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【i.schoolから通年生/修了生への3つの質問!】2022年度通年生_野口さん

イノベーション教育プログラムのi.schoolではどんな学生がどんな思いで学んでいるのでしょうか?i.schoolの通年プログラムに実際に参加してきた通年生・修了生の声を、3つの質問に答えてもらう形でお届けします!
今回は、2022年度の通年生として活躍されている野口俊亮さんに、i.schoolの様子について紹介してもらいました!

目次
質問1:i.schoolに応募しようと思った、入ろうと思ったきっかけは何ですか?
質問2:i.schoolでどんなことをしたかったのですか?もしくはこれからやってみたいことはありますか?
質問3:実際にi.schoolに入ってみて、どうでしたか?
最後に一言!


野口 俊亮 / Shunsuke Noguchi
2022年度 i.school 通年プログラム通年生
東京大学大学院教育学研究科M1

質問1:i.schoolに応募しようと思った、入ろうと思ったきっかけは何ですか?

 自分がイノベーション・社会変革の担い手になるという事を考えた時、アイディアを具体的に形にしていくためにはまだまだ力不足なのではないかと思い、その足りないものを学べるのではないかと思ったのが一番大きな動機です。

 i.schoolについては大学の先輩を通して話を聞いており、その人の着眼点の鋭さや柔軟な思考に学ぶ事が多くあったため、自分でも学んでみたいと考えていました。もともとアイディアを思いつくことを苦手としているとは思ってなかったものの、アイディア発想のやり方が自己流だという自覚はあったため、一度しっかり学んでみた方が良いかもしれないと思ったのも、参加を考えた理由の一つです。あとは、M1なので比較的時間的な制約が少ないと思ったのもありますね。あんまりマルチタスクを抱えきれる性分ではないので(笑) 

質問2:i.schoolでどんなことをしたかったのですか?もしくはこれからやってみたいことはありますか?

 もともとi.schoolで学んだことを様々な形で社会に還元していきたい、という気持ちは参加当時から持っていましたが、「i.schoolで何かがしたい」というモチベーションが特別あったわけではなく、上述のような関心があったというのが率直なところです。ただ、i.schoolでも高校生相手にWSのファシリテーターを務めさせていただいたり、夏に行われるTISPというプログラムではご縁のあった地元企業の方々と高校生を交えて実際にものづくりをさせていただいたり…と、色々と面白い事をさせて頂いてます。

 また、自分は学生団体に所属しているのですが、そこの課題に取り組むにあたってもi.schoolで学んだ頭の使い方は有効活用できるな、と思っています。最近は大学院の研究もデザイン×教育という方向にテーマ変更し、イノベーションやデザイン思考の教育・人間形成的な意義について検討を進めています。「まだ先人が取り組んでない領域を発見し、その問題解決に取り組む」という意味では、学生団体にせよ大学院の研究にせよ、i.schoolの扱うイノベーションとかなり近いものがあると思います。


学生団体でのオフの様子

 一方、アイディアを形にする事については、産みの苦しみを感じています。i.schoolでもアイディアを具体的に形にするプロセスを体感するWSとして、自分たちのアイディアを仮説検証する取り組みをしたのですが、その際に堀井先生がしばしば「仮説検証を楽しめ」と仰っていました。WSの時はそのおかげもあって楽しませていただいたのですが、自分の大学院の研究になると仮説構築も検証もとても進まず…。
 それでもi.schoolでの取り組みを通して、「イノベーションも学術研究も、結局は自分の実現したい事の為の手段にすぎない」という事を認識できたのは良かったなと思います。面白そうでやりたい事は次々浮かぶものの、どれも遂行するには高い壁がありそこで苦労している……というのは、どこかそのワークショップを思い出す、かもしれません(苦笑)


仮説検証を最も楽しんだチームとして堀井先生手作りのオブジェをいただきました。

質問3:実際にi.schoolに入ってみて、どうでしたか?

