えたアイデアの中からチームで1つを選び中間発表を行い、さらにその後反省点を分析しました。「何が問題だったか」「どのプロセスをやり直すべきか」「その際どのようなことに気をつけたいか」などの項目のもとで翌日以降の計画を立てました。

■4日目(8/4)再試行

前日に立てた計画を元に、チーム別に問題があったプロセスのやり直しを行いました。
より良いアイデアを生み出す上で再試行を行うことは非常に重要であり、i.schoolではこれを非常に重視しています。私のチームでは主に未来シナリオの分析を中心に再試行を行い、多くなった「理想の生活」や「強みの活かし方」を選別してからアイデア発想を行うなどの工夫もしました。フィードバックを受けつつ再試行は何度か繰り返し議論も煮詰まりましたが、4日目の終盤になってようやく良いアイデアをチームの議論のもとで生み出すことができました。その時の達成感は、私はもちろん高校生は非常に大きなものを感じていたように思います。

■5日目(8/5)最終発表

午前中は出来上がったアイデアの発表に向け準備を進めました。
発表は3日目と同じように寸劇を一部用いたものでした。考えたアイデアがわかりやすく、かつ魅力的に伝わるような内容を考えた上で練習を行いました。

午後は最終発表でした。地元企業の方も現地の会場にお呼びし3日目よりも緊張する場ではありましたが、各チームとも見事なアイデアを工夫のある発表で面白く伝えていました。企業の方からも高評価をいただき、一部アイデアは実現に向けた取り組みをTISP終了後も行うようです。
最後に、5日間もの長いプログラムを一緒に過ごした大学生と高校生との間で会話を交わした後にプログラムは終了となりました。

プログラム終了後の集合写真

5日間を通して

初めは緊張もあってか口数の少なかった高校生が、やがて自分たちで議論を進めていけるようになる姿に成長の早さを感じました。大学生の視点でもその飲み込みの速さや柔軟な発想は見習いたい点も多かったです。

また、いかにチームメンバー全員が自然に議論に参加できるようにするかというファシリテーションの技術においても、議論が停滞したときの進め方やより早く心理的安全性を高める方法など、まだまだ学ぶべき点が多いと思いました。このような機会は私達にもなかなか無いため、5日間で得たもの・感じたものを大切にして今後に活かしていきたいと思います。

プログラムが終わった後高校生から「答えのないものを考えることの楽しさ・難しさ」を知れたというコメントをもらいましたが、私はこの言葉を聞いて非常に嬉しく、また達成感を覚えました。私は大学やi.schoolの活動から「考えることの楽しさ」を覚えることが多く、それが今の自分の原動力となっています。プログラムを通じて高校生のうちからそれを体感し、高校生活に活かしてもらうことができるということはとても価値があることだと思います。
来年もTISPに関わり、「考えることの楽しさ」を伝えられるように努力したいです。

久手貴就
一橋大学商学部経営学科3年
i.school2021年度通年生

参加者・参加企業一覧

【高校生】
宮崎大宮高校 12名
築地泉ヶ丘高校 7名
高鍋高校 10名

【大学生】
i.school 2021年度通年生 5名
i.school 2022年度通年生 5名 

【地元企業】(敬称略・順不同)
株式会社井崎製作所
高千穂シラス株式会社
株式会社川上木材

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