 この項は「これといって新しい武器を得たという感覚はない」と書き出すつもりだったのですが……ちょうどこの文章を書いている時、アイディアというものに対する意識が「思いつくもの」から「創るもの」に変わった事こそが一番の変化なのかもしれない、と気付きました。「今まで無意識に使っていた武器や思考回路に名前がついて、意図的に運用する事が可能になった」という感覚はなんとなくあったのですが、それはアイディアに対する気持ちの持ち方の変化なのだろうと思います。

 もう一つ面白い所をいうと、「世の中にいる奇人・狂人の思考に近付く事ができる」ところでしょうか。今これを読んでいる方にも、インターネット・SNS上から皆さんの身の回りに至るまで、「一体何を食べたらこんな事考えられるんだ」と聞きたくなるような人がいると思います。時折その狂人たちが、メディアやSNSを通して自分の思考回路を説明しているわけですが、大抵の人はそれを聞いても「凄いけどわけわからん」「頭おかしいんじゃないの」となるのではないでしょうか。

 ですが、自分の中に眠っている武器や思考回路に名前がつくと、同じような発想ができる、とまでは行かずとも、「この人の○○という発想は、△△という当たり前を外して考えているのではないか?」「この◆◆という制度が、××というアイディアの元ネタにあるのかもしれない」というように、思考回路を自分でなぞって考えたり、予測することができるようになります。勿論その中には(というか、大抵の場合は)見当違いも含まれるわけですが、重要なのは当たっている・いないではなく、「奇抜なように見える考え方も、根幹には共通のロジックがある」ことを身をもって体験できること、そして、そのロジックを使いこなせるようになることなのだと思います。

一年間で一番長いワークショップ(WS6)中の様子

 

 一方で大学院の講義や、それに関連する人文・社会科学系の雑誌・論文などを読んでいると、イノベーションに問題解決を委ねて良いのか、その背景にある社会構造や市場原理にこそ問題が潜んでいるのではないか、という主張も多くあり、i.schoolとは異なる角度から「イノベーション」を検討する事にも繋がりました。
 
 大抵そういった議論はイノベーションの中でも技術革新に焦点を当てた意見である一方、i.schoolのプログラムでは「イノベーション」という言葉を極めて広義に捉えていて、新たなビジネスモデルや政策立案、社会システムに対しても応用しうるものとみなしているので、必ずしも双方の見解が食い違うわけではありません。

 ですが、「どう起こすのか」「どのような手順のもとに考えるか」といったプロセスを学ぶ機会には恵まれていた一方、そもそもどういうものか」「どうあるべきか」といった事を考える機会はあまりなく、自分で本や雑誌を読んで考えるばかりだったという事は、振り返ってみると物足りなく思います。
 
 アイディアを創出する際、制約があればあるほど自由な発想は疎外されてしまうので、自分でもi.schoolのWSに取り組む時は、いわゆる倫理観や道徳であったり、学問的には立ち止まって考える必要があると分かっている事を一度取っ払った上で取り組んでいましたが、その「良いアイディア」を進める上で検討しなければならないことがなし崩しに進んでしまう事には注意が必要だと思っています

 科学技術的なイノベーションと社会のあるべき関係性を示した、RRI(Responsible Research and Innovation: 責任ある研究・イノベーション)という考え方があります。i.schoolが社会をよりよく変革していく担い手を数多く産み出す場所であるからこそ、そういう機会をi.school側から保証したり、或いは自分たちで積極的に勉強すると、よりよい社会の担い手を産み出す場所になれるのでは?と思います。

最後に一言!

 ここまで読んでいただきありがとうございました。
 どんな人に入ってきて欲しい、というのを上手く言う事はできませんが、もしこの記事を読んで少しでも共感するところがあったり、面白いと感じた人がいたら、ぜひ受講希望を出していただきたいなと思います。
共に社会の担い手となる一員として、皆さんと会える事を楽しみにしています。


i.schoolとは

i.schoolは、東京大学 社会基盤学専攻教授・堀井秀之が2009年に始めたイノベーション教育プログラムです。社会の価値観を塗り替えるイノベーションを本気で起こしたいと考える学生が、アイディア創出法を体系的に学びます。単位も学位も出ませんが、毎年優秀な学生が幅広く集まっています。修了生は200名以上にのぼります。


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